TAINSメールニュース No.360 2018.5.31 発行(社)日税連税法データベース

2018年05月31日

【1】今週のお知らせ
(1)先週(5月21日~5月25日)収録した裁決の一部を紹介します。
 【法人税】
 ・H29-06-27 裁決 棄却 F0-2-733
  中小連結法人の機械等の特別償却/指定事業の用/工事に係る収益計上時期
 
 【相続税】
 ・H29-06-27 裁決 棄却 F0-3-551
  取引相場の株式/相続開始前3年以内に取得した不動産(無償返還届出の有効
  性)
 
 【消費税】
 ・H29-04-12 裁決 棄却 F0-5-194
  過少申告加算税の正当な理由/課税仕入れの時期/出来高払いの工事費
 
(2)税務訴訟資料第266号を収録中
  現在、税務大学校ホームページに公表された税務訴訟資料第266号の収録作
 業を行っています。
  収録が済んでいるものについては、下記のキーワードで検索することができま
 す。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★税資266号
                        (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
  先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除/連年提出要件
 (平30-03-08 東京高裁 棄却 Z888-2169)
 
  平成25年分申告書を提出した控訴人は、平成24年分期限後申告書等を提出
 するとともに、措置法41条の15第1項の特例(先物取引の差金等決済に係る
 損失の繰越控除)が適用されるものとして、FX取引に関し平成23年中に生じ
 た先物取引の繰越損失額を平成25年分の先物取引に係る雑所得の金額から控除
 して更正の請求をしました。本件は、税務署長が、同条3項の「連続して確定申
 告書を提出している場合」に当たらず、本件特例を適用することはできないとし
 て更正をすべき理由がない旨の通知処分をした事案です。
 
  本件特例の適用を受けるためには、本件特例の適用を受ける年分の確定申告書
 を提出するまでに、確定申告書の連年提出を含め、本件特例の手続的要件を充足
 し、当該年分の先物取引に係る雑所得等の金額から控除されるべき、その年の前
 年以前3年内の各年において生じた先物取引の差金等決済に係る損失の金額が確
 定している必要があると解するのが相当である。
  これを本件についてみると、控訴人が平成26年3月10日に本件特例の適用
 を受けようとする平成25年分確定申告書を提出した時点において、平成23年
 分確定申告書は提出されていたものの、平成24年分の確定申告書は提出されて
 いなかったのであるから、「その後において連続して確定申告書を提出している
 場合」には該当しない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2169

TAINSメールニュース No.359 2018.5.24 発行(社)日税連税法データベース

2018年05月24日

【1】今週のお知らせ
(1)税務訴訟資料第266号が公表されました。
  国税庁の<税務大学校>のホームページに、平成28年1月~平成28年12
 月までの税務訴訟資料第266号171件が公表されました。現在編集を行って
 おり、順次収録予定です。
 
(2)先週(5月14日~5月18日)収録した判決・裁決の一部を紹介します。
 【所得税】
 ・H27-10-05 裁決 棄却 F0-1-776
  収入を得るために支出した金額/受取人以外の法人が支払った保険料

 【法人税】
 ・H29-06-09 裁決 棄却 F0-2-729
  行為主体/売上除外金額の認定と元役員が受領したリベート収入

 【相続税】
 ・H29-06-22 裁決 棄却、却下 F0-3-550
  更正の請求の特則/遺産分割審判の確定/「事由が生じたことを知った日」
 ・H24-09-07 裁決 棄却 F0-3-328
  無申告加算税/信託の残余財産受益権に係る「相続の開始があったことを知っ
  た日」
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
  みなし譲渡~無償返還届出の有効性と土地の時価
 (平29-06-27 非公開裁決 棄却 F0-1-774)
 
