TAINSメールニュース No.460 2020.04.30 発行(社)日税連税法データベース

2020年04月30日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINSだより
  TAINSだより(2020年春号)を掲載いたしました。検索トップページ
 の右下「TAINSだより」をクリックすると、閲覧できます。
                         (事業部長:上田 健一)
 
(2)第一法規株式会社が実施する税理士等実務家のリモートワーク支援施策につ
 いて
  第一法規株式会社が、新型コロナウイルス感染防止対策としてリモートワーク
 を行っている税理士等実務家のために、法情報総合データベース「D1-Law.com 
 現行法規」を期間限定で無償公開しております。詳しくは次のURLサイトをご
 覧ください。
  https://www.daiichihoki.co.jp/osirase/d1law_free/index.html
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:小菅 貴子)
  損金の額/売上原価/高額譲受けにより取得した土地の購入価額と時価との差
 額
 (令01-10-18 東京地裁 却下・棄却 Z888-2288)
 
  本件は、原告が時価を超える額の対価で購入した土地を売却し、購入価額全額
 を売上原価として損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、津山税務
 署長から、購入価額のうち時価との差額は損金の額に算入できないとして更正処
 分等を受けた事例です。裁判所は、時価よりも高額な売買代金による高額譲受け
 が行われた場合に、当該資産の「購入の代価」をどのように評価すべきかについ
 て、法人税法や法人税法施行令に直接の規定は設けられていないとしながらも、
 次のとおり判断して、原告の訴えを棄却しました。
 
  法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も、売
 買代金と時価との差額は、買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利
 益」であり、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」
 については、法法37条7項が定義する「寄附金の額」に該当することになる。
 そうすると、棚卸資産の高額譲受けにおいても、当該対価の額と当該資産の時価
 との差額については、その全部又は一部が「寄附金の額」と評価される場合には、
 法人税法の適用上、損金の額への算入が制限されるのであるから、そのような扱
 いを受ける当該差額は、「売上原価」とは異なる費用又は損失の額として別途損
 金該当性を判断すべきものというべきである。したがって、当該差額は、法法2
 2条3項1号にいう「売上原価」に当たらず、法令32条1項1号イの「当該資
 産の購入の代価」には含まれないと解するのが相当である。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2288

TAINSメールニュース No.459 2020.04.23 発行(社)日税連税法データベース

2020年04月23日

【1】今週のお知らせ
  株式会社ぎょうせいが、新型コロナウイルス感染防止対策としてリモートワー
 クを行っている税理士のために、月刊「税理」、旬刊「速報税理」の最新刊が読
 める「ぷらっと税理」を期間限定で公開しております。
  詳しくは次のURLのサイトをご覧ください。
  https://shop.gyosei.jp/information/detail/217
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
  配当所得該当性/外国法人の事業分割に伴い日本の居住者に交付された株式
 (令01-08-01 公表裁決 棄却 J116-2-02)
 
  日本の居住者である甲は、米国に本店を置くH社の株式を米国の証券口座にて
 保有していました。H社は平成27年に事業分割を行い、それに伴い甲は上記証
 券口座にてM社株式を取得しましたが、米国での課税はありませんでした。
  原処分庁は、M社株式の取得は、剰余金の配当であり、所得税法24条で剰余
 金の配当から除外される法人税法2条12号の9の分割型分割でないとして、所
 得税の更正処分等を行った事案です。審判所は、処分は適法であるとしています。
 
  H社によるM社の株式の交付に当たっては、本件事業分割に伴いH社から商号
 変更したN社の連結株主資本等変動計算書上、利益剰余金のみが減少しているこ
 とが認められる。したがって、請求人に対する本件株式の交付は、H社の株主と
 しての地位を有する者に対し、H社の利益剰余金を原資として行われたものとい
 うことができるから、所得税法24条1項に規定する剰余金の配当に該当すると
 認められる。
  米国においては、権利義務の一般承継を特徴とする会社分割制度は存在しない。
 本件事業分割は、我が国の会社法上の分割に相当する法的効果を具備するものと
 はいえないというべきである。したがって、本件事業分割は、法人税法2条12
 号の9に規定する分割型分割には当たらないというべきである。
  《検索方法》 【キーワード】 J116-2-02

