TAINSメールニュース No.371 2018.8.16 発行(社)日税連税法データベース

2018年08月16日

【1】今週のお知らせ
  収録した裁決の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H27-08-27 裁決 棄却 F0-1-807
  重加算税と偽りその他不正の行為/底引網漁業における売上除外
 ・H27-10-28 裁決 棄却 F0-1-809
  所得区分/麻酔科医が病院から得た報酬は給与所得
 
 【法人税】
 ・H27-08-04 裁決 棄却 F0-2-751
  債務免除益の収益計上時期/元理事長に対し負っていた求償債務
 ・H27-10-15 裁決 棄却 F0-2-757
  修繕費か資本的支出か/立体駐車場の循環装置駆動部に係る部品の取替工事費
  用
 
 【相続税】
 ・H29-08-02 裁決 棄却 F0-3-571
  調査の範囲/配偶者名義預金の帰属/重加算税「隠ぺい」の有無
 ・H29-08-04 裁決 棄却 F0-3-572
  土地の評価/「広大地」該当性・建築制限等を受ける準承役地
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
  退職者を被保険者とするがん保険等の保険料/返戻金受領に係る隠蔽仮装行為
 (平29-12-12 非公開裁決 一部取消し F0-2-760)
 
  本件は、原処分庁が、請求人が損金の額に算入した支払保険料のうち、退職し
 た従業員を被保険者とするがん保険契約等に係る支払保険料については、請求人
 の業務との関連性が認められないことから損金の額に算入できないとし、また、
 がん保険契約に係る解約返戻金等を雑収入に計上せず、短期借入金とした経理処
 理は、隠蔽又は仮装の事実があるとして法人税等の更正処分等をした事案です。
  審判所は、保険料については下記のように判断し、納税者の請求を認めました
 が、解約返戻金の経理処理については、隠蔽仮装行為があったと判断しました。
 
  本件各がん保険契約は、請求人と生命保険会社との間で、請求人の従業員の福
 利厚生を目的として治療費補助等制度に基づく見舞金等又は弔慰金の原資とする
 ために締結したものである。そして、請求人は、本件各事業年度の途中にはがん
 規程を改訂し、従業員との間でがん規程並びに「入社された方へ」及び「退社さ
 れた方へ」と題する各書面により、従業員が請求人を退職した後も5年間は、退
 職者ががんに罹患又はがんにより死亡した場合に、受取保険金を原資として退職
 者に見舞金等又は弔慰金を支払うことを約したものである。
  各がん保険契約等に係る退職者支払保険料は、請求人の業務との関連性を有し、
 業務の遂行上必要と認められることから、損金の額に算入することができる。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-2-760

TAINSメールニュース No.370 2018.8.9 発行(社)日税連税法データベース

2018年08月09日

【1】今週のお知らせ
(1)国税庁で開催された全国国税局の各部長会議の資料を収録しました。
 
 ・全国国税局調査査察部長会議資料 平成30年5月17・18日 国税庁
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 査察部長会議 平成30年5月
 
 ・全国国税局徴収部長会議資料 平成30年5月24・25日 国税庁
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 徴収部長会議 平成30年5月
 
 ・全国国税局課税(第一・第二)部長会議資料
                  平成30年5月28・29日 国税庁
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 課税部長会議 平成30年5月
 
(2)収録した裁決の一部を紹介します。
 【所得税】
 ・H24-07-31 裁決 一部取消し F0-1-780
  所得区分/不動産賃貸業に係るLPSから分配される収益金等
 【法人税】
 ・H27-09-01 裁決 棄却 F0-2-759
  架空外注費と重加算税/架空外注費に対応する売上高は過大である旨の更正の
  請求
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  みなし贈与~原告夫妻がジョイント・テナンツとして登記された不動産~
 (平29-10-19 名古屋地裁 棄却・確定 Z888-2182)
 
  この事案は、原告夫妻がジョイント・テナンツ(共同所有者)として登記され
 たアメリカ合衆国カリフォルニア州所在の不動産につき、昭和税務署長が、原告
 は上記不動産の購入資金を支払うことなくその権利の2分の1に相当する利益を
 受けたとして、相続税法9条に基づき贈与税に係る更正処分等をしたことに違法
 があるとして、原告が、その取消しを求めたものです。
  裁判所では、次のとおり判断し、名義変更等に係る個別通達(昭和39年5月
 23日直審(資)22、直資68)に即して、ジョイント・テナンシー(合有不
 動産権)の形式にすることは、カリフォルニア州の法令上やむを得ない理由に基
 づくものであるなどの原告の主張を認めず、原告の請求を棄却しました。
 