  本件は、請求人らが、亡父(被相続人)の不動産の譲渡所得について、準確定
 申告をしたところ、原処分庁が、平成24年の譲渡は法人(代表者は被相続人)
 に対するものであり、その譲渡価額が不動産の譲渡の時における価額の2分の1
 を下回っているから、譲渡所得の収入金額は、譲渡の時における価額であるとし
 て、更正処分等をした事案です。被相続人とその母は、平成6年に法人と不動産
 の賃貸借契約を締結し、それに基づき無償返還届出書を提出していました。
  審判所は、次のように無償返還届出を有効と認め、請求を棄却しました。
 
  本件売買契約までの間に、平成6年契約の解約申入れや解除がされたとは認め
 られないことからすると、平成6年契約は、売買契約時においてもなお有効であ
 ったと認められ、平成23年契約は平成6年契約の内容に必要な範囲で一部追加、
 変更を加えたものとみるべきである。そして、売買契約までの間に無償返還届出
 と異なる合意がされたとの事情も見当たらない。そうすると、本件無償返還届出
 は、売買契約時においても有効であったと認められる。
  本件における評価は、土地所有者たる被相続人が借地人たる本件法人に売却す
 る際の時価を求めるものであり、賃貸されていることに伴う制約等を考慮する必
 要はない上、土地上に存する権利をしんしゃくせず更地として評価すべきである
 から、自用地として評価することが相当である。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-774

TAINSメールニュース No.358 2018.5.17 発行(社)日税連税法データベース

2018年05月17日

【1】今週のお知らせ
(1)サービス停止のお知らせ
  下記の日程でサーバメンテナンスを行います。
  会員の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上
 げます。
                        (システム部長:水澤 裕)
  日時:2018年5月23日(水) 午前0:00 ~ 午前5:00まで
  作業時間帯はすべての機能のご利用ができません。
 
(2)先週(5月7日から11日まで)収録した判決・裁決の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H29-09-29 長野地裁 棄却・控訴 Z888-2167
  先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除/連年申告要件
 
 【相続税】
 ・H29-01-10 裁決 棄却 F0-3-547
  決定処分等の適法性/「不利益処分」該当性
 ・H29-03-02 裁決 棄却 F0-3-549
  無申告加算税/「正当な理由」の有無
 ・H18-03-31 裁決 棄却 F0-3-164
  雑種地の評価/同族会社に貸駐車場として賃貸されている土地に係る賃借権
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
  賃貸用不動産を贈与により取得した際に納付した贈与税は必要経費になるか
 (平29-09-28 大阪高裁判決 棄却 Z888-2168)
 
  控訴人は、父が賃貸業務の用に供していた本件土地建物の贈与を受け、本件土
 地建物価額を課税価格とする贈与税を納付した上で、各建物を賃貸して賃料収入
 を得ていましたが、本件の贈与税額は、不動産所得の金額の計算上、必要経費に
 算入すべき金額に該当するとして、更正の請求をしたところ、処分行政庁から、
 更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けたため、その取消しを求めた事案で、
 原審の大阪地裁が、本件各通知処分を適法としたので、控訴人がその取消しを求
 めて本件訴訟を提起しました。控訴審においても原判決と同様に、次のように判
 断して控訴人の請求を棄却しました。
 
  不動産所得の計算において必要経費として控除される不動産取得税と登録免許
 税は所有権移転の事実又は登記がされた事実それ自体を課税原因とし、所有権移
 転に伴って純資産が増加したかどうかを問わないで課税される租税である。これ
 に対し、贈与税は、贈与に伴う所有権移転を課税原因とするのではなく、贈与に
 伴う純資産の増加を課税原因とするのであって、他人の不動産の譲渡を受けて賃
 貸人たる地位を取得しようとする場合に避けられない費用ではない。また、本件
 贈与に伴う純資産の増加と、不動産賃貸収入を得ることによる純資産の増加とは、
 別個の税目の租税が賦課される所得であるから、法的な観点からみても、それぞ
 れ別個独立に所得金額を計算する必要があり、前者に関する支出が後者の必要経
 費となると解することは困難である。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2168