TAINSメールニュース No.458 2020.04.16 発行(社)日税連税法データベース

2020年04月16日

【1】今週のお知らせ
 会員各位
  平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
 
  緊急事態宣言を受け、当社団の職員を原則、在宅勤務としております。
 
  これに伴い、お問い合せは、当社団ホームページ最下部右にございますお問合
 せフォームからの送信にてお願いいたします。
 
  会員の皆様には大変ご不便をおかけしますが、ご理解をいただきますようよろ
 しくお願いいたします。
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  みなし譲渡課税/非上場株式の低額譲渡~納税者逆転敗訴~
 (令02-03-24 最高裁 破棄差戻し Z888-2296)
 
  この事案では、非上場株式の譲渡について、所得税法59条1項の「その時に
 おける価額」は、配当還元価額(1株当たり75円)か、類似業種比準価額(1
 株当たり2505円)かが争われました。具体的には、所基通59-6を条件に
 適用される評価通達188の(3)の少数株主の判定は、譲受人の株式取得後の
 議決権割合によるのか、譲渡人の株式譲渡直前の議決権割合によるのかです。
  最高裁では、次の判断をし、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻しました。
 
  株式の譲渡に係る譲渡所得に対する課税においては、当該譲渡における譲受人
 の会社への支配力の程度は、譲渡人の下に生じている増加益の額に影響を及ぼす
 ものではないのであって、譲渡所得に対する課税の趣旨に照らせば、譲渡人の会
 社への支配力の程度に応じた評価方法を用いるべきものと解される。
  所基通59-6の定めは、譲渡所得に対する課税と相続税等との性質の差異に
 応じた取扱いをすることとし、少数株主に該当するか否かについても当該株式を
 譲渡した株主について判断すべきことをいう趣旨のものということができる。
  ところが、原審は、本件株式の譲受人であるC社が評価通達188の(3)の
 少数株主に該当することを理由として、本件株式につき配当還元方式により算定
 した額が本件株式譲渡の時における価額であるとしたものであり、この原審の判
 断には、所得税法59条1項の解釈適用を誤った違法がある。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2296

TAINSメールニュース No.457 2020.04.09 発行(社)日税連税法データベース

2020年04月09日

【1】今週のお知らせ
(1)公表裁決事例を収録中です。
  先週より、国税不服審判所のホームページに掲載された、令和元年7月から9
 月分の公表裁決事例の収録作業を行っております。
  収録が済んでいるものは下記のキーワードで検索できます。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★裁決事例集116集
 
(2)判決速報を収録しました。
  判決速報1509から1510、また1512から1517までの計8件を収
 録しました。一部を下記に紹介します。
 ・判決速報1510
   X(控訴人会社)が行った特定資本関係発生後5年を経過した適格合併につ
  いて、法人税法132条の2を適用し得るとされた事例
 ・判決速報1512
   調査に基づき行われた期限後申告が錯誤により無効とはいえないとされた事
  例
 ・判決速報1517
   麻酔科医が受領する出張麻酔の対価は、措置法26条所定の「社会保険診療
  報酬につき支払を受けるべき金額」に該当せず、また、消費税も非課税とはな
  らないとされた事例
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 判決速報 ☆2020年04月収録分 →8件
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
  損害賠償額の算定/将来の逸失利益の計算における控除すべき中間利息の割合
 (平17-06-14 最高裁判決 破棄差戻し Z999-5415)
 
  原審(札幌高裁)は、交通事故による損害賠償額の算定において、A(被上告
 人の子)の将来の逸失利益を現在価額に換算するための中間利息の控除割合を年
 3%とすることが将来における実質金利の変動を考慮しても十分に控え目なもの
 というべきである旨を示して、被上告人らの請求を一部認容したところ、一審被
 告(上告人)が上告した事案です。最高裁は、原審の判断は是認することができ
 ないとして、原判決中上告人の敗訴部分を破棄し、原審に差し戻しました。
 
  民法404条において民事法定利率が年5%と定められたのは、ヨーロッパ諸
 国の一般的な貸付金利や法定利率、我が国の一般的な貸付金利を踏まえ、金銭は、
 通常の利用方法によれば年5%の利息を生ずべきものと考えられたからである。
  損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するにつ
 いても、法的安定及び統一的処理が必要とされるのであるから、民法は、民事法
 定利率により中間利息を控除することを予定しているものと考えられる。
  事案ごとに、また、裁判官ごとに中間利息の控除割合についての判断が区々に
 分かれることを防ぎ、被害者相互間の公平の確保、損害額の予測可能性による紛
 争の予防も図ることができる。諸点に照らすと、損害賠償額の算定に当たり、被
 害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、
 民事法定利率によらなければならないというべきである。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-5415

