2020年03月19日
【1】今週のお知らせ
会員各位
平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
2020年3月13日(金)までを予定しておりました当社団職員の新型コロ
ナウイルスへの感染リスクの軽減と安全確保の対策ですが、現状を鑑み、202
0年3月31日(火)まで延長させていただくこととなりました。
引き続き、15分の退社時間の繰り上げ及び交代での在宅勤務を実施いたしま
す。
これに伴い、お問い合せ等に対する電話対応を十分に行うことができない可能
性がございます。
問い合せについては可能な限りメールを優先していただくとともに、回答まで
時間を要する場合があることをご了承ください。
なお、実施期間については、状況により更に延長を検討します。
会員の皆様には大変ご不便をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。
何卒ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。
(税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
個人法人間における土地の貸借関係~賃貸借及び使用貸借の土地の評価~
(令01-08-19 非公開裁決 一部取消し F0-3-667)
請求人らが、亡父の相続により取得した宅地の価額について、法人に賃貸して
いる土地は借地権価額を控除した価額により亡父の相続税の申告をしたところ、
原処分庁が、当該土地の一部について「土地の無償返還に関する届出書」(本件
届出書)が提出されているから、相当地代通達を適用すべきであるとして更正処
分を行ったのに対し、請求人らが、当該届出書は、その記載内容に誤りがあるか
ら無効であるとして争った事案です。審判所は、次のように判断しました。
本件病院敷地は、医療法人が被相続人らから借り受けており、合意に基づく本
件届出書は、有効なものと認められる以上、たとえ、本件届出書の記載内容に誤
り等が見受けられたとしても、相当地代通達の定めにより評価すべきである。
本件薬局敷地上には、同族会社(本件会社)が所有する薬局建物が存しており、
本件会社は、薬局建物を建築する際に、被相続人らに対し権利金を支払わず、そ
の後平成21年8月まで地代を支払っていない。しかしながら、被相続人らと本
件会社の間に賃貸借契約書は存在しないものの、昭和55年から現在に至るまで
長期間にわたって薬局建物の敷地として利用しており、土地の貸借において当事
者の一方が法人である場合には、その間の取引は第三者間における取引と同様の
経済的合理性によるべきであり、個人が法人に対して建物の所有を目的として土
地の使用を許諾したときに、同土地に借地権が設定されたものと認めるべきであ
る。したがって、本件薬局敷地については、相当地代通達の定めではなく、評価
通達25《貸宅地の評価》の定めにより、評価すべきである。
≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-3-667
2020年03月12日
【1】今週のお知らせ〔行政文書の紹介〕
解決すべき問題とどのように向き合って検討していくかの参考に!
(TAINSコード:調査審理の実務(大阪審判所)H150912)
租税の基本原則である「租税法律主義」。租税の賦課・徴収は、法律の根拠に
基づいて行われます。我々税理士の実務に目を向けると、この租税法律主義は頭
にあるものの、それをどのように実践し、問題解決に向けて事案とどのように向
き合って検討していけばよいのか分からないこともあると思います。
そのような場合に、「調査審理の実務(大阪審判所)H150912」を一読
してみると良いでしょう。この資料は、国税不服審判所が一つの審査請求事案に
ついて、どのような審理過程を経て、議決するのかをシナリオ化したものです。
担当審判官における事案の進行管理などを中心に示したものではありますが、問
題を解決するためにどのような手順や思考過程を経ているか、事実の認定や関係
法令への当てはめをどのように行っているのか参考になるものと考えられます。
審判官は、事実関係、請求人及び原処分庁の主張、関係法令などを順次整理し
て、最終的な結論(議決)に向けて作業を進めていきます。請求人や関係者と面
談して、当事者の主張等を丁寧に整理したり、租税法の書籍等で問題箇所の概略
的な知識を得たりするほか、過去の裁判例等も調べたりします。
また、この資料における事案では、所得税法における生命保険金の収入時期の
話がでてきますが、審判官は、保険法の概説書や一般的な保険約款、保険会社の
