TAINSメールニュース No.384 2018.11.15 発行(社)日税連税法データベース

2018年11月15日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINSだより
  TAINSだより2018秋号(新システム特集号)を掲載いたしました。下
 記の会員専用ページから閲覧できます。      (事業部長:蓮間 好一)
 https://gw.tains.org/doclibrary/docs?title_id=1&state=CATEGORY&cat=101
 
(2)収録した裁決を収録します。
 
 【所得税】
 ・H29-12-19 裁決 棄却 F0-1-870
  無申告加算税の正当な理由/税務署の混雑による体調不良のおそれ
 
 【法人税】
 ・H29-09-12 裁決 棄却 F0-2-784
  調査の違法と重加算税/交際費として計上された代表者個人の飲食代金
 
 【相続税】
 ・H27-12-03 裁決 棄却 F0-3-561
  貸付金債権の評価/評価通達205に定める「回収が不可能又は著しく困難」
  該当性
                        (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  相続分の無償譲渡~遺留分算定の基礎となる「贈与」に当たると判断~
 (平30-10-19 最高裁 破棄差戻し Z999-5399)
 
  上告人及び被上告人の母A(亡Bの妻)は、生前、亡Bの遺産分割調停手続に
 おいて、被上告人に相続分の無償譲渡(本件相続分譲渡)をしました。本件は、
 上告人が、被上告人に対し、遺留分減殺を原因とする不動産の持分移転登記手続
 等を求める事案ですが、本件相続分譲渡が、母Aの相続において、その価額を遺
 留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条、903条1項)
 に当たるか否かが争われました。最高裁では、次のとおり判断し、原判決を破棄
 し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻しました。
 
  共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは、積極財産と消極財産とを包括し
 た遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、相続分の譲渡に伴
 って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。
  したがって、共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に
 係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相
 続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡をした者の相続において、
 民法903条(特別受益者の相続分)1項に規定する「贈与」に当たる。
  以上と異なる見解に基づき、本件相続分譲渡はその価額を遺留分算定の基礎と
 なる財産額に算入すべき贈与に当たらないとして上告人の請求を棄却すべきもの
 とした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-5399

TAINSメールニュース No.383 2018.11.8 発行(社)日税連税法データベース

2018年11月08日

【1】今週のお知らせ
  収録した裁決・判決の一部を紹介します。
 【所得税】
 ・H30-04-19 大阪地裁 Z888-2201
  必要経費該当性/LPガス等の燃料小売業者が同族会社へ支払った業務委託費
 ・H29-10-06 裁決 F0-1-877
  収入すべき時期/馬主が受ける競走馬の賞金
 
 【法人税】
 ・H30-03-13 東京地裁 Z888-2200
  収益の帰属/管理組合か区分所有者か/マンション共用部分及び敷地を賃貸し
  た収益
 ・H29-09-07 裁決 F0-2-782
  タックスヘイブン対策税制/管理支配基準/香港の会社法による書面決議
 ・H29-09-12 裁決 F0-2-783
  重加算税/交際費/代表取締役の個人的費消
 
 【相続税】
 ・H29-10-02 裁決 F0-3-591
  無申告加算税/「正当な理由」の有無/株式の贈与事実について係争中の場合
                        (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
  居住者該当性(生活の本拠)/非永住者期間の起算日
 (平29-12-26 非公開裁決 棄却 F0-1-871)
 
  本件は、原処分庁が、平成23年分ないし平成26年分の所得税等について、
 請求人が所得税法上の居住者に該当することを前提に決定処分等を行ったのに対
 し、請求人がその取消しを求めた事案です。審判所は次のように判断しました。
 
  請求人は、年の約8割に相当する日数を日本国内で滞在していたこと、4年間
 の任期で大学の学長職に就任し、その後任期を延長して離任するまでの間、継続
 して学長職に在任していたこと、当初はA国大学の教授職を兼任していたが、半
 年後には同大学を退職したこと、A国に住居を残したまま日本に入国したものの、
 以後、日本国内に滞在中は、大学の宿舎に、取得したマンションにそれぞれ居住
 していたこと、住民票上の住所は、宿舎及びマンションの所在地にそれぞれ登録
 されていたことが認められる。以上によれば、請求人の生活の本拠は、日本国内
 にあったと認めるのが相当であり、居住者に該当すると認められる。
 