TAINSメールニュース No.456 2020.04.02 発行(社)日税連税法データベース

2020年04月02日

【1】今週のお知らせ
 会員各位
  平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
 
  2020年3月31日(火)までを予定しておりました当社団職員の新型コロ
 ナウイルスへの感染リスクの軽減と安全確保の対策ですが、現状を鑑み、202
 0年4月17日(金)まで延長させていただくこととなりました。
  交代での在宅勤務、また、4月1日以降は30分の退社時間繰り上げを実施い
 たします。
 
  これに伴い、お問い合せ等に対する電話対応を十分に行うことができない可能
 性がございます。
  問い合せについては可能な限りメールを優先していただくとともに、回答まで
 時間を要する場合があることをご了承ください。
  なお、実施期間については、状況により更に延長を検討します。
 
  会員の皆様には大変ご不便をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。
 何卒ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
  源泉徴収義務/インド法人に支払った金員/租税条約に異なる定めがある場合
 (平30-02-15 非公開裁決 棄却 F0-1-946)
 
  本件は、医薬品製造販売業を営むA社が、インド所在の外国法人に対し医薬化
 学物質の研究及びコンサルティング業務を委託し、その業務委託料(本件金員)
 を支払ったところ、原処分庁が、所得税法162条(租税条約に異なる定めがあ
 る場合の国内源泉所得)の規定により、国内源泉所得とみなされるとして、源泉
 所得税等の納税告知処分をした事案です。審判所は、次のように判断しました。
 
  日印租税条約12条の規定からすると、日本法人が、インド法人に対して、イ
 ンド国内において提供された技術上の役務に対する料金を支払う場合、当該料金
 は、日本国内において生じたものとされ、日本の法令に従って租税を課すことが
 でき、国内源泉所得となる。委託業務のうちの一部は、インド法人が医薬化学物
 質や化学化合物の合成、実験及び分析等を行うというものであり、また、一部は、
 インド法人がインドにおける薬事法規制等に関するコンサルティングを行うもの
 であるといえるから、これらの業務は、専門的知識を有するインド法人の知識又
 は技能を活用して行う役務の提供であったということができる。
  そうすると、本件金員は、所得税法162条後段の規定により、国内源泉所得
 の一つである同法161条2号に規定する「人的役務の提供に係る対価」とみな
 されるため、A社は、本件金員の支払の際、源泉徴収義務を負うと認められる。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-946

TAINSメールニュース No.455 2020.03.26 発行(社)日税連税法データベース

2020年03月26日

【1】今週のお知らせ
 収録した判決・裁決の一部を紹介します。
 【所得税】
 ・H29-12-15 裁決 棄却 F0-1-928
  更正の請求/通則法23条1項3号該当性
 ・H21-04-23 裁決 棄却 F0-1-1000
  更正の請求/裁判上の和解/先物取引の無効
 ・H17-01-28 裁決 棄却 F0-1-999
  所得の帰属/商品先物取引に係る所得
 
 【相続税】
 ・H23-02-03 裁決 棄却 F0-3-668
  課税財産/売買残代金請求権/成年後見人による売買契約の成立日
 ・H21-02-25 裁決 棄却 F0-3-669
  不動産及び出資の評価/貸付金債権の存否/過少申告加算税「正当な理由」の
 有無
 
 【その他】
 ・H25-01-22 東京地裁 棄却、控訴 Z999-0153
  税理士損害賠償/善管注意義務違反/原始資料に基づき仕訳伝票を精査すべき
 義務
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
  重加算税~外部からうかがい得る特段の行動は認められないとして一部取消し
 (平30-11-12 非公開裁決 一部取消し F0-3-658)
 
