2023年10月12日
【1】今週のお知らせ
収録した判決の一部を紹介します。
【法人税】
・R05-02-17 東京地裁 認容 Z888-2511
非収益事業に属する有価証券の取得価額/移行前の非収益事業で計上した減価
償却費
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61501
【地方税】
・R04-01-12 富山地裁 認容、却下、控訴、納税者勝訴
Z999-8496
固定資産税/納税義務者/存続期間を「永代」とする地上権が設定されている
土地
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61509
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:大高 由美子)
相続税の還付金の受領権限/偽造された委任状に基づく還付金の支払の効力
(令03-08-24 東京地裁判決 一部認容 Z777-202116)
被告国は、被告Y(相続人)が偽造した還付金の受領に係る委任状に基づき、
本来原告に対して支払うべき還付金を被告Yに支払いました。本件は、原告が、
本件支払は代理権を有しない者に対してされたため効力がないと主張して、国に
対し、還付金等の支払を求めるとともに、被告Y及び被告税理士法人に対して、
共同不法行為に基づき、還付金の額に弁護士費用を加えた損害金等の支払を求め
る事案です。
地裁は、被告Yは、不法行為責任を免れないと判断し、原告の被告Yに対する
請求を認容しました。
被告税理士法人が本件委任状を税務署に提出するに当たって原告に対する意思
確認をすべき注意義務を負っていたということはできず、税理士法人にはこの点
に関する過失は認められないとして、請求人の請求を棄却しました。
被告国については、委任状の原告名下の押印が原告の意思に反してされた可能
性を疑うべき事情があったとは認め難いとし、税務署長が本件支払をしたことに
は過失を認めることができず、国は善意無過失であったというべきであり、本件
支払は、債権の準占有者に対する弁済としての効力を有し(民法478)、これ
により本件還付請求権は消滅したと判断しました。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61124
2023年10月05日
【1】今週のお知らせ
TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。
記
給与所得を有する医師の洋画制作販売から生じた損失
~「事業」の該当性が争点となった事例~
講 師:税理士 筏井陽子
(データベース部長 田川 哲)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
貸付残債権の放棄による損失/雑所得の必要経費算入の可否(所法51条4項)
(令04-07-14 東京地裁 棄却 Z888-2512)
原告は、平成23年、英国領バージン諸島に設立したA社に対して、合計で約
3992万ユーロの貸付けを行い、A社はその貸付金により船舶(中古ヨット)
を3500万ユーロで購入し維持管理した上、平成26年に約2145万ユーロ
で船舶を売却し、その代金を貸付けの一部に対する弁済に充てました。本件は、
原告が貸付残債権を放棄したことにより生じた損失を、所得税法51条4項に基
づき、雑所得(為替差益)の必要経費に算入することができるか否かを争点とす
る事案です。東京地裁は、次のように判示して、原告の請求を棄却しました。
本件貸付けについては、無担保かつ無利息であり、また、船舶の購入資金とし
て貸付けを行ったものであり、利息による利益獲得の営利性や為替差益を得る旨
の営利性を認めることができない。そうすると、原告が独立的営利活動を行って
いたことを認めることはできず、雑所得を生ずべき業務自体が認められないから、
貸付残債権は、「雑所得を生ずべき業務の用に供される資産」に該当しない。
本件貸付けは、A社が十分な資金を有するまで弁済を求めないことが合意され
ていたこと、A社の資産は、船舶又はその売却代金のみであった上、A社は弁済
に充てる原資を獲得するための活動を行っていなかったことが認められるから、
貸付残債権は、その客観的性質に照らし、弁済を受けて為替差益(雑所得)が発
生する具体的可能性がなく「雑所得の基因となる資産」に該当しない。
以上によれば、所得税法51条4項の適用によって、貸付残債権に係る損失を
雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61513
2023年09月28日
【1】今週のお知らせ
(1)TAINS会費・利用料のインボイス対応について
下記ページに「TAINS会費・利用料のインボイス対応について」をご案内
しておりますので、こちらをご一読ください。
記
https://www.tains.org/invoice202309/
(財務部長 清水 一男)
(2)システムメンテンスのお知らせ
下記の通り、システムメンテナンスを実施いたします。メンテナンス中はマイ
ページ内の「支払い方法設定」による手続きがご利用いただけません。
支払い方法の変更につきましては、システムメンテナンス期間外に手続きをお
願い致します。
ご不便をおかけいたしますが、ご理解とご協力のほど、よろしくお願いたしま
す。
記
日時: 令和5年10月4日(水)~ 令和5年10月6日(金)
※メンテナンス終了時間は変更になる場合がありますので、ご注意下さい。
影響範囲:TAINSログイン後のマイページメニュー「支払い方法設定」
(クレジットカードの登録手続き、支払方法変更手続きがご利用いた
だけません)
(システム部長:小林 英樹)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
譲渡所得の取得費~「フェラーリF50」の減価償却資産該当性~
(令05-03-09 東京地裁 却下・棄却 控訴 Z888-2508)
本件の主な争点は、原告の所有していた車両(フェラーリF50等)の減価償
却資産該当性であり、処分行政庁が、これらの車両は「使用又は期間の経過によ
