TAINSメールニュース No.374 2018.9.6 発行(社)日税連税法データベース

2018年09月06日

【1】今週のお知らせ
(1)各税理士会からTAINSに提供いただいた相談事例等のうち、平成30年
  6月22日以降の収録は次の通りです。「日付範囲指定」のTAINS登録に
  年月日を入力して、提供の税理士会名と参考キーワードで検索してください。
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  情報区分  税理士会名   参考キーワード   件数
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  相談事例  東京税理士会  会員相談室     3件
        南九州税理士会 会員税務相談室  10件 合計 13件
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  その他文書 近畿税理士会  論壇        8件
        近畿税理士会  研究レポート    5件
        名古屋税理士会 税務研究      1件
        中国税理士会  研究論文集     1件 合計 15件
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                        (税法データベース編集室)
(2)収録した裁決の一部を紹介いたします。
 【所得税】H29-12-13 裁決 棄却 F0-1-838
      重加算税/解体工事業に係る架空経費
 【法人税】H29-06-23 裁決 棄却 F0-2-763
      重加算税/従業員と監査役による売上計上漏れと経費の過大計上
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
  源泉所得税の還付請求権の消滅時効と還付加算金の起算点
 (平29-09-21 名古屋地裁 一部認容ほか・確定 Z888-2183)
 
  A社は、その代表者であった甲に対し、退職慰労金を支給する旨の株主総会決
 議が成立したとして、源泉徴収に係る所得税及び市県民税を控除して支払うとと
 もに、平成20年6月3日、源泉所得税を納付しました。その後、合併によりA
 社の権利義務を承継した原告が、株主総会決議の不存在を理由とする別件訴訟の
 確定後、平成27年4月14日に甲より退職慰労金手取額の支払を受けたことか
 ら、本件源泉所得税は過誤納金に当たると主張して、被告に対し、源泉所得税の
 還付請求及び起算日を平成27年5月8日とする還付加算金の支払を求めた事案
 です。裁判所は、次のとおり判断し請求の一部を認容しました。
 
  本件源泉所得税は、原告が甲から退職慰労金手取額の返還を受けるまでは課税
 要件に欠けるところはなく、還付請求権の行使は、法律上の障害があったという
 べきである。したがって、本件源泉所得税の納付日の翌日である平成20年6月
 4日を、国税通則法74条所定の「その請求をすることができる日」であると認
 めることはできず、還付請求権が時効により消滅したということはできない。
  名古屋中税務署長は、甲の退職慰労金に係る所得の支払の経済的成果が失われ
 た平成27年4月14日の時点において過誤納の事実を知り得たということがで
 きるから、還付加算金の起算点は、税務署長がその事実を確認した日の翌日から
 起算して1月を経過する日の翌日である平成27年5月15日となる。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2183

TAINSメールニュース No.373 2018.8.30 発行(社)日税連税法データベース

2018年08月30日

【1】今週のお知らせ
  収録した裁決・判決の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H27-11-11 裁決 棄却 F0-1-826
  青色取消し/帳簿不存在/税理士業
 ・H27-11-30 裁決 棄却 F0-1-827
  重加算税/店長名義で営まれていた風俗店
 
 【法人税】
 ・H29-08-29 東京地裁 棄却 Z888-2171
  原発事故により受領した損害賠償金/復興特別法人税の納税義務者
 ・H29-05-23 裁決 棄却 F0-2-746
  損金の額/外国税額控除を受けた外国法人税の額
 
 【相続税】
 ・H30-03-27 東京地裁 棄却・控訴 Z888-2192
  貸付金債権の存否及び評価/評価通達の合理性・回収可能性・特別の事情の有
  無
 ・H29-10-25 裁決 棄却 F0-3-578
  金地金の申告漏れ/隠ぺい又は仮装の行為・偽りその他不正の行為の有無
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
  不動産の無償譲渡を受けたことによる出資価額の増加益はみなし贈与に該当
 (平29-12-01 非公開裁決 棄却 F0-3-580)
 
  同族会社A社がBから不動産の無償譲渡を受けたことにより増加した出資の価
 額に相当する部分について、A社に出資する社員である請求人が、贈与税の申告
 をしました。その後、請求人は、その増加益は贈与による財産の取得には当たら
 ないから贈与税の納税義務はないなどとして更正の請求をしましたが、これに対
 し、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったため、請求人が、
 その処分の取消しを求めた事案です。
  審判所は、次のように判断し、請求人の主張を棄却しました。
 