  被相続人の配偶者である請求人名義の定期貯金が申告漏れになったことについ
 て、原処分庁は、隠蔽があるとして、重加算税の賦課決定処分を行いました。こ
 の処分に対し、事実を隠蔽又は仮装したか否かが争点の一つとなった事案です。
  審判所は、請求人は、高齢であり、長年にわたり被相続人と2人で農業に従事
 した上、その所得の全部が被相続人に帰属するという法的知識を有していたとは
 認め難いから、本件定期貯金を請求人の固有の財産と理解していたとしても不自
 然とまでいうことはできないなどと認定し、重加算税の賦課決定処分については、
 次のとおり違法であると判断し、一部を取り消しました。
 
  原処分庁が提出する請求人の上申書及び質問応答記録書については、その信用
 性を認めることができないから、上申書及び質問応答記録書からだけでは、請求
 人が、当初申告の当時、本件定期貯金が被相続人に係る相続財産に含まれると認
 識していたと認めることはできない。また、原処分庁が主張するように、請求人
 が税理士や調査担当職員に、本件定期貯金の存在を告げなかったとしても、それ
 が過少申告の意図を外部からうかがい得る特段の行動と認めることもできない。
  当初申告は、事実を隠蔽又は仮装したところに基づくものとはいえないから、
 通則法第68条第1項所定の重加算税の賦課要件を満たさない。したがって、重
 加算税の賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分は違法である。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-3-658

TAINSメールニュース No.454 2020.03.19 発行(社)日税連税法データベース

2020年03月19日

【1】今週のお知らせ
 会員各位
  平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
 
  2020年3月13日(金)までを予定しておりました当社団職員の新型コロ
 ナウイルスへの感染リスクの軽減と安全確保の対策ですが、現状を鑑み、202
 0年3月31日(火)まで延長させていただくこととなりました。
  引き続き、15分の退社時間の繰り上げ及び交代での在宅勤務を実施いたしま
 す。
 
  これに伴い、お問い合せ等に対する電話対応を十分に行うことができない可能
 性がございます。
  問い合せについては可能な限りメールを優先していただくとともに、回答まで
 時間を要する場合があることをご了承ください。
  なお、実施期間については、状況により更に延長を検討します。
 
  会員の皆様には大変ご不便をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。
 何卒ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
  個人法人間における土地の貸借関係~賃貸借及び使用貸借の土地の評価~
 (令01-08-19 非公開裁決 一部取消し F0-3-667)
 
  請求人らが、亡父の相続により取得した宅地の価額について、法人に賃貸して
 いる土地は借地権価額を控除した価額により亡父の相続税の申告をしたところ、
 原処分庁が、当該土地の一部について「土地の無償返還に関する届出書」(本件
 届出書)が提出されているから、相当地代通達を適用すべきであるとして更正処
 分を行ったのに対し、請求人らが、当該届出書は、その記載内容に誤りがあるか
 ら無効であるとして争った事案です。審判所は、次のように判断しました。
  
  本件病院敷地は、医療法人が被相続人らから借り受けており、合意に基づく本
 件届出書は、有効なものと認められる以上、たとえ、本件届出書の記載内容に誤
 り等が見受けられたとしても、相当地代通達の定めにより評価すべきである。
  本件薬局敷地上には、同族会社(本件会社)が所有する薬局建物が存しており、
 本件会社は、薬局建物を建築する際に、被相続人らに対し権利金を支払わず、そ
 の後平成21年8月まで地代を支払っていない。しかしながら、被相続人らと本
 件会社の間に賃貸借契約書は存在しないものの、昭和55年から現在に至るまで
 長期間にわたって薬局建物の敷地として利用しており、土地の貸借において当事
 者の一方が法人である場合には、その間の取引は第三者間における取引と同様の
 経済的合理性によるべきであり、個人が法人に対して建物の所有を目的として土
 地の使用を許諾したときに、同土地に借地権が設定されたものと認めるべきであ
 る。したがって、本件薬局敷地については、相当地代通達の定めではなく、評価
 通達25《貸宅地の評価》の定めにより、評価すべきである。
   ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-3-667