  原告及び夫は、ジョイント・テナンシーの要件を満たす方法により不動産を購
 入し、不動産のジョイント・テナンツとして登記されたものであって、それぞれ
 2分の1の持分を有しているところ、不動産の取得に際し、その購入代金の全額
 を夫が負担していることからすれば、原告は、対価を支払うことなく不動産の2
 分の1相当の経済的利益を得たというべきであるから、贈与税の課税の基礎とな
 るみなし贈与があったと認められる。したがって、本件更正処分については、み
 なし贈与に係る規定の適用に関する違法は認められない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2182

TAINSメールニュース No.369 2018.8.2 発行(社)日税連税法データベース

2018年08月02日

【1】今週のお知らせ
(1)収録した判決・裁決の一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 ・H30-04-12 東京地裁 一部認容 Z888-2185
  不動産所得の必要経費/同族会社へ支払った業務委託料/リフォーム工事等
 ・H29-08-02 裁決 棄却 F0-1-821
  みなし配当の源泉徴収義務/自己株式の取得
 
 【法人税】
 ・H29-09-05 裁決 棄却 F0-2-750
  代表者の子に対する架空人件費/代表者の個人的支出に使用されたクレジット
  カード
 ・H29-12-12 裁決 全部取消し・棄却 F0-2-760
  退職者を被保険者とするがん保険等の保険料/短期借入金と処理された解約返
  戻金
 
(2)全国国税不服審判所長会議資料を収録
 平成30年5月11日開催の全国国税不服審判所長会議資料を収録しました。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】
           全国国税不服審判所長会議 平成30年5月 ‥‥‥1件
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
  国家賠償請求/固定資産課税/過大評価は注意義務違反
 (平29-01-30 東京地裁 一部認容 Z999-8394)
 
  原告が、被告担当職員らが土地を過大に評価した違法により、固定資産税等を
 過剰に納付させられたと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、平成5年度分
 から19年度分までの固定資産税等の過納付相当額等の支払を求める事案です。
  裁判所は次のとおり、被告担当職員らに職務上の注意義務違反があるとして、
 平成5年度分については、除斥期間の経過により消滅しているが、平成6年度分
 から19年度分までの「過大徴収税額」を損害額と認めました。
 
  本件土地の南側がP通りに沿接するとして本件土地を評価して行った賦課処分
 は違法であり、その結果、少なくともこの限度で都税事務所長による固定資産税
 等の賦課徴収も過大なものとなる。被告の主張によれば、原告から審査申出がな
 され、調査したところ、本件土地が沿接する南側区有地にはP通りの道路区域設
 定がなされていないことが判明したとのことであり、平成6年度の賦課処分の段
 階で、その旨の調査さえしていれば、本件土地がP通りに沿接していないことを
 容易に認識することができたものといえる。したがって、被告担当職員が、本件
 土地の南側がP通りに沿接するとして本件土地を評価し、賦課処分を行う際に、
 職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と認定、判断したといわざ
 るを得ない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-8394

TAINSメールニュース No.368 2018.7.26 発行(社)日税連税法データベース

2018年07月26日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINSだより
  TAINSだより(平成30年夏号)を掲載いたしました。下記の会員専用ペ
 ージから閲覧できます。             (事業部長:蓮間 好一)
 https://gw.tains.org/doclibrary/docs?title_id=1&state=CATEGORY&cat=101
 
(2)収録した判決・裁決の一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 ・H29-11-15 千葉地裁 棄却・確定 Z888-2186
  国家賠償請求/税務調査に際し事前通知をしなかったことの違法性
 ・H29-06-14 裁決 棄却 F0-1-814
  上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
 
 【法人税】
 ・H29-09-13 東京高裁 棄却・確定 Z888-2172
  更正の請求/仮処分命令により職務執行停止となっていた取締役に対する役員
  給与
 
 【相続税】
 ・H29-10-19 名古屋地裁 棄却・確定 Z888-2182
  みなし贈与/原告夫婦がジョイント・テナンツとして登記された米国所在の不
  動産                    (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
 「資産の譲渡」に該当せず/スワップ取引による金地金の移転/高裁で逆転判決
 (平29-12-14 名古屋高裁 原判決取消し・確定 Z888-2184)
 