  相続税法第9条は、私法上の贈与契約によって財産を取得したものではないが、
 贈与と同じような実質を有する場合に、贈与の意思がなければ贈与税を課税する
 ことができないとするならば、課税の公平を失することになるので、この不合理
 を補うために、実質的に対価を支払わないで経済的利益を受けた場合においては、
 贈与契約の有無にかかわらず贈与により取得したものとみなし、これを課税財産
 として贈与税を課税する趣旨の規定であると解される。
  本件譲渡によって請求人のA社に対する出資の価額は増加したのであるから、
 請求人は、実質的に対価を支払わないで経済的利益を受けたといえ、相続税法第
 9条の規定により、本件増加益を、Bから、贈与により取得したものとみなされ
 る。したがって、本件増加益は贈与税の課税財産となるから、更正をすべき理由
 がないとして行った本件通知処分は、適法である。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-3-580

TAINSメールニュース No.372 2018.8.23 発行(社)日税連税法データベース

2018年08月23日

【1】今週のお知らせ
  収録した裁決・判決の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H27-12-08 裁決 棄却 F0-1-823
  過少申告加算税の正当な理由/税務職員の誤った指導
 ・H29-10-04 裁決 棄却 F0-1-833
  必要経費/同族会社に支払った不動産管理料
 
 【法人税】
 ・H29-09-21 名古屋地裁 一部認容・一部棄却・確定
                       Z888-2183
  返還された退職慰労金/源泉所得税の還付請求権の消滅時効と還付加算金の起
  算点
 ・H30-01-25 東京地裁 棄却・控訴 Z888-2188
  減価償却資産該当性/「土地営業権原価」と会計処理された土地譲渡損失
 
 【相続税】
 ・H29-10-25 裁決 棄却 F0-3-576
  金地金の申告漏れ/隠ぺい又は仮装の行為・偽りその他不正の行為の有無
 ・H30-04-06 裁決 一部取消し F0-3-579
  相続財産の範囲/名義株・出資持分の譲渡契約の成否
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:小菅 貴子)
  無申告加算税/正当な理由/法定申告期限当時の判断能力の低下
 (平29-09-20 非公開裁決 棄却 F0-1-790)
  本件は、請求人が、所得税及び復興特別所得税の確定申告書を法定申告期限後
 に提出したところ、原処分庁が、無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、
 請求人が、法定申告期限までに確定申告書を提出しなかったのは、請求人の判断
 能力が著しく低下していた等の事情があったからであるので国税通則法第66条
 《無申告加算税》第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとして、当該
 賦課決定処分の全部の取消しを求めた事案です。審判所は、次のとおり判断して、
 請求人の請求を棄却しました。
 
  当審判所の調査等によれば、平成26年9月26日、請求人自らが本件土地譲
 渡に係る売買契約書に署名及び押印をし、その署名は自筆で明瞭に記載されてい
 ること、及び、平成28年8月まで、介護を受けることもなく請求人が一人で生
 活していたことからすると、請求人は、平成27年3月16日当時、通常人並み
 の理解及び選択をする能力を有していたことが認められ、所得税等の確定申告書
 を提出することができないほど判断能力が低下していたとは認められない。
  なお、請求人は、本件譲渡に係る税金は買主が全て支払ってくれたので何も問
 題ないと考えており、親族である代理人が税務署に問い合わせるまで、譲渡所得
 の申告が必要であることを知らなかった旨主張する。しかしながら、当該主張は、
 請求人の誤解又は税法の不知という主観的な事情に基づくものであるから、真に
 納税者の責めに帰することができない客観的な事情には該当しない。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-790

TAINSメールニュース No.371 2018.8.16 発行(社)日税連税法データベース

2018年08月16日

【1】今週のお知らせ
  収録した裁決の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H27-08-27 裁決 棄却 F0-1-807
  重加算税と偽りその他不正の行為/底引網漁業における売上除外
 ・H27-10-28 裁決 棄却 F0-1-809
  所得区分/麻酔科医が病院から得た報酬は給与所得
 
 【法人税】
 ・H27-08-04 裁決 棄却 F0-2-751
  債務免除益の収益計上時期/元理事長に対し負っていた求償債務
 ・H27-10-15 裁決 棄却 F0-2-757
  修繕費か資本的支出か/立体駐車場の循環装置駆動部に係る部品の取替工事費
  用
 