TAINSメールニュース No.453 2020.03.12 発行(社)日税連税法データベース

2020年03月12日

【1】今週のお知らせ〔行政文書の紹介〕
 解決すべき問題とどのように向き合って検討していくかの参考に!
     (TAINSコード:調査審理の実務(大阪審判所)H150912)
  租税の基本原則である「租税法律主義」。租税の賦課・徴収は、法律の根拠に
 基づいて行われます。我々税理士の実務に目を向けると、この租税法律主義は頭
 にあるものの、それをどのように実践し、問題解決に向けて事案とどのように向
 き合って検討していけばよいのか分からないこともあると思います。
  そのような場合に、「調査審理の実務(大阪審判所)H150912」を一読
 してみると良いでしょう。この資料は、国税不服審判所が一つの審査請求事案に
 ついて、どのような審理過程を経て、議決するのかをシナリオ化したものです。
 担当審判官における事案の進行管理などを中心に示したものではありますが、問
 題を解決するためにどのような手順や思考過程を経ているか、事実の認定や関係
 法令への当てはめをどのように行っているのか参考になるものと考えられます。
  審判官は、事実関係、請求人及び原処分庁の主張、関係法令などを順次整理し
 て、最終的な結論(議決)に向けて作業を進めていきます。請求人や関係者と面
 談して、当事者の主張等を丁寧に整理したり、租税法の書籍等で問題箇所の概略
 的な知識を得たりするほか、過去の裁判例等も調べたりします。
  また、この資料における事案では、所得税法における生命保険金の収入時期の
 話がでてきますが、審判官は、保険法の概説書や一般的な保険約款、保険会社の
 ホームページをみて、保険に関する知識を広げて、単に所得税法のことだけを考
 えて判断しているわけではないことがみてとれます。
  この資料では、一つの問題を解決するための手順や思考過程が、事例に基づい
 て記述されており、参考になると思われます。 (要点メンバー:鈴木 涼介)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:小菅 貴子)
 税理士損害賠償/相続税対策でされたDESに係る債務消滅益の説明義務違反
 (令01-08-21 東京高裁 控訴棄却、請求認容 Z999-0174)
  本件は、不動産の賃貸及び管理等を目的とする株式会社である被控訴人が、顧
 問契約を締結していた税理士法人である控訴人に対し、控訴人は、被控訴人に対
 して約11億円の貸金等債権を有する被控訴人の前代表者甲の相続税の節税のた
 め、被控訴人に有利な方法(清算方式)があるのに、その助言指導をせず、DE
 Sを提案し、その際、当該DESにより被控訴人に多額の債務消滅益が生じ、法
 人税が課税されるリスクがあることを説明せず、本来支払う必要のなかった法人
 税等相当額の損害などを被ったとして、税務顧問契約の債務不履行又は不法行為
 に基づき、損害額合計3億2902万7820円及び遅延損害金の支払を求める
 事案です。裁判所は、次のとおり判断して控訴人の控訴を棄却しました。
 
  控訴人は、被控訴人に対し、顧問税理士として、租税関係法令に適合した範囲
 内で、課税上最も有利となる方法を検討して、その方法を採用するように助言指
 導する義務を負っているのであり、また、DES方式を提案するに当たり、債務
 消滅益課税について具体的な説明をし、法人税及び相続税の課税負担を少なくし、
 より節税の効果が得られる清算方式を採用するよう助言指導する義務があった。
  控訴人が本件DESによって債務消滅益が発生することを正しく説明していれ
 ば、被控訴人は2億9000万円の法人税の課税を避けるため、多少のデメリッ
 トがあっても清算方式を採用したものと推認できるから、上記義務違反と法人税
 の課税との間に相当因果関係はないという控訴人の主張は採用し得ない。
      ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-0174

TAINSメールニュース No.452 2020.03.05 発行(社)日税連税法データベース

2020年03月05日

【1】今週のお知らせ
 会員各位
  平素は格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
 
  当社団職員の新型コロナウイルスへの感染リスクの軽減と安全確保のために、
 社団職員について15分の退社時間の繰り上げ及び交代での在宅勤務を実施する
 こととしました。
  これにともない、お問い合せ等に対する電話対応を十分に行うことができない
 ことが予測されます。
 
  問い合せについては可能な限りメールを優先していただくとともに、回答まで
 時間を要する場合があることをご了承ください。
  会員の皆様には大変ご不便をおかけしますが、ご理解をいただきますようよろ
 しくお願いいたします。
 
  期間:2020年3月5日(木)~2020年3月13日(金)
 
  なお、実施期間については、状況により延長を検討します。
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
 組織再編成に係る行為計算否認~特定資本関係5年超要件を満たす適格合併~
 (令01-12-11 東京高裁 棄却・上告等 Z888-2287)
 