  控訴人(納税者)は、貴金属製造販売会社(A社)との間で、金の購入保管に
 係る契約を締結すると同時に、所有する金地金を初回のスワップ取引により同社
 が製錬した金地金と交換し、交換した金地金について保管取引を行いました。
  本件は、四日市税務署長から、上記取引が所得税法33条1項に規定する資産
 の譲渡に該当し、譲渡所得が生じているとして、更正処分等を受けた事案です。
  名古屋高裁は、原判決を取消し、控訴人の請求を認容しました。
 
  本件約款によれば、A社が取引に応じるのは、顧客の金地金がLBMAブラン
 ドで純度99.99%以上の純金であると判定された場合であり、A社が顧客か
 らの求めに応じて引き渡す金地金は、顧客が寄託した交換後の金地金そのもので
 はなく、同質かつ同重量の金地金であることが認められる。そうすると、取引を
 行う顧客からみれば、一定の重量の金地金をA社に預けて保管し、将来これと同
 質かつ同重量の金地金の返還を受けるというのと同じであるから、本件取引を行
 う顧客の目的は、特定の金地金をA社に預けて保管してもらうというのと等しい
 ものである。したがって、本件取引は交換と寄託からなる混合契約の形をとって
 いるものの、スワップ取引部分に係る交換は、寄託をするための単なる準備行為
 にすぎず、実質的には寄託(混蔵寄託)契約であると認められるから、控訴人が、
 スワップ取引により金地金を交換したことは「資産の譲渡」に該当しない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2184

TAINSメールニュース No.367 2018.7.19 発行(社)日税連税法データベース

2018年07月19日

【1】今週のお知らせ
(1)収録した非公開裁決の一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 ・H29-07-25 裁決 棄却 F0-1-796
  事業所得の帰属/隠ぺい仮装行為の主体
 ・H29-07-05 裁決 棄却 F0-1-803
  給与所得者の特定支出控除の特例
 
 【法人税】
 ・H21-03-27 裁決 一部取消し F0-2-732
  移転価格税制/再販売価格基準法/幼児向け教材の輸入取引
 ・H25-03-26 裁決 棄却 F0-2-736
  交際費/商品券購入費用/商品券使用リストの記載内容
 
 【相続税】
 ・H29-07-05 裁決 棄却 F0-3-558
  重加算税/隠ぺい・仮装の有無/請求人の親族名義預金等の帰属
 
(2)税務訴訟資料第266号を収録中
  税務大学校のホームページに公表された税務訴訟資料第266号の編集・収録
 作業を引き続き行っています。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★税資266号 (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
  現物割引債券及び孫名義定額貯金の帰属と使用貸借に係る不動産の評価
 (平29-11-24 東京地裁 棄却・確定 Z888-2179)
 
  本件は、相続人の1人である原告が、相続税の申告をしなかったところ、処分
 行政庁から相続税の決定処分等を受けたことにつき、納付すべき相続税はないと
 主張して、その決定処分等の取消しを求めた事案です。
  争点のうち、「現物割引債券」の帰属については、被相続人が原告に対して贈
 与した事実は認められないと判断され、「孫名義定額貯金」の帰属については、
 原資の出捐者、名義人との関係、財産の管理状況、利益の帰属に関する関係者の
 認識等に関する事情を総合考慮すると、被相続人に帰属すると判断されました。
  また、「不動産の評価」について、原告は、三田に所在する建物に関するD(
 被相続人と内縁関係にあった者)の使用借権は、生活費に相当するものであり、
 Dが死亡するまで立ち退きを求められない旨の公正証書も存在する点などにおい
 て、通常の使用貸借契約よりも強力であり、形式的に評価通達を適用することは
 違法であると主張しましたが、裁判所は、次のとおり判断し請求を棄却しました。
 
  相続開始日における三田建物に係る使用貸借契約の効力を通常よりも強める事
 情に当たるとまではいえず、借主の死亡により当然に終了するとされる通常の使
 用貸借契約とさしたる相違はないと解されるから、本件において、所定の評価方
 法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるとま
 ではいえない。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2179