り減価する資産」に該当するとして、その譲渡所得の金額の算定上、取得価額か
ら保有期間に係る減価の額を控除して取得費を計算し、増額更正処分等を行った
ことに対し、原告が、客観的な価額(時価)は減少していないなどと主張して一
部の取消しを求めた事案です。東京地裁は、次のように判示しました。
ある資産が、「使用又は期間の経過により減価」(所得税法38条2項)しな
い資産〔その範囲は、「時の経過によりその価値の減少しない」資産(同法施行
令6条)の範囲と同じであるものと解される。〕に該当するか否かの判断も、社
会通念上想定される本来的な目的・効用を前提に、当該目的・効用が期間の経過
により減少していくか否かという点から行われるべきであり、本来的な目的・効
用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような例
外的な場合に、これと異なる判断がされるにすぎないものと解するべきである。
自動車の本来の効用は、人や物を乗せ、原動機の動力によって車輪を回転させ
て路上を走ることにあるところ、その機能は一般的・類型的に逓減していくもの
である。そうすると、自動車は、原則として「時の経過によりその価値の減少し
ない」資産には該当しないものというべきである。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61451
2023年09月21日
【1】今週のお知らせ
(1)TAINS会費・利用料のインボイス対応について
下記ページに「TAINS会費・利用料のインボイス対応について」をご案内
しておりますので、こちらをご一読ください。
記
https://www.tains.org/invoice202309/
(財務部長 清水 一男)
(2)収録した裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・R03-05-26 裁決 棄却 F0-1-1344
無申告加算税の正当な理由/被相続人の遺贈により生じた所得税等の期限後申
告
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61308
【法人税】
・R04-09-30 裁決 棄却 F0-2-1166
貸倒引当金の個別評価金銭債権/重加算税/税理士に送信した借用証書
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61276
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
司法修習生が支給を受けた基本給付金~非課税所得該当性~
(令04-12-22 大阪地裁 棄却 Z888-2510)
司法修習生であった原告が、最高裁判所から支給を受けた基本給付金(本件給
付金)を雑所得の総収入金額に算入して所得税等の確定申告をした後、本件給付
金は所得税法9条1項15号の「学資に充てるため給付される金品」に該当し非
課税所得であるなどとして更正の請求をしたところ、A税務署長が、更正をすべ
き理由がない旨の通知処分をしたことから、その取消しを求める事案です。
争点は、本件給付金が所得税法上の学資金に該当するか否かです。裁判所は、
次のように判示して原告の主張を斥けました。
所得税法9条1項15号の「学資に充てるため給付される金品」とは、学校等
の教育機関において学術等の教育・指導を受けるために必要な費用(学費)に充
てるために給付される金品をいうものと解され、給付された金品が所得税法上の
学資金に該当するかどうかは、当該給付の趣旨の解釈として、当該金品がその対
象者の学資に充てるため給付されたものか否かによって判断すべきものである。
基本給付金(裁判所法67条の2第2項)は、「司法修習生がその修習期間中
の生活を維持するために必要な費用」に充てるために支給するものとされている
こと、基本給付金の制度は、経済的な事情により学資(学費)を負担することが
困難な司法修習生の支援を目的として導入されたものではなく、法曹人材確保の
充実・強化を図るという政策的な目的に基づいて導入されたものであり、基本給
付金は、使途を限定せずに支給されるものであって、学資に充てるために支給さ
れるものとはいえないから、所得税法上の学資金には当たらない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61453
2023年09月14日
【1】今週のお知らせ
(1)TAINS会費・利用料のインボイス対応について
下記ページに「TAINS会費・利用料のインボイス対応について」をご案内
しておりますので、こちらをご一読ください。
記
https://www.tains.org/invoice202309/
(財務部長 清水 一男)
(2)TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。
記
役員給与の不相当に高額な部分の金額 ~実質基準が争点となった事例~
講 師:税理士 兼平浩美
(データベース部長:水庭 清隆)
(3)中国税理士会から提供いただいた「研究論文集」を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
中国税理士会研究論文集0006 ‥‥1件【その他文書】
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61502
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:草間 典子)
区分所有建物の固定資産税等/機械式立体駐車場の専有部分の床面積
(令04-04-19 大津地裁 一部認容・一部棄却 Z999-8481)
納税者は、住宅、店舗及び公共施設等が入居する複合施設のうち、乗用車52
台を収容することが可能なエレベーター方式の機械式立体駐車場部分を所有して
いました。本件は、納税者が大津市から専有部分の床面積を780平方メートル
(各駐車区画の専有面積15平方メートルに収容可能台数52台分を乗じた)と
して、固定資産税等の賦課決定を受けたことから、登記上の床面積である85.