ホームページをみて、保険に関する知識を広げて、単に所得税法のことだけを考
えて判断しているわけではないことがみてとれます。
この資料では、一つの問題を解決するための手順や思考過程が、事例に基づい
て記述されており、参考になると思われます。 (要点メンバー:鈴木 涼介)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:小菅 貴子)
税理士損害賠償/相続税対策でされたDESに係る債務消滅益の説明義務違反
(令01-08-21 東京高裁 控訴棄却、請求認容 Z999-0174)
本件は、不動産の賃貸及び管理等を目的とする株式会社である被控訴人が、顧
問契約を締結していた税理士法人である控訴人に対し、控訴人は、被控訴人に対
して約11億円の貸金等債権を有する被控訴人の前代表者甲の相続税の節税のた
め、被控訴人に有利な方法(清算方式)があるのに、その助言指導をせず、DE
Sを提案し、その際、当該DESにより被控訴人に多額の債務消滅益が生じ、法
人税が課税されるリスクがあることを説明せず、本来支払う必要のなかった法人
税等相当額の損害などを被ったとして、税務顧問契約の債務不履行又は不法行為
に基づき、損害額合計3億2902万7820円及び遅延損害金の支払を求める
事案です。裁判所は、次のとおり判断して控訴人の控訴を棄却しました。
控訴人は、被控訴人に対し、顧問税理士として、租税関係法令に適合した範囲
内で、課税上最も有利となる方法を検討して、その方法を採用するように助言指
導する義務を負っているのであり、また、DES方式を提案するに当たり、債務
消滅益課税について具体的な説明をし、法人税及び相続税の課税負担を少なくし、
より節税の効果が得られる清算方式を採用するよう助言指導する義務があった。
控訴人が本件DESによって債務消滅益が発生することを正しく説明していれ
ば、被控訴人は2億9000万円の法人税の課税を避けるため、多少のデメリッ
トがあっても清算方式を採用したものと推認できるから、上記義務違反と法人税
の課税との間に相当因果関係はないという控訴人の主張は採用し得ない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-0174
2020年03月05日
【1】今週のお知らせ
会員各位
平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
当社団職員の新型コロナウイルスへの感染リスクの軽減と安全確保のために、
社団職員について15分の退社時間の繰り上げ及び交代での在宅勤務を実施する
こととしました。
これにともない、お問い合せ等に対する電話対応を十分に行うことができない
ことが予測されます。
問い合せについては可能な限りメールを優先していただくとともに、回答まで
時間を要する場合があることをご了承ください。
会員の皆様には大変ご不便をおかけしますが、ご理解をいただきますようよろ
しくお願いいたします。
期間:2020年3月5日(木)~2020年3月13日(金)
なお、実施期間については、状況により延長を検討します。
(税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:草間 典子)
組織再編成に係る行為計算否認~特定資本関係5年超要件を満たす適格合併~
(令01-12-11 東京高裁 棄却・上告等 Z888-2287)
本件は、控訴人が、完全子会社を被合併法人とする適格合併(平成22年改正
前の法人税法2条12号の8)を行い、その子会社が有していた未処理欠損金額
を控訴人の欠損金額とみなして損金の額に算入したところ、処分行政庁から、法
人税法132条の2の適用により、法人税の更正処分等を受けた事案です。
東京高裁も本件更正処分等は適法であるとし、組織再編税制の基本的な考え方
及び完全支配関係にある法人間の適格合併について、次のように判断しています。
完全支配関係にある法人間の適格合併については、支配関係にある法人間の適
格合併におけるような従業者引継要件及び事業継続要件の定めは設けられていな
い。しかしながら、組織再編税制は、組織再編成の前後で経済実態に実質的な変
更がなく、移転資産等に対する支配が継続する場合には、その譲渡損益の計上を
繰り延べて従前の課税関係を継続させるということを基本的な考え方としており、
また、先に組織再編税制の立案担当者の説明を引用して判示したとおり、組織再
編税制は、組織再編成により資産が事業単位で移転し、組織再編成後も移転した
事業が継続することを想定しているものと解される。
完全支配関係にある法人間の適格合併について、当該基本的な考え方が妥当し