TAINSメールニュース No.357 2018.5.10 発行(社)日税連税法データベース

2018年05月10日

【1】今週のお知らせ
  先週(5月1日・2日)収録した内容の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H29-02-15 裁決 棄却 F0-1-771
  取得費/土地の持分取得のため親族に支払った金員
 ・H29-05-08 裁決 棄却、却下 F0-1-772
  無申告加算税の正当な理由/上場株式等の譲渡所得の期限後申告
 ・H29-05-08 裁決 棄却 F0-1-773
  上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
 ・H19-03-23 裁決 一部取消し F0-1-775
  源泉徴収義務/著作権の使用料
 
 【相続税】
 ・H29-01-06 裁決 棄却 F0-3-544
  更正の請求の特則/請求期限の徒過・相法32条の「事由が生じたことを知っ
  た日」
 ・H29-01-12 裁決 棄却 F0-3-545
  更正の請求の特則/更正の請求事由・「財産の分割」及び「判決」該当性
 ・H29-01-12 裁決 却下 F0-3-546
  審査請求/異議申立前置
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:小菅 貴子)
  寄附金控除/地方公共団体に贈与した財産に係る寄附金の額
 (平29-03-08 非公開裁決 棄却 F0-1-758)
  本件は、原処分庁が、亡夫が地方公共団体に贈与した財産(本件資料)に係る
 寄附金の額は、所得税基本通達38-16に基づき算定した金額(概算取得費)
 であるとする処分をしたことに対し、請求人がその取消しを求めた事案です。
  亡夫は本件資料を地方公共団体に贈与していることから、所得税法59条1項
 1号の規定によって、本件資料の譲渡があったものとみなされるところ、措置法
 40条1項の規定により譲渡所得は生じず、他方、寄附金控除を受ける場合の特
 定寄附金の額は、措置法40条19項の規定により、本件資料の取得費及び贈与
 に要した費用の額の合計額となります。審判所の判断は次のとおりです。
 
  本件通達は、納税者の利便も考慮し、取得費の額が不明であるか又はその計算
 が困難である場合には、納税者の利益に反しない限り、簡便な計算方法によるこ
 とを認めるものであり、措置法40条19項の適用がある場合の寄附金控除につ
 いても、概算取得費の額を取得費の額とすることは相当であると認められる。
  本件資料の取得費の額は不明であり、取得費の額を証する証拠はないことから、
 寄附金控除について概算取得費の額を取得費の額とすることは納税者の利益にも
 反しない。そして、本件資料の贈与時における価額は、学識経験者である資料評
 価委員による評価額である655万1900円とみることが相当であるから、本
 件資料の取得費の額は、収入金額を655万1900円として、その100分の
 5に相当する32万7595円であると認められる。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-758

TAINSメールニュース No.356 2018.4.26 発行(社)日税連税法データベース

2018年04月26日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINSだより
  TAINSだより(平成30年春号)を掲載いたしました。下記の会員専用ペ
 ージから閲覧できます。             (事業部長:蓮間 好一)
 https://gw.tains.org/doclibrary/docs?title_id=1&state=CATEGORY&cat=101
 
(2)次号メールニュースは5月10日に配信
  次週5月3日は祝日のため、メールニュース357号は5月10日に配信しま
 す。
 
(3)判決速報24件を収録しました。
  判決速報1435から1458までを収録しました。一部を下記に紹介します。
 
 ・判決速報1435 原子力発電所の事故に伴い受領した損害賠償金について、
  法人税の所得金額の計算上、損金の額に算入することはできないとされた事例
 ・判決速報1436 別訴において、外国子会社合算税制の適用があるものとし
  て課税庁が行った所得税の更正処分等は違法であるとして取り消されたが、同
  処分等は国家賠償法上の違法には当たらないとされた事例
 ・判決速報1437 特許業務法人の社員は、法人税法上の役員に該当し、使用
  人兼務役員には該当しないとされた事例
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 判決速報 ☆2018年04月収録分
                               ‥‥→24件
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
  受取配当等益金不算入/資本剰余金と利益剰余金を原資とする剰余金の配当
 (平29-12-06 東京地裁 全部取消し・控訴 Z888-2162)
 