52平方メートルを超える部分は違法であるとして、処分の取消し並びに国家賠
償法1条1項に基づく損害金等の支払を求めたものです。
大津地裁は、登記上の床面積での算定を認めましたが、国家賠償請求は認めず、
還付加算金を付した還付手続によって清算されるべきと判断しています。
地方税法及び地方税法施行規則は、区分所有建物に係る固定資産税の賦課につ
いて、区分所有法の規定に従い算定した専有部分の床面積の割合による按分の方
法を原則とし、規則所定の補正計算による場合と区分所有者全員の申出による場
合のみを例外とする旨明確に定めている。上記の法及び規則の定めが、専有部分
の床面積の算定とその補正について、課税庁の裁量的な判断を許容していると解
すべき合理的な理由は見当たらない。したがって、これらの規定に反した区分所
有建物に係る固定資産税と都市計画税の賦課をすることは、地方税法352条1
項に反する違法があるといわざるを得ない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/60715
2023年09月07日
【1】今週のお知らせ
(1)TAINS会費・利用料のインボイス対応について
下記ページに「TAINS会費・利用料のインボイス対応について」をご案内
しておりますので、こちらをご一読ください。
記
https://www.tains.org/invoice202309/
(財務部長 清水 一男)
(2)税理士会から提供いただいた「相談事例」を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
東京税理士会 ☆2023年09月収録分 ‥‥4件
(3)収録した裁決の一部を紹介します。
【相続税】
・R04-05-16 裁決 一部取消し F0-3-830
株式保有特定会社(広大地)該当性/貸付金債権に係る金銭消費貸借契約の有
効性
URL:https://app6.tains.org/search/detail/60939
・R04-05-18 裁決 棄却 F0-3-831
理由の提示の不備・理由の差替え/土地の評価/広大地該当性・路地状開発の
適否
URL:https://app6.tains.org/search/detail/60942
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:依田 孝子)
税理士損害賠償~顧問契約における損害額制限条項の適用の有無~
(令05-06-21 福岡地裁 一部認容・一部棄却 Z999-0182)
経営コンサルティング事業等を営む会社(原告)の顧問税理士(被告)は、消
費税等の有利選択等の誤りについて、顧問先から、民法415条の債務不履行又
は同法709条の不法行為に基づき損害賠償請求されました。
福岡地裁では、原告のA社(非居住者)に対するコンサルタント業務は輸出免
税取引であるとした上で、次のとおり判断しました。
被告は、(1)第1期及び第2期において、課税事業者を選択しなかったこと、
(2)第3期及び第4期において、簡易課税事業者を選択したこと、(3)第5
期において、本則課税事業者に戻さなかったことは、善管注意義務に違反すると
いうべきである。その損害額は、499万1545円であると認められる。
(3)の善管注意義務違反については、被告に重大な過失があるというべきで
あるが、(1)・(2)の善管注意義務違反については、被告が根拠とした事実
を考慮すると通常あり得る程度の税制選択上又は会計処理上の過誤であるから、
被告に重大な過失があるとはいえない。
よって、(3)の善管注意義務違反によって原告に生じた損害については、顧
問契約における賠償額制限条項は適用されず、被告は、その全額について賠償責
任を負う。他方、その余の善管注意義務違反によって生じた損害(第1期~第4
期までの損害)については、賠償額制限条項が適用されるから、被告は、被告が
受けた利益を限度として賠償責任を負う。したがって、被告が原告に対して賠償
すべき損害額は、191万8496円となる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61298
2023年08月31日
【1】今週のお知らせ
(1)税理士会から提供いただいた「相談事例」を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
南九州税理士会 ☆2023年08月収録分 ‥‥12件
(2)収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【その他】
・R05-06-21 福岡地裁 一部認容、一部棄却、確定
Z999-0182
税理士損害賠償/善管注意義務違反/顧問契約における賠償額制限条項の適用
の有無
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61298
【相続税】
・R04-09-05 裁決 一部取消し F0-3-867
雑種地の評価/宅地比準方式・「土止費の控除」の可否/「特別の事情」の有
無
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61351