TAINSメールニュース No.366 2018.7.12 発行(社)日税連税法データベース

2018年07月12日

【今週のお知らせ】
(1)判決速報4件を収録しました。
  判決速報1460から1463まで4件を収録しました。
 
 ・判決速報1460 被相続人の関係会社に対する貸付金債権は当該被相続人の
  相続開始日に存在していたことが認められ、また、同貸付金債権は財産評価基
  本通達204(貸付金債権の評価)の定めに基づき評価すべきと判断された事
  例
 ・判決速報1461 X(納税者)に対して税務署の職員がした行為(又はしな
  かった行為)に国家賠償法上違法があったということはできないとされた事例
 ・判決速報1462 被相続人の配偶者名義の有価証券について、その購入原資
  の出捐状況等からすれば、当該有価証券の全部が被相続人に帰属する(相続財
  産に含まれる)とされた事例
 ・判決速報1463 相続税の申告における現金の申告漏れについて、国税通則
  法68条1項所定の重加算税の賦課要件を満たす(ことさら過少)とされた事
  例
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 判決速報 ☆2018年07月収録分
 
(2)国税庁で開催された全国国税局長会議の資料を収録しました。
 ・全国国税局長会議資料 平成30年5月31日・6月1日 国税庁
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 全国国税局長会議 平成30年5月
 
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
  確定判決に基づく株式評価額による更正の請求の是非
 (平30-01-24 東京地裁 却下、認容 Z888-2178)
 
  原告は、前件判決(取引相場のない株式の評価方式が争われた事案・平成25
 年2月28日東京高裁判決・納税者勝訴:Z263-12157)の確定後、遺
 産分割が成立したとして、江東東税務署長に対し相続税法32条1号に基づき、
 本件各株式の価額が前件判決で認定された額と同額であることを前提に更正の請
 求をしましたが、同税務署長は、本件各株式の価額は相続税申告における額と同
 額とすべきであり更正をすべき理由がない旨の通知処分をし、また同法35条3
 項に基づき、相続税の増額更正処分をしました。これに対し原告が、更正処分等
 における本件各株式の価額を不服として、その取消しを求める事案です。
  裁判所は、次のように判示し、納税者の主張を認めました。
 
  争点となった個々の財産の評価方法ないし価額等に係る認定・判断に、判決主
 文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断として、行政事件訴訟法33
 条1項所定の拘束力が生じているということができる上、後の相続税法32条1
 号に基づく更正の請求又は同法35条3項に基づく更正処分に係る事件について
 も、同一の被相続人から相続により取得した財産に係る相続税の課税価格及び相
 続税額に関する事件であることに変わりがない以上、上記の拘束力が及ぶものと
 解するのが相当であって、課税庁において、同判決における評価方法ないし価額
 を基礎として課税価格を算定しなければならないものというべきである。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2178

TAINSメールニュース No.365 2018.7.5 発行(社)日税連税法データベース

2018年07月05日

【今週のお知らせ】
(1)裁決事例集109集を収録
  国税不服審判所のホームページに公表された、平成29年10月から12月分
 の裁決事例集109集9事例の収録を完了しました。一部を紹介いたします。
 
 【法人税】
 ・H29-10-04 一部取消し・棄却・却下 J109-3-03
  収益の帰属事業年度 役務提供による収益 工事等請負収入
 ・H29-10-31 棄却 J109-3-04
  減価償却資産の償却 その他
 【他国税】
 ・H29-10-16 全部取消し J109-1-01
  担保
 ・H29-12-14 一部取消し J109-4-05
  無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務 利益を与える処分
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★裁決事例集109集 …… 9件
 
(2)税務訴訟資料第266号を収録中
  引き続き、税務大学校のホームページに公表された税務訴訟資料第266号の
 収録作業を行っています。収録済みのものは下記のキーワードで検索できます。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★税資266号
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:小菅 貴子)
  役員退職給与/平均功績倍率の数にその半数を加えた数の功績倍率
 (平30-04-25 東京高裁 原判決一部取消し Z888-2177)
  本件は、被控訴人(原告)が死亡退職した元代表取締役Aへの役員退職給与の
 支給額4億2000万円を損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、
 本件役員退職給与の額のうち不相当に高額の部分である2億0875万2000
 円については損金の額に算入されないとして更正処分等を受けた事例です。
  原審は、処分行政庁の調査に基づく平均功績倍率の3.26にその半数を加え
 た4.89に最終月額報酬額及び勤続年数をそれぞれ乗じて計算される金額に相
 当する3億1687万2000円までの部分はAに対する退職給与として相当で
 あると認められるとして、更正処分等の一部を取り消す判断をしていましたが、
 東京高裁は、下記のとおり判断して、原判決中控訴人敗訴部分を取消しました。
 