 【相続税】
 ・H29-08-02 裁決 棄却 F0-3-571
  調査の範囲/配偶者名義預金の帰属/重加算税「隠ぺい」の有無
 ・H29-08-04 裁決 棄却 F0-3-572
  土地の評価/「広大地」該当性・建築制限等を受ける準承役地
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
  退職者を被保険者とするがん保険等の保険料/返戻金受領に係る隠蔽仮装行為
 (平29-12-12 非公開裁決 一部取消し F0-2-760)
 
  本件は、原処分庁が、請求人が損金の額に算入した支払保険料のうち、退職し
 た従業員を被保険者とするがん保険契約等に係る支払保険料については、請求人
 の業務との関連性が認められないことから損金の額に算入できないとし、また、
 がん保険契約に係る解約返戻金等を雑収入に計上せず、短期借入金とした経理処
 理は、隠蔽又は仮装の事実があるとして法人税等の更正処分等をした事案です。
  審判所は、保険料については下記のように判断し、納税者の請求を認めました
 が、解約返戻金の経理処理については、隠蔽仮装行為があったと判断しました。
 
  本件各がん保険契約は、請求人と生命保険会社との間で、請求人の従業員の福
 利厚生を目的として治療費補助等制度に基づく見舞金等又は弔慰金の原資とする
 ために締結したものである。そして、請求人は、本件各事業年度の途中にはがん
 規程を改訂し、従業員との間でがん規程並びに「入社された方へ」及び「退社さ
 れた方へ」と題する各書面により、従業員が請求人を退職した後も5年間は、退
 職者ががんに罹患又はがんにより死亡した場合に、受取保険金を原資として退職
 者に見舞金等又は弔慰金を支払うことを約したものである。
  各がん保険契約等に係る退職者支払保険料は、請求人の業務との関連性を有し、
 業務の遂行上必要と認められることから、損金の額に算入することができる。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-2-760

TAINSメールニュース No.370 2018.8.9 発行(社)日税連税法データベース

2018年08月09日

【1】今週のお知らせ
(1)国税庁で開催された全国国税局の各部長会議の資料を収録しました。
 
 ・全国国税局調査査察部長会議資料 平成30年5月17・18日 国税庁
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 査察部長会議 平成30年5月
 
 ・全国国税局徴収部長会議資料 平成30年5月24・25日 国税庁
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 徴収部長会議 平成30年5月
 
 ・全国国税局課税(第一・第二)部長会議資料
                  平成30年5月28・29日 国税庁
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 課税部長会議 平成30年5月
 
(2)収録した裁決の一部を紹介します。
 【所得税】
 ・H24-07-31 裁決 一部取消し F0-1-780
  所得区分/不動産賃貸業に係るLPSから分配される収益金等
 【法人税】
 ・H27-09-01 裁決 棄却 F0-2-759
  架空外注費と重加算税/架空外注費に対応する売上高は過大である旨の更正の
  請求
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  みなし贈与~原告夫妻がジョイント・テナンツとして登記された不動産~
 (平29-10-19 名古屋地裁 棄却・確定 Z888-2182)
 
  この事案は、原告夫妻がジョイント・テナンツ(共同所有者)として登記され
 たアメリカ合衆国カリフォルニア州所在の不動産につき、昭和税務署長が、原告
 は上記不動産の購入資金を支払うことなくその権利の2分の1に相当する利益を
 受けたとして、相続税法9条に基づき贈与税に係る更正処分等をしたことに違法
 があるとして、原告が、その取消しを求めたものです。
  裁判所では、次のとおり判断し、名義変更等に係る個別通達(昭和39年5月
 23日直審(資)22、直資68)に即して、ジョイント・テナンシー(合有不
 動産権)の形式にすることは、カリフォルニア州の法令上やむを得ない理由に基
 づくものであるなどの原告の主張を認めず、原告の請求を棄却しました。
 
  原告及び夫は、ジョイント・テナンシーの要件を満たす方法により不動産を購
 入し、不動産のジョイント・テナンツとして登記されたものであって、それぞれ
 2分の1の持分を有しているところ、不動産の取得に際し、その購入代金の全額
 を夫が負担していることからすれば、原告は、対価を支払うことなく不動産の2
 分の1相当の経済的利益を得たというべきであるから、贈与税の課税の基礎とな
 るみなし贈与があったと認められる。したがって、本件更正処分については、み
 なし贈与に係る規定の適用に関する違法は認められない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2182