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:大高 由美子)
税務職員の指導による更正の請求/特定期間の課税売上高
(令02-10-07 非公開裁決 棄却 F0-5-356)
請求人が、消費税等の確定申告後、基準期間の課税売上高が1000万円以下、
かつ、特定期間の給与等支払額が1000万円以下であることから、免税事業者
に該当するとして、更正の請求をした事案です。
審判所は、次のように判断して、請求人の請求を棄却しました。
請求人は、課税期間において、特定期間課税売上高を特例の判定基準とすれば
課税事業者となり、特定期間給与等支払額(120万円)を特例の判定基準とす
れば免税事業者となる事業者であった。
請求人は、基準期間の課税売上高が1000万円以下であることを前提として、
確定申告をしているから、特定期間課税売上高を特例の判定基準として選択した
と認めることが相当である。そして、その選択の結果、請求人は、課税事業者と
して確定申告を行ったものと認められる。特例の判定基準の選択は、請求人の自
由な意思に委ねられていることから、いずれを選択しても法律の規定に従ってい
なかったことにならないから、更正の請求ができる要件には該当しない。
原処分庁職員による更正の請求の示唆及び指導等があったことが認められるも
のの、税務署長その他の責任ある立場にある者の正式な見解の表示に当たるとま
ではいえない。したがって、更正をすべき理由がない旨の通知処分について、信
義則に反する違法はない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61280
2023年08月24日
【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・R05-07-28 東京地裁 棄却 Z888-2509
馬券払戻金の所得区分/一時所得又は事業所得(雑所得)該当性
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61365
【消費税】
・R02-10-07 裁決 棄却 F0-5-356
税務職員の指導による更正の請求/免税事業者/特定期間の課税売上高
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61280
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
印紙税/消費生活協同組合が運営する総合病院等が作成した領収書等
(令05-03-08 東京地裁 一部認容 Z999-7226)
消費生活協同組合である原告は、新潟税務署長から、組合が運営する総合病院
及び介護老人保健施設において作成した領収書及び契約書の各文書が課税物件に
該当するとして、印紙税に係る過怠税の賦課決定処分を受けたことから、処分の
取消しを求めて提訴しました。東京地裁は、家族組合員の利用分は課税文書に該
当しないとして、原告の請求を一部認容し、次のように判示しました。
印紙税法は、非課税規定において、「営業に関しない受取書」について非課税
とする旨を定める一方で、括弧書きにおいて、「会社以外の法人で、法令の規定
又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができること
となっているものが、その出資者以外の者に対して行う事業」については、「営
業」に含まれるものと規定している。原告は、組合であり、剰余金の割戻しも可
能であるから、非課税規定の括弧書きの法人に該当する。したがって、原告が専
ら医療事業及び福祉事業を行うものであるとしても、「出資者以外の者に対して
行う事業」は、印紙税法上の「営業」に該当する。
家族組合員は、各施設の利用に関しては、生協法12条2項により「組合員」
そのものとして法的に取り扱われるから、印紙税法上の「出資者」に該当する。
したがって、領収書のうち家族組合員が利用した分については、これを課税文書
として課税した賦課決定処分は、違法である。一方、原告が組合員以外の者に対
して行う事業において作成したものである各覚書及び洗濯等契約書は、7号文書
(継続的取引の基本契約書)に該当し、清掃に係る業務請負契約書等は、2号文
書(請負に関する契約書)に該当する。いずれも課税文書と認められる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/60944
2023年08月17日
【1】今週のお知らせ
(1)名古屋税理士会から提供いただいた「税務研究」を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
名古屋税理士会税務研究0010 ‥‥1件【その他文書】
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61364
(2)収録した判決の一部を紹介します。
【所得税】
・R04-02-14 東京地裁 棄却、控訴 Z888-2507
取引相場のない株式/発行会社を介する三者間の低額売買