ないものと解することはできないから、当該適格合併においても、被合併法人か
ら移転した事業が継続することを要するものと解するのが相当である。
《検索方法》 【キーワード】 Z888-2287
2020年02月27日
【1】今週のお知らせ
収録した裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・H30-10-05 裁決 棄却 F0-1-1007
保証債務の特例/譲渡代金を法人への貸付けとした場合
・H30-07-04 裁決 却下、棄却 F0-1-1025
源泉徴収義務/法人から顧問に交付した金員の給与該当性
・H30-05-23 裁決 棄却 F0-1-992
所得区分/貸付金債権を放棄したことによる貸倒損失
・H30-05-21 裁決 一部取消し F0-1-991
推計方法の合理性/所得の帰属/他人名義で営まれている風俗店
・H30-01-04 裁決 棄却 F0-1-929
源泉徴収義務/非居住者へ支払った不動産の譲渡対価
【相続税】
・H30-05-23 裁決 棄却 F0-3-653
相続財産の範囲(生命保険契約に関する権利)/過少申告加算税(正当な理由
)
【他国税】
・H25-05-10 裁決 棄却 F0-8-186
差押処分/債権の帰属/得意先の譲渡
(税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:依田 孝子)
税理士損害賠償~遺留分減殺請求中の相続税申告と小規模宅地等の特例~
(平30-02-19 東京地裁 一部認容 Z999-0172)
この事案は、遺言により全財産を相続するものとされている原告が、遺留分減
殺請求中に、相続税申告を行った税理士Aに対して損害賠償を求めるものです。
裁判所では、そのような状況下において相続税申告業務を行う税理士は、(1
)小規模宅地等の特例を適用することなく法定相続分に従った共同相続として申
告をする、(2)遺言により全財産を相続したものとして申告をする、のいずれ
かの方法を選択することになるものと解され、税理士Aは(1)の方法を選択し
たものと考えられるとしたうえで、次のとおり判断し、原告の損害賠償請求の一
部(遺留分減殺請求権者であるB及びCの相続税相当額等)を認容しました。
(1)の方法を選択し、原告と対立関係にあったB及びCの相続税を相続財産
から支出した場合、遺留分減殺の解決が長期化すればその間は本来原告が負担す
べき税額を超えた支出状態が継続することになる可能性がある上、B及びCから
更正請求についての協力を得られないなどの事態も想定されたと考えられる。
上記事実関係の下では、(1)の方法は(2)の方法と比較してリスクが高か
ったというべきであり、これを採用するのであれば、当該リスクの存在について
十分に説明した上で原告の同意を得て行う必要があったというべきである。
税理士Aが(1)の方法を採用したことは不適切であり、相続税申告手続を受
任した税理士としての善管注意義務に違反する行為であったというべきである。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-0172
2020年02月20日
【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・H30-08-24 裁決 棄却、却下 F0-1-1002
更正の請求と信義則/個人法人間の所得の帰属
・H30-03-05 裁決 棄却 F0-1-886
居住用財産の特別控除/相続により取得した家屋と生活の拠点
・H30-02-15 裁決 棄却 F0-1-946
源泉徴収義務/インド法人に支払った業務委託料
・H30-01-12 裁決 棄却 F0-1-930
居住用財産の特別控除/住民票上の住所と生活の拠点
【相続税】
・H31-02-05 東京地裁 棄却 Z888-2291
納税猶予期限の確定事由/農業経営の廃止の判断基準/法人成りをした場合
【その他】
・H30-02-19 東京地裁 一部認容 Z999-0172
税理士損害賠償/善管注意義務違反/遺留分減殺請求中の「小規模宅地等の特
例」
・H13-01-25 東京地裁 棄却、控訴 Z999-6152
株主代表訴訟/孫会社の損害と親会社の取締役の任務懈怠責任
(税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:大高 由美子)
国外居住扶養親族/送金関係書類
(平30-02-27非公開裁決 棄却 F0-1-899)
請求人が、国外に居住する請求人の妻の父(義父)に係る障害者控除及び扶養