TAINSメールニュース No.369 2018.8.2 発行(社)日税連税法データベース

2018年08月02日

【1】今週のお知らせ
(1)収録した判決・裁決の一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 ・H30-04-12 東京地裁 一部認容 Z888-2185
  不動産所得の必要経費/同族会社へ支払った業務委託料/リフォーム工事等
 ・H29-08-02 裁決 棄却 F0-1-821
  みなし配当の源泉徴収義務/自己株式の取得
 
 【法人税】
 ・H29-09-05 裁決 棄却 F0-2-750
  代表者の子に対する架空人件費/代表者の個人的支出に使用されたクレジット
  カード
 ・H29-12-12 裁決 全部取消し・棄却 F0-2-760
  退職者を被保険者とするがん保険等の保険料/短期借入金と処理された解約返
  戻金
 
(2)全国国税不服審判所長会議資料を収録
 平成30年5月11日開催の全国国税不服審判所長会議資料を収録しました。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】
           全国国税不服審判所長会議 平成30年5月 ‥‥‥1件
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
  国家賠償請求/固定資産課税/過大評価は注意義務違反
 (平29-01-30 東京地裁 一部認容 Z999-8394)
 
  原告が、被告担当職員らが土地を過大に評価した違法により、固定資産税等を
 過剰に納付させられたと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、平成5年度分
 から19年度分までの固定資産税等の過納付相当額等の支払を求める事案です。
  裁判所は次のとおり、被告担当職員らに職務上の注意義務違反があるとして、
 平成5年度分については、除斥期間の経過により消滅しているが、平成6年度分
 から19年度分までの「過大徴収税額」を損害額と認めました。
 
  本件土地の南側がP通りに沿接するとして本件土地を評価して行った賦課処分
 は違法であり、その結果、少なくともこの限度で都税事務所長による固定資産税
 等の賦課徴収も過大なものとなる。被告の主張によれば、原告から審査申出がな
 され、調査したところ、本件土地が沿接する南側区有地にはP通りの道路区域設
 定がなされていないことが判明したとのことであり、平成6年度の賦課処分の段
 階で、その旨の調査さえしていれば、本件土地がP通りに沿接していないことを
 容易に認識することができたものといえる。したがって、被告担当職員が、本件
 土地の南側がP通りに沿接するとして本件土地を評価し、賦課処分を行う際に、
 職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と認定、判断したといわざ
 るを得ない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-8394

TAINSメールニュース No.368 2018.7.26 発行(社)日税連税法データベース

2018年07月26日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINSだより
  TAINSだより(平成30年夏号)を掲載いたしました。下記の会員専用ペ
 ージから閲覧できます。             (事業部長:蓮間 好一)
 https://gw.tains.org/doclibrary/docs?title_id=1&state=CATEGORY&cat=101
 
(2)収録した判決・裁決の一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 ・H29-11-15 千葉地裁 棄却・確定 Z888-2186
  国家賠償請求/税務調査に際し事前通知をしなかったことの違法性
 ・H29-06-14 裁決 棄却 F0-1-814
  上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
 
 【法人税】
 ・H29-09-13 東京高裁 棄却・確定 Z888-2172
  更正の請求/仮処分命令により職務執行停止となっていた取締役に対する役員
  給与
 
 【相続税】
 ・H29-10-19 名古屋地裁 棄却・確定 Z888-2182
  みなし贈与/原告夫婦がジョイント・テナンツとして登記された米国所在の不
  動産                    (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
 「資産の譲渡」に該当せず/スワップ取引による金地金の移転/高裁で逆転判決
 (平29-12-14 名古屋高裁 原判決取消し・確定 Z888-2184)
 
  控訴人(納税者)は、貴金属製造販売会社(A社)との間で、金の購入保管に
 係る契約を締結すると同時に、所有する金地金を初回のスワップ取引により同社
 が製錬した金地金と交換し、交換した金地金について保管取引を行いました。
  本件は、四日市税務署長から、上記取引が所得税法33条1項に規定する資産
 の譲渡に該当し、譲渡所得が生じているとして、更正処分等を受けた事案です。
  名古屋高裁は、原判決を取消し、控訴人の請求を認容しました。
 