  本件は、控訴人が、完全子会社を被合併法人とする適格合併(平成22年改正
 前の法人税法2条12号の8)を行い、その子会社が有していた未処理欠損金額
 を控訴人の欠損金額とみなして損金の額に算入したところ、処分行政庁から、法
 人税法132条の2の適用により、法人税の更正処分等を受けた事案です。
  東京高裁も本件更正処分等は適法であるとし、組織再編税制の基本的な考え方
 及び完全支配関係にある法人間の適格合併について、次のように判断しています。
 
  完全支配関係にある法人間の適格合併については、支配関係にある法人間の適
 格合併におけるような従業者引継要件及び事業継続要件の定めは設けられていな
 い。しかしながら、組織再編税制は、組織再編成の前後で経済実態に実質的な変
 更がなく、移転資産等に対する支配が継続する場合には、その譲渡損益の計上を
 繰り延べて従前の課税関係を継続させるということを基本的な考え方としており、
 また、先に組織再編税制の立案担当者の説明を引用して判示したとおり、組織再
 編税制は、組織再編成により資産が事業単位で移転し、組織再編成後も移転した
 事業が継続することを想定しているものと解される。
  完全支配関係にある法人間の適格合併について、当該基本的な考え方が妥当し
 ないものと解することはできないから、当該適格合併においても、被合併法人か
 ら移転した事業が継続することを要するものと解するのが相当である。
     《検索方法》  【キーワード】 Z888-2287

TAINSメールニュース No.451 2020.02.27 発行(社)日税連税法データベース

2020年02月27日

【1】今週のお知らせ
 収録した裁決の一部を紹介します。
 【所得税】
 ・H30-10-05 裁決 棄却 F0-1-1007
  保証債務の特例/譲渡代金を法人への貸付けとした場合
 ・H30-07-04 裁決 却下、棄却 F0-1-1025
  源泉徴収義務/法人から顧問に交付した金員の給与該当性
 ・H30-05-23 裁決 棄却 F0-1-992
  所得区分/貸付金債権を放棄したことによる貸倒損失
 ・H30-05-21 裁決 一部取消し F0-1-991
  推計方法の合理性/所得の帰属/他人名義で営まれている風俗店
 ・H30-01-04 裁決 棄却 F0-1-929
  源泉徴収義務/非居住者へ支払った不動産の譲渡対価
 
 【相続税】
 ・H30-05-23 裁決 棄却 F0-3-653
  相続財産の範囲(生命保険契約に関する権利)/過少申告加算税(正当な理由
 )
 
 【他国税】
 ・H25-05-10 裁決 棄却 F0-8-186
  差押処分/債権の帰属/得意先の譲渡
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  税理士損害賠償~遺留分減殺請求中の相続税申告と小規模宅地等の特例~
 (平30-02-19 東京地裁 一部認容 Z999-0172)
 
  この事案は、遺言により全財産を相続するものとされている原告が、遺留分減
 殺請求中に、相続税申告を行った税理士Aに対して損害賠償を求めるものです。
  裁判所では、そのような状況下において相続税申告業務を行う税理士は、(1
 )小規模宅地等の特例を適用することなく法定相続分に従った共同相続として申
 告をする、(2)遺言により全財産を相続したものとして申告をする、のいずれ
 かの方法を選択することになるものと解され、税理士Aは(1)の方法を選択し
 たものと考えられるとしたうえで、次のとおり判断し、原告の損害賠償請求の一
 部(遺留分減殺請求権者であるB及びCの相続税相当額等)を認容しました。
 
  (1)の方法を選択し、原告と対立関係にあったB及びCの相続税を相続財産
 から支出した場合、遺留分減殺の解決が長期化すればその間は本来原告が負担す
 べき税額を超えた支出状態が継続することになる可能性がある上、B及びCから
 更正請求についての協力を得られないなどの事態も想定されたと考えられる。
  上記事実関係の下では、(1)の方法は(2)の方法と比較してリスクが高か
 ったというべきであり、これを採用するのであれば、当該リスクの存在について
 十分に説明した上で原告の同意を得て行う必要があったというべきである。
  税理士Aが(1)の方法を採用したことは不適切であり、相続税申告手続を受
 任した税理士としての善管注意義務に違反する行為であったというべきである。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-0172