  請求人は、あらかじめ用意されていた宿舎に平成21年3月26日の入国と同
 時に若しくはその直後に入居したと認められるから、請求人が国内に居所を有す
 ることとなった日を入国の日とし、その翌日を起算日として請求人の所得税法上
 の非永住者に該当する期間を計算するのが相当である。そうすると、請求人は、
 各年分のうち、平成26年3月26日までの期間については非永住者に該当する
 が、同月27日以降については、非永住者以外の居住者に該当すると認められる。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-871

TAINSメールニュース No.382 2018.11.1 発行(社)日税連税法データベース

2018年11月01日

【1】今週のお知らせ
(1)サービス停止のお知らせ
  下記の日程でサーバメンテナンスを行います。
  会員の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上
 げます。
                        (システム部長:水澤 裕)
  日時:2018年11月2日(金) 午後7:00 ~ 午後7:30
  作業時間帯はすべての機能のご利用ができません。
 
(2)収録した裁決・判決の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H29-11-08 裁決 棄却 F0-1-884
  無申告加算税の正当な理由/納税者の体調不良
 
 【消費税】
 ・H29-06-16 裁決 棄却 F0-5-206
  仕入税額控除/重加算税/領収書の宛名
 
 【その他】
 ・H30-10-19 最高裁 Z999-5399
  相続分の無償譲渡/譲渡者の相続における遺留分算定の基礎となる「贈与」該
  当性                    (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
  減価償却費/太陽光発電設備を事業の用に供した日
 (平29-12-21 非公開裁決 棄却 F0-2-768)
 
  請求人A社は、電力会社との間で、太陽光発電設備で発電した電力を全て同社
 に売却するため、配線方法について「全量配線」を選択して電力供給に係る契約
 を締結しました。本件は、A社が、太陽光発電設備の減価償却費を損金の額に算
 入して申告したところ、原処分庁が、本件各設備を係争事業年度内に事業の用に
 供しておらず、減価償却費を損金の額に算入することはできないとして更正処分
 をした事案です。A社は、A社が行う手続の最終段階である工事費負担金の支払
 を終えた時点で事業の用に供したものとするべきであると主張しましたが、審判
 所は次のように判断しました。
 
  本件各設備は配線方法が全量配線の太陽光発電設備であるから、A社が各設備
 を事業の用に供したというためには、本件各設備のそれぞれが系統連系工事を了
 し、電力会社へ発電した電力の供給を開始した事実を必要とする。
  そうすると、系統連系工事を了し、電力の供給が開始された日は、本件設備1
 が平成27年4月2日、本件設備2が同年6月8日であるから、本件各設備のい
 ずれについても事業年度末(平成27年3月31日)までに電力供給を開始した
 事実は認められない。したがって、A社は、本件各事業年度の太陽光発電設備の
 減価償却費を損金の額に算入することはできない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-2-768

TAINSメールニュース No.381 2018.10.25 発行(社)日税連税法データベース

2018年10月25日

【1】今週のお知らせ
(1)裁決事例集110集の収録を完了しました。
  国税不服審判所のホームページに掲載された、平成30年1月から3月分の裁
 決事例集110集の収録を完了しました。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★裁決事例集110集 ………→15件
 
  この中から消費税の事例を紹介します。
 【消費税】
 ・J110-5-14 H30-02-23公表裁決 棄却
  納税義務の免除(免税事業者)
 
(2)収録した裁決・判決の一部を紹介します。
 
 【所得税】
 ・H30-08-29 最高裁 不受理・確定 Z888-2199
  上告不受理/馬券払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費性
 【法人税】
 ・S63-09-21 裁決 全部取消し F0-2-781
  更正の請求/黒字決算とするため自己加算した貸倒損失
 【相続税】
 ・H29-12-19 裁決 棄却 F0-3-590
  無申告加算税/納税義務の成立・正当な理由の有無/権利の帰属につき係争中
  の場合                   (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
  源泉所得税の納税告知処分~法定納期限経過後における錯誤無効の主張~
 (平30-9-25 最高裁 上告棄却・確定 Z888-2197)
 