控除の適用を求めて更正の請求をしたところ、原処分庁が、義父と生計を一にす
ることを明らかにする書類の添付又は提示がないから各控除を適用することはで
きないとして更正をすべき理由がない旨の通知処分を行った事例です。
請求人が義父に係る送金関係書類であると主張する取引明細書は、国外に居住
する義母名義の預金口座の取引明細書の写しであるから、義父の生活費に充てる
ための支払を必要の都度、義父に対して行ったことを明らかにしたものとはいえ
ず、義父に係る送金関係書類であるとは認められない。
請求人は、義父は、僧侶であり信仰上お金に直接触れることはできないこと、
障害者であり、本人が直接取引できる状態でないことから、同居している義父の
受任者である義母に義父の生活費を送金しているという事情がある旨主張する。
しかしながら、国外居住扶養親族に係る扶養控除等の適用を受けようとする居住
者は、送金関係書類を、控除の適用を受ける各人別に確定申告書に添付又は提示
しなければならない旨規定されており(所法120条3項2号)、その例外を認
める規定は設けられていないのであるから、請求人が主張するような事情等があ
ったとしても、義父に係る送金関係書類の添付又は提示を免れるものではない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-899
2020年02月13日
【1】今週のお知らせ
複雑な外国税額控除の記載例や説明は価値ありです!〔行政文書の紹介〕
(TAINSコード:資産税審理研修資料H300700)
普通の税理士にとって、外国税額控除の処理は複雑なものの一つです。確定申
告の手引きを読んでもどのように対応していけばよいのかよくわからないケース
もあります。
たとえば、海外の不動産を譲渡した場合で、譲渡した年に現地で所得税等が源
泉徴収され、翌年において、現地で申告をして税金を精算するようなときは、2
年にわたり外国税額控除を行うケースや、現地での申告により還付が生じた場合、
還付税額の全部または一部を雑所得の総収入金額に算入させるケースがあります。
このような複雑な申告処理をどのように記載すればいいのか悩んだ場合、「資
産税審理研修資料」(東京国税局 平成30年7月作成)の「所得税の国際課税
と海外不動産の譲渡に係る外国税額控除事例」(P190~P224)が役立ち
ます。この資料では海外不動産の譲渡について、2事例についてパターンを分け
て2年分の申告書の記載例(第1表、第3表、譲渡所得の内訳書、外国税額控除
に関する明細書)を丁寧に説明していますから、実務で関わる際とても価値があ
ると思います。
資産税審理研修資料には、他にも譲渡所得等の審理上の留意点も盛り込まれて
おり、これらは具体的事例に沿った説明がなされるので、私たち税理士にとって
も非常に参考になる資料であると思います。
≪検索方法≫ 【キーワード】 H300700
※検索トップ「フリーワード」に入力して下さい。
(要点メンバー:菅野 真美)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
更正の予知/調査官と関与税理士の電話応答後の修正申告
(平30-03-01 非公開裁決 棄却 F0-1-953)
原処分庁所属の調査官は、平成28年10月26日、関与税理士に対し、請求
人の所得税の調査に係る日程調整を電話で依頼するとともに、調査の目的に関す
る質問に応じました。本件は、請求人が、同日中に、平成27年分所得税の修正
申告をしたところ、過少申告加算税が賦課されたことから、修正申告書の提出は、
更正があるべきことを予知してされたものではないと主張して、その取消しを求
めた事案です。審判所は、次のように判断して、請求を棄却しました。
通則法65条5項に規定する「調査」とは、机上調査のような租税官庁内部に
おける調査をも含むものと解されるところ、調査官が、平成28年10月18日
に特定口座年間取引報告書などの資料情報を確認した後、資料情報と確定申告書
の内容とを比較検討する資料を作成していることからすると、調査官は、修正申
告書の提出前に「調査」を行い、株式等に係る譲渡所得の申告漏れを把握してい
たものと認められる。そして、調査官は申告漏れを把握した後に関与税理士に電
話をし、電話応答を契機として、関与税理士は、取引報告書に所得税等の源泉徴
収が選択されていない旨の表示があることに気付き、修正申告をしたという事実
関係が認められる。さらに、関与税理士は、電話応答の内容により調査官が申告
漏れを把握しているものと認識していたと認められることからすれば、修正申告
書の提出は、「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを