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61301
【法人税】
・R05-06-30 福岡高裁 棄却 Z888-2492
青色申告承認取消し/税理士法人による2事業年度連続の期限後申告
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61279
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
不動産等の時価~評価通達によるべきではない「特別の事情」該当性~
(令05-02-09 非公開裁決 棄却 F0-3-871)
請求人は、相続により取得した不動産等を評価通達により評価して相続税の申
告をした後、不動産業者(買主1及び買主2)と個人(買主3)に売却し、実際
の売却価格が当該不動産等の時価であるとして更正の請求をしました。
本件は、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、
請求人が、当該通知処分の全部の取消しを求めた事案です。
審判所は、次のように認定し、評価通達によるべきではない特別の事情はなく、
通達評価額は、相続税法第22条の時価を上回る違法はないと判断しました。
本件各業者売却価格は、請求人が、専らその主観的事情により、不動産業者に
対して一括して売却するという取引方法を選択した結果、買主1及び買主2の転
売することを前提に決定されたものであるといえ、その売却時点における取引当
事者の事情に基づく価格というべきものである。したがって、本件各業者売却価
格が、各不動産の客観的な交換価値(時価)であると認めることは困難である。
買主3は、請求人の父が設けていた税理士事務所に勤務していた者であり、売
買の時点においては家屋をA社(被相続人が株主)から賃借して自身の税理士事
務所を設けており、「純然たる第三者」とは認め難く、本件各個人売却価格は、
取引当事者の主観的事情に基づき形成された金額というべきである。したがって、
各不動産等の客観的な交換価値(時価)であると認めることは困難である。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61277
2023年08月10日
【1】今週のお知らせ
(1)TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。
記
代理人の顕名がない贈与契約書の有効性
~生命保険契約の保険料を誰が負担したのか~
講 師:税理士 与北奈須夫
(データベース部長:水庭 清隆)
(2)Japplic書式集検索のご紹介
令和5年7月に消費税インボイス制度の基礎の基礎、インボイス制度事前準備
チェックシートが追加されました。ぜひご活用下さい。
〔ご利用方法〕
TAINSにログイン → 検索トップ画面右上リンクボタン
「日本法令 法令書式ビジネス書式集」
ログインページURLはこちら https://www.tains.org/
(税法データベース事務局)
(3)税理士会から提供いただいた「相談事例」を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
東京地方税理士会 ☆2023年08月収録分 ‥‥19件
千葉県税理士会 ☆2023年08月収録分 ‥‥23件
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
取引相場のない株式の低額譲渡~発行会社を介する三者間取引の売買~
(令04-09-28 東京高裁 棄却 Z888-2491)
控訴人会社(X社)は、控訴人母A、控訴人長男Aらから、非上場株式である
X社の株式合計7498株を2249万4000円(1株3000円)で自己株
式の取得をし(本件取引1)、同日、これを同額で控訴人長男B(X社の代表取
締役で控訴人長男Aの従兄)に譲渡しました(本件取引2)。
本件は、本件取引1は所得税法59条1項2号(みなし譲渡)に該当し、本件
取引2は、享受した経済的利益は「給与等」に該当するとして更正処分等を受け
た控訴人らがその取消しを求める事案です。裁判所は、原判決の判断を相当であ
るとし、控訴理由がないとしていずれも棄却しました。
控訴人らは、本件取引1は、自己株式の取得を目的とするもので「資産の譲渡」
に当たらないと主張するが、発行会社が自己株式を取得した場合であっても、そ
の相手方である譲渡人からみれば、当該株式の保有期間中におけるキャピタル・
ゲインを観念でき、当然、譲渡所得課税の対象となるものと考えられる。
本件取引2は、控訴人長男Bは、X社において、形式は準委任であるとしても、
実質的には非独立的ともいうべき役務(労務)を提供する立場にあったものと推
認され、控訴人長男Bは、このような立場にあることを前提に、その職務(役務)
に関連して、X社のため本件取引1によって拠出された費用を補填すべく、X社
から多額の購入資金を借り入れ、本件取引2に応じたものであって、本件経済的
利益は、給与所得の課税要件を満たすと認められる。
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