  本件は、青果荷受組合の元理事長に対する債務免除に係る経済的利益の賞与該
 当性が争われていた事件の2度目の最高裁判決です。本最高裁では、上告人(青
 果荷受組合)は、納税告知処分の適法性を争い、債務免除益が納税告知処分の対
 象になるのであれば、前提条件に錯誤があり、要素の錯誤であるから、本件債務
 免除は無効である旨主張しました。最高裁は、次のとおり判断し、原審〔差戻後
 控訴審(広島高裁 H29-02-08・Z888-2087)〕の判断は結論
 において是認し、論旨は、結局、採用することができないとして、上告人の請求
 を棄却しました。なお、山崎敏充裁判長裁判官の補足意見があります。
 
  上告人が法定納期限の経過後に本件債務免除の錯誤無効を主張することは許さ
 れないとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざ
 るを得ない。しかしながら、上告人は、本件債務免除が錯誤により無効である旨
 の主張をするものの、納税告知処分が行われた時点までに、債務免除により生じ
 た経済的成果がその無効であることに基因して失われた旨の主張をしておらず、
 したがって、上告人の主張をもってしては、源泉所得税の納税告知処分のうち4
 億8573万4304円の源泉所得税の額を超えない部分及び不納付加算税の賦
 課決定処分のうち同部分に係る部分が違法であるということはできない。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2197

TAINSメールニュース No.380 2018.10.18 発行(社)日税連税法データベース

2018年10月18日

【1】今週のお知らせ
(1)引き続き公表裁決事例を収録中です。
  先週に引き続き国税不服審判所のホームページに掲載された公表裁決事例の収
 録作業を行っております。法人税の事例を紹介いたします。
 
 【法人税】
 ・J110-3-12 H30-03-27公表裁決 棄却
  減価償却資産の償却 損金経理
 
  収録済の公表裁決は下記キーワードで検索することができます。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★裁決事例集110集
 
(2)「調査に生かす判決情報」を収録
  東京国税局課税第一部国税訟務官室からの情報「調査に生かす判決情報」の第
 73号から第81号までの9件を収録しました。判決情報の一部を紹介します。
 
 ・積極的に質問応答記録書を作成しましょう!-証拠収集の重要性-
 ・裁判例から見る所得税の推計課税-推計課税を行うに当たって、知っておきた
  い近年の裁判例-
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 判決情報 ☆2018年10月収録分
                        (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
  みなし譲渡課税・取引相場のない株式の時価~議決権割合の判定時期~
 (平30-07-19 東京高裁 全部取消し Z888-2198)
 
  A社の代表取締役であった被相続人庚が、所有していたA社株式をB社に譲渡
 したことにつき、相続により庚の平成19年分所得税の納付義務を承継した控訴
 人らが、株式に係る譲渡所得の収入金額を譲渡対価(1株当たり75円・配当還
 元方式)と同じ金額で申告したところ、鶴見税務署長が、譲渡対価はその時にお
 けるA社株式の価額(1株当たり2990円、異議決定後は2505円・類似業
 種比準方式)の2分の1に満たないから、本件株式譲渡は所得税法59条1項2
 号の低額譲渡に当たるとして更正処分等をした事案です。
  裁判所が次のように判示したことから納税者の逆転勝訴となりましたが、被控
 訴人は最高裁判所に上告受理申立てをしたため、今後の動向が注目されます。
 
  A社株式が評価通達188の(3)の株式に該当するかどうかが争われている
 ところ、所基通59-6の(1)が、評価通達188の(1)に定める「同族株
 主」に該当するかどうかについて株式を譲渡した個人の当該譲渡直前の議決権の
 数により判定する旨を定めている。同(3)の「同族株主のいない会社」の株主
 区分の判定については、その文言どおり、株式の取得者の取得後の議決権割合に
 より判定されるものと解するのが相当である。B社には同族関係者がおらず、そ
 の議決権割合はA社の議決権総数の15%未満にとどまり、A社株式は、評価通
 達188の(3)の株式に該当し配当還元方式によって評価すべきであるから、
 本件株式譲渡は所得税法59条1項2号の低額譲渡に当たらない。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2198

TAINSメールニュース No.379 2018.10.11 発行(社)日税連税法データベース

2018年10月11日

【1】今週のお知らせ
(1)公表裁決事例を収録中です。
  国税不服審判所のホームページに掲載された公表裁決事例の収録作業を行って
 おります。相続税の事例の一部を紹介いたします。
 
 【相続税】
 ・J110-1-02 H30-01-29公表裁決 一部取消し
  無申告加算税 更正又は決定の予知
 ・J110-1-05 H30-02-06公表裁決 一部取消し
  重加算税 隠ぺい、仮装の認定 認めなかった事例
 