予知してされたものでないとき」に該当するとはいえない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-953
2020年02月06日
【1】今週のお知らせ
(1)収録した裁決の一部を紹介します。
【相続税】
・H30-10-02 裁決 却下 F0-3-646
請求の利益/処分の不存在
【消費税】
・H30-07-09 裁決 棄却 F0-5-242
課税仕入れ/自動車通勤者の通勤手当/所得税法の非課税限度額を超える金額
・H30-07-02 裁決 棄却 F0-5-240
正当な理由/消費税等の無申告加算税/相談会場での無指導
・H30-07-02 裁決 棄却 F0-5-241
輸出物品販売場における商品の譲渡/非居住者に対する免税売上か
・H30-04-17 裁決 却下 F0-5-244
消費税の還付・年金の減額分の還付を求める審査請求
・H30-02-15 裁決 却下 F0-5-243
地方税法附則9条の10の規定に基づく委託納付の処分性
(2)東京税理士会会員相談室の【相談事例】を毎月継続して収録しています。
例えば、下記のような検索ワードで「全文」を選択すると検索できます。
東京税理士会 会員相談室 ☆2019年 →18件
東京税理士会 会員相談室 ☆2020年 → 1件
(税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
仕入税額控除~住宅用賃貸部分を含む中古建物の「用途区分」の判定
(令01-10-11 東京地裁 棄却・控訴 Z888-2276)
中古不動産の買取再販売を主な事業とする原告が、販売目的で行った課税仕入
れである建物の購入のうち、購入時にその全部又は一部が住宅用として賃貸され
ている建物(各建物)に係る控除対象仕入税額の計算について争った事案です。
主な争点は、住宅用賃貸部分を含む建物の購入が共通課税仕入れに区分される
か否かです。裁判所は、原告が指摘する税務当局の取扱いは個別事例の一つにす
ぎないなどと判断し、次のとおり原告の請求を棄却しました。
原告は、個別対応方式における用途区分の判定は、課税仕入れの最終的な目的
によって行うべきであると主張するが、用途区分が課税仕入れの行われた日の状
況に基づいて判断すべきものであることや、共通仕入控除税額は課税売上割合に
代えて課税売上割合に準ずる割合によって計算する余地もあることからすると、
原告の主張には理由がない。
原告は、各建物をいずれも棚卸資産としていること、各建物の全部又は一部は、
購入時に住宅用として賃貸されており、購入によって、賃貸人としての地位を承
継し、引渡日以降の賃料を収受していたことが認められる。これらの事情を踏ま
え、各課税仕入れが行われた日の状況に基づいて検討すると、各建物は、販売に
供されるとともに、一定の期間、住宅用の賃貸にも供されるものであったと認め
られることから、各課税仕入れは、共通課税仕入れに該当するというべきである。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2276
2020年01月30日
【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・H30-11-13 裁決 棄却 F0-1-1019
為替差益/米国LLCの解散に伴う残余財産の分配
・H30-08-29 裁決 棄却 F0-1-1004
更正の請求/源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式の譲渡損失
・H30-12-12 裁決 棄却、却下 F0-1-1021
還付金の充当処分
【法人税】
・R01-06-26 東京高裁 棄却、確定 Z888-2280
源泉徴収義務/建築士等の資格を有しない個人に支払った数量積算業務に対す
る報酬
【他国税】
・H30-03-27 裁決 棄却 F0-8-187
最高価申込者決定処分の適法性/賃貸用不動産の売却等
・H29-12-18 裁決 棄却 F0-8-189
配当処分の違法性/課税処分と徴収処分の関係
(税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
国外居住扶養親族~各人別送金関係書類の法令改正に関する事項の周知~
(平30-11-27 非公開裁決 棄却 F0-1-1017)
請求人が、非居住者である請求人の親族を控除対象扶養親族として扶養控除を
適用して所得税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、請求人と生計を一にす