  本件は、原告が、外国子会社から資本剰余金及び利益剰余金をそれぞれ原資と
 する剰余金の配当を受け、前者を法人税法24条1項3号(現行4号)の資本の
 払戻しとしての「剰余金の配当」と、後者については法人税法23条1項1号の
 「剰余金の配当」として法人税の連結確定申告をしたところ、京橋税務署長から、
 これらの剰余金の配当は、効力発生日が同じ日であることから、その全額が法人
 税法24条1項3号の資本の払戻しであるとして更正処分を受けた事案です。
 
  東京地裁は、配当の全額を法人税法24条1項3号の資本の払戻しに該当する
 としましたが、法人税法の委任を受けた施行令23条1項3号(現行4号)に規
 定するプロラタ計算については、違法・無効となる場合があると判断しています。
 
  法人税法施行令23条1項3号の定めは、資本剰余金と利益剰余金の双方を原
 資とする剰余金の配当への適用に当たり、当該剰余金の配当により減少した資本
 剰余金の額を超える「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」が算出される結
 果となる限りにおいて法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効で
 あるというべきであり、この場合の「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」
 は、当該剰余金の配当により減少した資本剰余金の額と同額となるものと解する
 のが相当である。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2162

TAINSメールニュース No.355 2018.4.19 発行(社)日税連税法データベース

2018年04月19日

【1】今週のお知らせ
  先週(4月9日から13日まで)収録した判決・裁決の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H29-01-24 東京地裁 棄却・確定 Z888-2163
  所得区分/海外不動産投資事業/米国ワシントン州LPSの法人該当性
 ・H29-03-17 裁決 棄却 F0-1-750
  上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
 ・H29-03-29 裁決 棄却 F0-1-754
  外国税額控除/確定申告を要しない配当所得
 【相続税】
 ・H28-10-17 裁決 棄却・却下 F0-3-538
  土地の評価/「特別の事情」の有無・鑑定評価の合理性
 ・H28-10-21 裁決 棄却 F0-3-539
  更正の請求/後発的事由/再生債権(貸付金債権)の額をゼロとする査定決定
 【他国税】
 ・H28-10-14 裁決 却下 F0-6-020
  自動車重量税/審査請求の対象/処分の不存在
 【その他】
 ・S59-07-12 東京地裁 棄却・確定 Z999-5397
  相続財産法人の不当利得返還請求/夫婦の生活費(共有財産)・葬式費用の負
  担                     (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  みなし贈与~請求人所有の居宅に係る改修工事費用を母親が負担した場合~
 (平29-05-24 非公開裁決 棄却 F0-3-533)
 
  この事案は、原処分庁が、請求人の母が行った請求人所有の建物(本件居宅)
 の改修工事によって、請求人が改修工事部分の所有権を取得したと解した上で、
 請求人に対し、その部分の所有権に相当する経済的利益を贈与により取得したも
 のとして、みなし贈与課税(相法9)をしたことから争われたものです。
  審判所は、次のとおり判断し、みなし贈与課税は適法であるとしました。
 
  改修工事のうち、照明器具等及びその取付工事等を除いた工事部分については、
 本件居宅から容易に取り外せず、本件居宅の構成部分となっているもの、又は社
 会通念上本件居宅の一部分と認められるべきものであって、取引上の独立性を有
 しないといえるから、本件居宅への付合(民法242)が成立する。
  その付合部分については、本件居宅の所有者である請求人がその所有権を取得
 し、付合部分の工事費用を負担した母は、請求人に対し、民法第248条に基づ
 き、付合により生じた損失に相当する費用について償還請求することができるが、
 母には、請求人に対する費用償還請求権を行使する意思はおよそなく、当該権利
 を放棄していたと認められ、結局、請求人は付合による所有権取得に見合う債務
 を何ら負担していないということができる。
  したがって、付合部分については、請求人は、付合が成立した時点で、母から
 相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで‥利益を受けた」といえる。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-3-533