 収録済の公表裁決は下記キーワードで検索できます。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★裁決事例集110集
 
(2)収録した裁決の一部を紹介いたします。
 ・H27-09-17 裁決 却下 F0-5-201
  延滞税の取消しを求める旨の審査請求/国税に関する法律に基づく処分
 ・H29-05-22 裁決 棄却 F0-5-202
  役務の提供に係る内外判定/工事の請負か仲介か
 ・H29-05-22 裁決 棄却 F0-5-203
  仕入税額控除/帳簿不提示/再調査時の領収書等提示
                        (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:小菅 貴子)
  みなし配当の源泉徴収義務/事業の全部の譲受けによる自己株式の取得
 (平29-08-02 非公開裁決 棄却 F0-1-821)
  本件は、請求人が自己の株式の取得に際し株主(前代表者)に交付した金銭に
 ついて、原処分庁が、その一部が所得税法25条《配当等とみなす金額》1項に
 規定する配当等とみなす金額に当たるとして、源泉徴収に係る所得税等の納税告
 知処分等を行ったのに対し、請求人が、当該自己の株式の取得は同項5号括弧書
 きに規定する配当等とみなす金額が生じない所得税法施行令61条1項4号に規
 定する事業の全部の譲受けによる取得に該当するとして、その全部の取消しを求
 めた事案です。審判所は次のとおり判断して、請求人の請求を棄却しました。
 
  請求人が、本件自己株式のほかに前代表者から本件各不動産以外の資産を譲り
 受けた事実は認められず、また、本件各不動産の貸付けに関する得意先関係等の
 経済的価値のある事実関係を譲り受けた事実も認められない。そうすると、請求
 人は、前代表者から本件自己株式及び本件各不動産を取得したが、これらに加え
 て経済的価値のある事実関係を譲り受けた事実は認められないから、請求人は、
 事業を前代表者から譲り受けたとは認められない。
  請求人は、本件自己株式及び本件各不動産を前代表者から譲り受け、更に前代
 表者は請求人の取締役を辞任しており、事業の全部の譲受けが行われた旨主張す
 るが、結局のところ、請求人は、前代表者が請求人の経営から退くとともに、本
 件自己株式及び本件各不動産を前代表者から取得した旨主張しているにすぎず、
 請求人の主張には理由がない。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-821

TAINSメールニュース No.378 2018.10.4 発行(社)日税連税法データベース

2018年10月04日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINS研修サイトの更新について
  研修サイトを更新し、新たに3テーマを追加しました。ログイン後、「TAI
 NS研修」のアイコンをクリックするとサイトに移動し、オンデマンド研修を受
 講できます。詳細はトップページの「お知らせ」をご覧ください。
                         (事業部長:蓮間 好一)
 
(2)公表裁決事例を収録中です
  国税不服審判所のホームページに平成30年1月から3月分の裁決事例15件
 が公表されました。http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/110.html
  現在、編集・収録作業を行っております。下記に一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 1.J110-1-06 H30-03-07公表裁決 一部取消し、棄却
   重加算税 隠ぺい、仮装の認定 認めなかった事例
 2.J110-2-09 H30-03-22公表裁決 棄却
   一時所得 一時所得と認めた事例 その他
 3.J110-2-10 H30-01-11公表裁決 一部取消し、棄却
   給与所得の源泉徴収 認定事例
 
 収録済の公表裁決は下記キーワードで検索できます。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 ★裁決事例集110集
                        (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
  交際費/建設工事の施工業者の選定権限を有する者に対し支出した紹介手数料
 (平29-11-20 非公開裁決 棄却 F0-2-776)
 
  本件は、審査請求人が受注した工事に関する紹介手数料として支出した金員に
 ついて、原処分庁が、当該金員は施工業者の選定権限を有する者に対する金銭の
 贈答のために支出したものであるから、交際費等に該当し損金の額に算入できな
 いなどとして、請求人に対し法人税等の更正処分等をした事案です。
  審判所は、本件金員は、交際費等の三要件を満たしているとし、また、請求人
 が支払先から交付を受けた「建設工事紹介及び紹介手数料の支払いについて」と
 題する書面等については、情報提供の正当な対価であるように装ったものである
 として、重加算税の賦課要件を満たしているとしました。
 