  本件約款によれば、A社が取引に応じるのは、顧客の金地金がLBMAブラン
 ドで純度99.99%以上の純金であると判定された場合であり、A社が顧客か
 らの求めに応じて引き渡す金地金は、顧客が寄託した交換後の金地金そのもので
 はなく、同質かつ同重量の金地金であることが認められる。そうすると、取引を
 行う顧客からみれば、一定の重量の金地金をA社に預けて保管し、将来これと同
 質かつ同重量の金地金の返還を受けるというのと同じであるから、本件取引を行
 う顧客の目的は、特定の金地金をA社に預けて保管してもらうというのと等しい
 ものである。したがって、本件取引は交換と寄託からなる混合契約の形をとって
 いるものの、スワップ取引部分に係る交換は、寄託をするための単なる準備行為
 にすぎず、実質的には寄託(混蔵寄託)契約であると認められるから、控訴人が、
 スワップ取引により金地金を交換したことは「資産の譲渡」に該当しない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2184

TAINSメールニュース No.367 2018.7.19 発行(社)日税連税法データベース

2018年07月19日

【1】今週のお知らせ
(1)収録した非公開裁決の一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 ・H29-07-25 裁決 棄却 F0-1-796
  事業所得の帰属/隠ぺい仮装行為の主体
 ・H29-07-05 裁決 棄却 F0-1-803
  給与所得者の特定支出控除の特例
 
 【法人税】
 ・H21-03-27 裁決 一部取消し F0-2-732
  移転価格税制/再販売価格基準法/幼児向け教材の輸入取引
 ・H25-03-26 裁決 棄却 F0-2-736
  交際費/商品券購入費用/商品券使用リストの記載内容
 
 【相続税】
 ・H29-07-05 裁決 棄却 F0-3-558
  重加算税/隠ぺい・仮装の有無/請求人の親族名義預金等の帰属
 
(2)税務訴訟資料第266号を収録中
  税務大学校のホームページに公表された税務訴訟資料第266号の編集・収録
 作業を引き続き行っています。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★税資266号 (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
  現物割引債券及び孫名義定額貯金の帰属と使用貸借に係る不動産の評価
 (平29-11-24 東京地裁 棄却・確定 Z888-2179)
 
  本件は、相続人の1人である原告が、相続税の申告をしなかったところ、処分
 行政庁から相続税の決定処分等を受けたことにつき、納付すべき相続税はないと
 主張して、その決定処分等の取消しを求めた事案です。
  争点のうち、「現物割引債券」の帰属については、被相続人が原告に対して贈
 与した事実は認められないと判断され、「孫名義定額貯金」の帰属については、
 原資の出捐者、名義人との関係、財産の管理状況、利益の帰属に関する関係者の
 認識等に関する事情を総合考慮すると、被相続人に帰属すると判断されました。
  また、「不動産の評価」について、原告は、三田に所在する建物に関するD(
 被相続人と内縁関係にあった者)の使用借権は、生活費に相当するものであり、
 Dが死亡するまで立ち退きを求められない旨の公正証書も存在する点などにおい
 て、通常の使用貸借契約よりも強力であり、形式的に評価通達を適用することは
 違法であると主張しましたが、裁判所は、次のとおり判断し請求を棄却しました。
 
  相続開始日における三田建物に係る使用貸借契約の効力を通常よりも強める事
 情に当たるとまではいえず、借主の死亡により当然に終了するとされる通常の使
 用貸借契約とさしたる相違はないと解されるから、本件において、所定の評価方
 法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があるとま
 ではいえない。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2179

TAINSメールニュース No.366 2018.7.12 発行(社)日税連税法データベース

2018年07月12日

【今週のお知らせ】
(1)判決速報4件を収録しました。
  判決速報1460から1463まで4件を収録しました。
 
 ・判決速報1460 被相続人の関係会社に対する貸付金債権は当該被相続人の
  相続開始日に存在していたことが認められ、また、同貸付金債権は財産評価基
  本通達204(貸付金債権の評価)の定めに基づき評価すべきと判断された事
  例
 ・判決速報1461 X(納税者)に対して税務署の職員がした行為(又はしな
  かった行為)に国家賠償法上違法があったということはできないとされた事例
 ・判決速報1462 被相続人の配偶者名義の有価証券について、その購入原資
  の出捐状況等からすれば、当該有価証券の全部が被相続人に帰属する(相続財
  産に含まれる)とされた事例
 ・判決速報1463 相続税の申告における現金の申告漏れについて、国税通則
  法68条1項所定の重加算税の賦課要件を満たす(ことさら過少)とされた事
  例
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 判決速報 ☆2018年07月収録分
 