TAINSメールニュース No.354 2018.4.12 発行(社)日税連税法データベース

2018年04月12日

【1】今週のお知らせ
(1)公表裁決(裁決事例集No.108)の法人税の事例を収録しました。
 【法人税】
 ・H29-08-21 公表裁決 棄却・一取・全取 J108-3-07
  (土地等の販売又は譲渡に係る収益/宅地等/その他)
 
 ・H29-07-14 公表裁決 棄却    J108-3-08
  (役員退職給与/支給事実/退職の事実の有無)
 
 ・H29-09-26 公表裁決 一取・全取 J108-3-09
  (移転価格税制/米ドルの各貸付けに係る利息額の独立企業間価格の算定)
 
(2)平成29年7月から9月までの公表裁決12事例の収録が完了しました。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★裁決事例集108集 ………12件
 
(3)法人税の判決を収録しました。
 ・H29-12-06 東京地裁 全部取消し(控訴) Z888-2162
  (受取配当益金不算入/資本剰余金と利益剰余金を原資とする剰余金の配当)
 
 ・H29-01-24 東京高裁 棄却 Z888-2164
  (米国LPSの法人該当性と申告是認通知書/過少申告加算税
                  /通則法65条4項所定の正当な理由)
 
                        (税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  徴収事件~滞納処分の停止の「取消事由」該当性~
 (平29-07-25 公表裁決 棄却 J108-5-12)
 
  税務署長等は、滞納者に滞納処分の執行等をすることができる財産がないとき
 (徴収法153条1項1号)、その生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき(
 同法153条1項2号)などの事実が認められるときは、滞納処分の執行を停止
 し、その停止後3年以内に、その事実がないと認めるときは、執行の停止を取り
 消します(同法154条1項)。この事案は、滞納処分の停止取消処分について、
 請求人に滞納処分の停止の取消事由が認められるか否かが争われたものです。
  審判所では、下記の滞納処分の停止の取消事由が認められると判断しました。
 
  請求人は、停止取消処分時において供託金払渡請求権(係属中の配当異議の訴
 えに係る未払賃金に基づく請求人の配当額に相当する供託金)を有していたと認
 められ、その払渡請求権は差押えの対象となる将来生ずべき債権であると認めら
 れる以上、請求人に徴収法153条1項1号に該当する事実はない。
  また、請求人は、妻の扶養親族であるが、自らも就労して収入を得ており、請
 求人の属する世帯は、それなりの収入がある一方、定期的に多額の支出があると
 は認められず、生活が窮迫しているとは認められないことを考慮すると、払渡請
 求権に対して滞納処分を執行したとしても、生活保護法の適用を受けなければ生
 活を維持できない程度の状態に直ちに陥ることはないと認められ、請求人に徴収
 法153条1項2号に該当する事実もない。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 J108-5-12

TAINSメールニュース No.353 2018.4.5 発行(社)日税連税法データベース

2018年04月05日

【1】今週のお知らせ
(1)国税庁で開催された全国国税局長会議の資料を収録しました。
  ・全国国税局長会議資料 平成30年1月18・19日 国税庁
    ≪検索方法≫ 【キーワード】 全国国税局長会議 平成30年1月
 
(2)【消費税】の公表裁決(裁決事例集No.108)を収録しました。
  ・H29-08-07 公表裁決 一部取消し J108-4-10
   (非課税取引/物品切手等の譲渡)
  ・H29-09-15 公表裁決 棄却・却下 J108-4-11
   (免税取引/輸出免税)
 