ることを明らかにする書類の添付又は提示がされていない親族は控除対象扶養親
族に当たらないとして更正処分をしたのに対し、請求人は、原処分庁所属の職員
から事前に法令の改正について説明がなかったことが原因であるとして、その全
部の取消しを求めた事案です。
審判所は、次のように判断し、請求人の主張を退けました。
請求人は、法令の改正により、国外に居住する者を控除対象扶養親族とするた
めに、各人別に送金関係書類の添付等をすることが必要になったということを知
らず、父には送金したものの母及び義母に送金しなかった。その原因は、原処分
庁所属の職員が、請求人に対し、事前に法令の改正について説明をしなかったこ
とにあり、母及び義母に係る扶養控除も適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、課税庁は、国税庁ホームページなどにおいて、法令の改正に関
する事項を広く一般に周知しているところ、申告納税制度の下における所得税等
の確定申告は、納税者自身の判断と責任においてなされるべきこと、また、原処
分庁所属の職員が納税者に対して法令の改正について説明をしなければならない
旨を定めた法令の規定はないことから、原処分庁が、請求人に対し、事前に法令
の改正について説明をせずに本件更正処分を行ったことに違法な点はない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-1017
2020年01月23日
【1】今週のお知らせ
(1)TAINSだより
TAINSだより(2020年新年号)を掲載いたしました。検索トップペー
ジの右下「TAINSだより」をクリックすると、閲覧できます。
(事業部長:上田 健一)
(2)収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・H30-12-11 裁決 棄却 F0-1-1015
更正の請求/必要経費及び仕入税額控除
・H30-12-04 裁決 棄却 F0-1-1018
還付金の充当処分
・H30-11-27 裁決 棄却 F0-1-1016
無申告加算税/期限内申告書を提出する意思
【法人税】
・R01-05-30 東京地裁 棄却、控訴 Z888-2279
重加算税・源泉所得税/事実を仮装して経理することにより支給された役員給
与
【他国税】
・H30-05-16 裁決 却下 F0-8-221
差押処分/処分の不存在
(税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:小菅 貴子)
配当所得/臨時株主総会において取消決議がされた剰余金の配当
(平30-09-03 非公開裁決 棄却 F0-1-995)
本件は、原処分庁が、亡甲(本審査請求後に死亡)が発行済株式総数36,0
00株のうち29,275株を保有し、代表取締役を務めていたA社の剰余金の
配当を申告していないとして所得税等の更正処分等をした事案です。A社は、平
成25年10月15日に開催した定時株主総会において、平成25年8月期の配
当金額を○○○○○○とする剰余金の配当の支払を決議し、その後、平成25年
12月25日に開催した臨時株主総会において、上記配当の支払決議を遡及的に
取り消す旨の決議をしました。審判所の判断は次のとおりです。
株式会社の株主の配当支払請求権は、剰余金の配当がその効力を生ずる日に具
体化し、以後は、株主としての地位から独立した権利となり、別個に譲渡等の対
象となるなど、第三者が利害関係を持つ可能性も生じるのであって、仮に、その
後の株主総会における配当取消決議によって、かかる配当支払請求権を消滅させ
ることができるものとするならば、法的安定性を著しく害する結果となるから、
一旦、独立かつ具体的な権利として発生した配当支払請求権を、株主総会の決議
によって剥奪したり変更したりすることはできないというべきである。
本件配当支払請求権は、平成25年10月15日に、本件配当の効力の発生と
同時に具体化し、以後、株主としての地位から独立した権利となっているから、
本件取消決議は、本件配当支払請求権に影響を及ぼすものではない。
したがって、本件配当は、本件取消決議により、その効力が無くならない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-995
2020年01月16日
【1】今週のお知らせ
(1)公表裁決事例の収録を完了しました。
国税不服審判所のホームページに掲載された、平成31年4月から令和元年6
月分の公表裁決事例の収録を完了しました。
(2)今週のお知らせ
そろそろ確定申告の時期。誤りやすい事例をぜひご覧下さい!