  法人税法施行令70条2号に例示されている業務に従事した期間及び退職の事
 情以外の種々の事情については、原則として、同業類似法人の役員に対する退職
 給与の支給の状況として把握されるべきものであり、同業類似法人の抽出が合理
 的に行われる限り、これを別途考慮して功労加算する必要はないというべきであ
 る。Aは、被控訴人の経理及び労務管理を担当して約8億円の債務完済に何らか
 の貢献をしたことが認められるが、これに関する具体的貢献の態様及び程度は必
 ずしも明らかではなく、同業類似法人の合理的な抽出結果に基づく平均功績倍率
 によってもなお、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握
 されたとはいい難いほどの極めて特殊な事情があったとまでは認められない。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2177

TAINSメールニュース No.364 2018.6.28 発行(社)日税連税法データベース

2018年06月28日

【1】今週のお知らせ
  税賠事故例12件を収録しました。
  「税理士界平成30年6月15日号」から、税理士職業賠償責任保険の事故例
 12件を収録しました。一部を紹介いたします。
 
 ☆保険金が支払われた事例
  ・消費税課税事業者選択届出書の適用年度誤りにより過大納付税額が発生した
   事例
  ・簡易課税制度選択不適用届出書の提出を失念し過大納付税額が発生した事例
  ・所得拡大促進税制の税額控除の適用を失念した事例
  ・青色申告の承認申請書の提出を失念した事例
  ・エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却または法人税
   額の特別控除の適用を失念した事例
 
 ★保険金が支払われなかった事例
  ・上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得等との損益通算を失
   念した結果過大納付所得税等が発生した事例
  ・関与先従業員が不正出金していたことについて、顧問税理士が不正を発見で
   きなかったことが税理士の責任であるとして争われた事例
 
 ≪検索方法≫【キーワード】 税賠事故例 ☆2018年06月収録分…12件
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
  譲渡所得の取得費/宅建業法49条の帳簿(土地台帳)に記載された金額
 (平29-12-13 公表裁決 一部取消し J109-2-02)
 
  本件は、審査請求人が、相続により取得した土地の分離長期譲渡所得の金額の
 計算上、概算取得費(収入金額の5%相当額)を土地の取得費として計算し、平
 成25年分の所得税等の確定申告をした後、所有権移転登記の受付があった年の
 地価公示価格を基に推計した金額を取得費として更正の請求をした事案です。
  土地取得時の売買契約書等の書類が見当たらず、所有権移転登記も実際の取得
 があってから10年経過後に行われていました。
  国税不服審判所は、審判所の調査により把握された、本件土地の売主であるF
 社が作成した「土地台帳」に記載された金額を土地の取得費と認めています。
 
  本件土地台帳は、宅地建物取引業法により帳簿の備付け義務があるF社が、通
 常業務の過程で作成したものであり、書面の性質上、取引内容が正確に記載され
 ている蓋然性が高い。したがって、本件土地台帳は、その記載どおりの事実があ
 ったことが推認でき、当該推認を妨げる事情が認められない限り、その記載どお
 りの事実を認めるのが相当である。
  本件土地の概算取得費は、上記の土地の取得費の金額に満たないことから、本
 件土地に係る概算取得費を取得費と認めることは、納税者の利益に反することと
 なり相当でない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 J109-2-02

TAINSメールニュース No.363 2018.6.21 発行(社)日税連税法データベース

2018年06月21日

【1】今週のお知らせ
  各税理士会からTAINSに提供いただいた相談事例等は、次の通りです。
 提供の税理士会名と参考キーワードで検索してください。(6月21日現在)
 ☆ 情報区分【相談事例】
  提供税理士会名  (参考キーワード)   件数
 ───────────────────────────────────
  東京税理士会   会員相談室     103件
  東京地方税理士会 税務相談事例Q&A 118件
  千葉県税理士会  相談事例Q&A   144件
  近畿税理士会   業務対策部      25件
  東北税理士会   会員相談室事例    13件
  東海税理士会   税務相談事例      6件
  北陸税理士会   相談事例        9件
  九州北部税理士会 会員相談室       1件
  南九州税理士会  会員税務相談室    12件  合計 431件
 ───────────────────────────────────
 ☆ 情報区分【その他文書】
 ───────────────────────────────────
  近畿税理士会   論壇         35件
  近畿税理士会   研究レポート     21件
  名古屋税理士会  税務研究        4件
  東海税理士会   TAINS判例研究   5件  合計  65件
                        (税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  遺言の効力~遺言無効確認訴訟に係る民事調停法17条の決定~
 (平28-01-26 判決 却下・棄却 Z266-12787)
 (平28-07-06 判決 棄却 上告・受理申立て Z266-12878)
 