(3)【消費税】の非公開裁決を収録しました。
  ・H29-05-16 裁決 棄却 F0-5-192
   (個別対応方式/転売目的で購入した賃貸用マンションの用途区分)
  ・H29-04-20 裁決 一部取消し F0-5-190
   (非課税取引/介護付有料老人ホームにおける食事の提供・洗濯等)
  ・H29-04-17 裁決 却下 F0-5-191
   (請求の利益/処分の不存在)
  ・H29-03-15 裁決 棄却 F0-5-193
   (建物等の取得/課税仕入れの時期/通達ただし書の適用)
  ・H29-03-08 裁決 棄却 F0-5-189
   (簡易課税制度選択届出の効力/代理人による届出)
  ・H29-03-10 裁決 棄却 F0-5-134
   (固定資産の譲渡時期/建物等の取得に係る消費税等の還付と通達ただし書
    の適用)                (税法データベース編集室)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
  建物等の取得/課税仕入れの時期/消費税基本通達ただし書の適用
 (平29-03-15 非公開裁決 棄却 F0-5-193)
 
  請求人が消費税基本通達9-1-13のただし書の契約締結日を「課税仕入れ
 を行った日」として控除対象仕入税額を計算して消費税等及び法人税の申告を行
 ったところ、原処分庁が、当該建物等は翌課税期間に引渡しがされたと認められ
 るとして、消費税等及び法人税の更正処分等をした事案です。
 
  建物等の引渡日についてみると、①売買契約書には、建物等の所有権は平成2
 6年12月1日に関係会社から請求人に移転する旨が記載されていること、②同
 日請求人に所有権が移転した旨の登記がされていること、③入居者に対しても同
 日に賃貸人の地位が請求人に引き継がれる旨通知されていたことなどから、建物
 等は、平成26年12月1日に請求人に引き渡されたことが明らかである。
  本件課税期間以後の課税期間の終了の日を3月末日から10月末日と変更した
 ことは、請求人が本件課税期間のうちの4か月間のみ自動販売機設置契約に係る
 販売手数料収入を収益計上し、その少額の販売手数料収入のみを課税資産の譲渡
 等の対価の額とする一方、平成26年12月1日以後に賃料収益等の帰属の主体
 となることにより、本件課税期間において、課税売上割合を100パーセントに
 して建物等に係る消費税等の額の全部の還付を求める確定申告をしていることか
 らみれば、その還付を求めるためだけに恣意的に行われたものと認められる。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-5-193

TAINSメールニュース No.352 2018.3.29 発行(社)日税連税法データベース

2018年03月29日

【1】今週のお知らせ
  国税不服審判所のホームページに平成29年7月から9月分の裁決事例12件
 が公表されました。 http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/108.html
 
 【所得税】
 1.J108-1-01 H29-08-22公表裁決 棄却
   (国税の納付義務の確定/措置法29条の2(税制適格ストックオプション)
    適用後に非居住者となった場合)
 2.J108-1-02 H29-09-01公表裁決 棄却
   (過少申告加算税/修正申告後に国外財産調書を提出した場合)
 3.J108-1-03 H29-09-26公表裁決 一部取消し
   (無申告加算税 更正又は決定の予知/請求人名義の不動産から生ずる所得)
 4.J108-1-04 H29-08-23公表裁決 一部取消し
   (重加算税/医師(内科医及び産業医)の収入計上漏れ)
 5.J108-2-05 H29-07-26公表裁決 一部取消し
   (歯科矯正治療費の収入すべき時期/矯正装置装着時)
 6.J108-2-06 H29-08-02公表裁決 棄却
   (FX取引に係る差損益金等の収入すべき時期/ロールオーバーの時)
 【他国税】
 7.J108-5-12 H29-07-25公表裁決 棄却
   (滞納処分に関する猶予、停止等/徴収法153条1項各号該当性)
 
                        (税法データベース編集室)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
  国税の納付義務の確定/措置法29条の2適用後に非居住者となった場合
 (平29-08-22 公表裁決 棄却 J108-1-01)
 