(2)国税庁で開催された全国国税局長会議の資料を収録しました。
 ・全国国税局長会議資料 平成30年5月31日・6月1日 国税庁
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 全国国税局長会議 平成30年5月
 
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
  確定判決に基づく株式評価額による更正の請求の是非
 (平30-01-24 東京地裁 却下、認容 Z888-2178)
 
  原告は、前件判決(取引相場のない株式の評価方式が争われた事案・平成25
 年2月28日東京高裁判決・納税者勝訴:Z263-12157)の確定後、遺
 産分割が成立したとして、江東東税務署長に対し相続税法32条1号に基づき、
 本件各株式の価額が前件判決で認定された額と同額であることを前提に更正の請
 求をしましたが、同税務署長は、本件各株式の価額は相続税申告における額と同
 額とすべきであり更正をすべき理由がない旨の通知処分をし、また同法35条3
 項に基づき、相続税の増額更正処分をしました。これに対し原告が、更正処分等
 における本件各株式の価額を不服として、その取消しを求める事案です。
  裁判所は、次のように判示し、納税者の主張を認めました。
 
  争点となった個々の財産の評価方法ないし価額等に係る認定・判断に、判決主
 文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断として、行政事件訴訟法33
 条1項所定の拘束力が生じているということができる上、後の相続税法32条1
 号に基づく更正の請求又は同法35条3項に基づく更正処分に係る事件について
 も、同一の被相続人から相続により取得した財産に係る相続税の課税価格及び相
 続税額に関する事件であることに変わりがない以上、上記の拘束力が及ぶものと
 解するのが相当であって、課税庁において、同判決における評価方法ないし価額
 を基礎として課税価格を算定しなければならないものというべきである。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2178

TAINSメールニュース No.365 2018.7.5 発行(社)日税連税法データベース

2018年07月05日

【今週のお知らせ】
(1)裁決事例集109集を収録
  国税不服審判所のホームページに公表された、平成29年10月から12月分
 の裁決事例集109集9事例の収録を完了しました。一部を紹介いたします。
 
 【法人税】
 ・H29-10-04 一部取消し・棄却・却下 J109-3-03
  収益の帰属事業年度 役務提供による収益 工事等請負収入
 ・H29-10-31 棄却 J109-3-04
  減価償却資産の償却 その他
 【他国税】
 ・H29-10-16 全部取消し J109-1-01
  担保
 ・H29-12-14 一部取消し J109-4-05
  無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務 利益を与える処分
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★裁決事例集109集 …… 9件
 
(2)税務訴訟資料第266号を収録中
  引き続き、税務大学校のホームページに公表された税務訴訟資料第266号の
 収録作業を行っています。収録済みのものは下記のキーワードで検索できます。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★税資266号
                        (税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:小菅 貴子)
  役員退職給与/平均功績倍率の数にその半数を加えた数の功績倍率
 (平30-04-25 東京高裁 原判決一部取消し Z888-2177)
  本件は、被控訴人(原告)が死亡退職した元代表取締役Aへの役員退職給与の
 支給額4億2000万円を損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、
 本件役員退職給与の額のうち不相当に高額の部分である2億0875万2000
 円については損金の額に算入されないとして更正処分等を受けた事例です。
  原審は、処分行政庁の調査に基づく平均功績倍率の3.26にその半数を加え
 た4.89に最終月額報酬額及び勤続年数をそれぞれ乗じて計算される金額に相
 当する3億1687万2000円までの部分はAに対する退職給与として相当で
 あると認められるとして、更正処分等の一部を取り消す判断をしていましたが、
 東京高裁は、下記のとおり判断して、原判決中控訴人敗訴部分を取消しました。
 
  法人税法施行令70条2号に例示されている業務に従事した期間及び退職の事
 情以外の種々の事情については、原則として、同業類似法人の役員に対する退職
 給与の支給の状況として把握されるべきものであり、同業類似法人の抽出が合理
 的に行われる限り、これを別途考慮して功労加算する必要はないというべきであ
 る。Aは、被控訴人の経理及び労務管理を担当して約8億円の債務完済に何らか
 の貢献をしたことが認められるが、これに関する具体的貢献の態様及び程度は必
 ずしも明らかではなく、同業類似法人の合理的な抽出結果に基づく平均功績倍率
 によってもなお、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況として把握
 されたとはいい難いほどの極めて特殊な事情があったとまでは認められない。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2177