  被相続人乙(平成17年1月死亡)は、公正証書遺言(本件遺言)を作成してい
 ましたが、平成17年7月31日に、相続人Cグループにより遺言無効確認訴訟
 が提起され、平成22年3月31日、民事調停法(平成23年改正前のもの)17
 条に基づく決定(本件17条決定)がありました。この事案では、甲(原告・控
 訴人)は、遺言の無効が確認されたことを前提に更正処分等の取消しを求めまし
 たが、裁判所は、遺言の効力について、次のとおり判断し請求を棄却しました。
 
  本件17条決定がされた経緯に照らせば、本件17条決定は、乙の本件遺言に
 関する紛争を解決するためにされたものであると認められるところ、決定条項に
 は、本件遺言が無効である旨記載されていないことから、本件17条決定におい
 て、本件遺言の無効が確認されたと認めることは困難である。
  また、遺言無効確認訴訟は、本件17条決定が確定したことによって、訴えが
 取り下げられたものとみなされたことから、上記訴訟において、本件遺言の無効
 が確認されなかったことは明らかである。
  したがって、本件遺言は、本件17条決定の後においてもなお有効に存続し、
 本件遺言により甲が取得することとなっている相続財産については、相続により
 甲が包括承継したと認められ、また、本件遺言により分割の方法が定められてい
 ない相続財産は、未分割の遺産となるものと認められる。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z266-12787 Z266-12878

TAINSメールニュース No.362 2018.6.14 発行(社)日税連税法データベース

2018年06月14日

【1】今週のお知らせ
  税務訴訟資料第266号を収録中
  現在、税務大学校ホームページに公表された税務訴訟資料第266号を編集・
 収録中です。収録したものの一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 ・H28-11-29 佐賀地裁 棄却・控訴 Z266-12938
  行為計算否認/医師が同族会社に支払った高額な不動産賃借料
 【法人税】
 ・H28-11-25 宮崎地裁 棄却・控訴 Z266-12937
  青色取消しと重加算税/買掛金弁済の原資とするために行われた養殖
  魚の架空取引
 【相続税】
 ・H28-11-17 大阪地裁 棄却・控訴 Z266-12935
  連帯納付義務に基づく督促処分の適法性/贈与税申告の無効確認等
 
  このほかの収録済の税務訴訟資料第266号は、下記のキーワードで検索する
 ことができます。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★税資266号
 
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
  刑事事件/馬券払戻金を除外した虚偽申告/銀行調査における違法の程度
 (平30-05-09 大阪地裁 有罪 Z999-9156)
 
  本件は、被告人が、馬券の払戻金による一時所得を除外した虚偽の所得税の確
 定申告をし、平成24年分及び平成26年分の所得税額合計6200万円余りを
 ほ脱したという事案です。弁護人は、被告人の脱税が発覚した経緯につき、査察
 官の査察調査の際にいわゆる横目調査あるいは悉皆調査といったプライバシー等
 を侵害する重大な違法調査がなされた可能性が否定できないと主張しました。
 
  本件発覚の端緒は、A銀行B支店の被告人名義の普通預金口座に日本中央競馬
 会から2億3000万円余りの高額の振込入金がなされていることなどを、別件
 犯則事件につき同支店に対する金融機関調査を行っていた大阪国税局査察官Cが
 発見したことによる。Cは、別件犯則事件においてB支店を調査対象とした具体
 的事情等について、「職務上の秘密」を理由に証言を拒絶している。
  B支店において行われた別件犯則事件の調査については、その対象範囲の絞り
 込みが不十分であった疑いは否定できないが、金融機関調査は別件犯則事件の調
 査の一環として、銀行側の協力の下で行われた任意調査であり、確認すべき口座
 情報の範囲についても銀行側の了解を得ていると認められることなどの事情に照
 らすと査察官の行った調査における違法の程度は重大とまではいえない。
  そうすると、銀行口座の情報を基に作成された査察官調査書の証拠能力を否定
 しなければならないほどの重大な違法は認められない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-9156