(TAINSコード:審理事務連絡会資料H301129)
TAINSには、判決・裁決の情報だけではなく、情報公開法による開示請求
によって独自に入手した行政文書も収録されています。国税局内の会議資料など、
実務に役立つものも数多く見つけることができます。
今回紹介するのは、大阪国税局「平成30事務年度 個人課税確定申告期審理
事務連絡会」資料(平成30年11月29日)です。こちらの会議資料には「確
定申告期において留意すべき事項(個人課税関係)」、「個人所得関係 平成3
0年度版 誤りやすい事例」、「還付申告書審査事務の留意点について」、「軽
減税率制度について」、「資産課税関係の留意すべき事項について」、「資産税
関係 平成30年度版 誤りやすい事例」があります。
例えば「個人所得関係平成30年版 誤りやすい事例」(全部で73頁)の2
0頁には、不動産所得において、アパートが2人以上の共有とされている場合の
貸付けの規模の判定など、この時期らしい内容の事例が、誤った取扱いと正しい
取扱いの対比形式により、短文で見やすく掲載されています。また根拠法令・通
達の記載もあるため条文を確認しやすくなっています。1年前の情報ではありま
すが、確定申告期を迎える前に事務所の研修用として、またちょっとした空き時
間の読み物としてご利用されてはいかがでしょうか。
≪検索方法≫ 【キーワード】 H301129
※検索トップ「フリーワード」に全角で入力して下さい。
(要点メンバー:梅野 智子)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:草間 典子)
損害賠償請求権の帰属事業年度/元従業員による窃取した商品のネット販売
(令01-05-16 公表裁決 一部取消し J115-3-10)
本件は、請求人の従業員であった者が、請求人の商品を窃取してインターネッ
トオークションで販売して得た収益について、その収益は請求人に帰属するか、
請求人の元従業員に対する損害賠償請求権の額として益金の額に算入すべき金額
や帰属事業年度などが争われた事案です。
国税不服審判所は、収益の帰属については、元従業員が主体となって行った取
引であり、請求人に帰属しないとしました。損害賠償請求権の発生額とその帰属
事業年度については、次のように判断しています。
元従業員が請求人から商品を窃取したことによる損害賠償請求権の額は、その
窃取された商品の時価により計算すべきである。各商品の落札代金の額は、その
商品の落札時点における時価の範囲に含まれる額であると認められ、請求人の元
従業員に対する損害賠償請求権の額は、元従業員が受領した落札代金等の額によ
り計算するのが相当である。
上記損害賠償請求権は、元従業員が請求人の商品を元従業員の支配下に移した
時点で発生すると解される。元従業員は、遅くとも落札代金等が入金された時に
は、各商品を直ちに発送できるよう、自らの支配下に移したと認められる。した
がって、請求人の元従業員に対する損害賠償請求権は、各落札代金等が元従業員
名義の銀行口座に入金された時点において順次発生したと解するのが相当である。
≪検索方法≫ 【キーワード】 J115-3-10