  ストックオプションの権利行使益は、原則として給与所得として課税されます
 が、税制適格ストックオプションについては、権利行使時には課税せず、取得し
 た特定株式の譲渡時に、値上がり益と併せて譲渡所得として課税されます。
  本件は、請求人が、居住者として税制適格ストックオプションの権利行使によ
 り取得した株式をK国に出国後に移転(保管口座を移管)したことによるみなし
 譲渡所得について確定申告をした後、当該譲渡所得は、K国との間の租税協定に
 より日本国には課税権がないとして更正の請求をしたのに対し、原処分庁が、更
 正をすべき理由がない旨の通知処分をした事案です。
 
  措置法29条の2第4項は、特定株式の移転があった場合には、その時におけ
 る価額による譲渡があったものとみなす旨規定している。そして、非居住者の特
 定株式の譲渡に係る所得は、所得税法161条1号に規定する国内源泉所得に該
 当することから、特定株式を譲渡した非居住者は、所得税を納める義務がある。
  本件みなし譲渡益のうち「権利行使益」については、権利行使日における居住
 地国である日本国に課税権が認められ、租税協定は日本国の課税権を制限してい
 ないから、課税権は日本国にある。一方、みなし譲渡益のうち「値上がり益」は、
 K国にのみ課税権が配分されることになる。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 J108-1-01

TAINSメールニュース No.351 2018.3.22 発行(社)日税連税法データベース

2018年03月22日

【1】今週のお知らせ
  平成29年の各税理士会の相談事例を収録しました。
 
 【キーワード】税理士会提供相談事例 平成29年
 【税区分】  法人税
 
 ・南九州税理士会会員税務相談室事例0011 法人税 時価が下落している販
  売用不動産の評価について
          【南九州税理士会報 平成29年3月1日第461号掲載】
 
 ・東京税理士会会員相談室0078 国際税務 中国(上海)出向者に対する日
  本と中国の税務   【東京税理士界 平成29年4月1日第723号掲載】
 
 ・東京税理士会会員相談室0079 国際税務 中国(上海)から支払われる技
  術使用料に対する日本と中国の税務
            【東京税理士界 平成29年4月1日第723号掲載】
 
 ・東京税理士会会員相談室0084 法人税 事前確定届出給与の届出支給額と
  実際支給額が異なる場合
            【東京税理士界 平成29年7月1日第726号掲載】
 
                        (税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
  取締役が行った行為による損害賠償請求権の収益計上時期~同時両建説
 (平29-05-09 非公開裁決 棄却 F0-2-719)
 
  本件は、請求人の取締役が虚偽の書類を作成して架空の委託加工費を計上し請
 求人から不法に金員を取得した行為について、原処分庁が、その行為による損害
 賠償請求権の収益計上時期はそれぞれ損失が発生した各事業年度に帰属させるべ
 きであるなどとして、法人税等の各更正処分並びに消費税等の各更正処分及び重
 加算税の各賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、収益は全て損失が発生した
 事実を請求人の代表者が把握した事業年度に帰属させるべきであるとして各処分
 の全部又は一部の取消しを求めた事案です。
  審判所は、次のように判断し、請求人の主張を棄却しました。
 
  法人税法第22条第2項及び第4項の規定からすると、収益は、その実現があ
 った時、すなわち、その収入すべき権利が確定した時の属する事業年度の益金に
 計上すべきものと解される。そして、不法行為による損害賠償請求権については、
 通常、損失が発生した時には同額の損害賠償請求権が発生、確定しているから、
 これらを同時に損金と益金とに計上するのが原則であると考えられる。
  本件取締役が行った行為は、通常人を基準にして、請求人の代表者が本件損害
 賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないといえるよう
 な客観的状況にあったとはいえないのであり、本件損害賠償請求権に係る収益は、
 それぞれ損失が発生した各事業年度に帰属させるべきである。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-2-719