  本件管理者は、介護付有料老人ホームの予定運営管理者であり、工事の施工業
 者の選定を任されていたことから、本件工事を受注しようとしていた請求人にと
 って、「事業に関係ある者」に該当する。請求人は、管理者との親睦の度を密に
 して、事業の円滑な遂行を図る目的で、本件金員を支出したものと認めるのが相
 当であり、本件紹介手数料の支出は、請求人が、工事を受注できたことへの謝礼
 及び将来にわたる情報提供を期待して管理者の歓心を買うために支出したもので
 あるから、その行為の形態は、管理者に対する金銭の贈答に当たる。本件紹介手
 数料は、措置法第61条の4第3項(現行4項)の交際費等に該当する。
  
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-2-776

TAINSメールニュース No.377 2018.9.27 発行(社)日税連税法データベース

2018年09月27日

【1】今週のお知らせ
 収録した裁決・判決の一部を紹介いたします。
 
 【所得税】
 ・H29-09-01 裁決 棄却 F0-1-851
  重加算税/不動産所得の必要経費/税理士に対する虚偽説明
 ・H01-06-16 裁決 棄却、一部取消し F0-1-853
  調査の違法/推計の合理性/水道工事業
 
 【相続税】
 ・H27-09-01 裁決 一部取消し、棄却 F0-3-564
  決定通知書の処分理由/外国法人株の増資に係るみなし贈与
 ・H27-06-01 裁決 棄却 F0-3-565
  家屋の評価/「鑑定評価」の合理性
 ・H29-08-04 裁決 棄却 F0-3-584
  処分理由の差替え/雑種地の評価/「広大地」該当性・評価単位
 
 【地方税】
 ・H28-01-21 京都地裁 Z999-8395
 ・H28-06-23 大阪高裁 Z999-8396
  固定資産税/登録価格の決定/道路判定の処分性・接面街路の「3号道路」該
  当性                    (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  固定資産税の登録価格の決定~土地に接する街路の「3号道路」該当性~
 (平30-07-17 最高裁 破棄差戻し Z999-8397)
 
  この事案は、4筆の土地の所有者が、土地の登録価格を不服として京都市固定
 資産評価審査委員会に審査の申出をしたところ、これを棄却する旨の決定を受け
 たため、京都市(被上告人)を相手に、その各決定の取消しを求めるものです。
  最高裁では、次のとおり判断し、原判決を破棄し、各土地の西側に接する街路
 (本件街路)が建築基準法42条1項3号に規定する道路(3号道路)に該当す
 るか否か等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差戻しました。
 
  本件街路が3号道路に該当するか否かは、昭和25年11月23日時点で本件
 街路が幅員4m以上の道として存在した事実が客観的に認められるか否かにより
 定まる以上、このような事実が認められず、本件街路が3号道路に該当するとい
 うことができない場合には、本件道路判定(京都市長の本件街路が3号道路に該
 当する旨の道路判定)がされていても、建築主事等は、各土地が3号道路に接し
 ていることを前提とした建築確認をすることはできない。
  したがって、本件街路が3号道路に該当するための要件を満たすか否かは明ら
 かでないとしながら、本件道路判定がされていること等を理由に、建築確認を受
 けることができないために各土地上に建築物を建築することができない事態とな
 る可能性はないとして、本件街路が3号道路に該当することを前提とする登録価
 格の決定は適法であるとした原審の判断には、固定資産の評価等に関する法令の
 解釈適用を誤った違法がある。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-8397

TAINSメールニュース No.376 2018.9.20 発行(社)日税連税法データベース

2018年09月20日

【1】今週のお知らせ
  収録した判決・裁決の一部を紹介いたします。
 【所得税】
 ・H30-01-11 裁決 一部取消し F0-1-848
  重加算税/換地不交付に対する清算金の期限後申告
 
 【法人税】
 ・H29-11-24 東京地裁 棄却 Z888-2191
  移転価格税制/残余利益分割法/無形資産の使用許諾及び役務提供取引
 
 【相続税】
 ・H29-06-20 裁決 棄却、却下 F0-3-566
  無申告加算税/「正当な理由」の有無/請求の利益(処分の不存在)
 ・H29-06-21 裁決 棄却 F0-3-567
  更正の請求/やむを得ない事由の有無/被相続人の亡夫の遺産分割協議の無効
  判決
 
 【消費税】
 ・H29-06-06 裁決 棄却 F0-5-199
  仕入税額控除/役員の親族に支払った外注加工費
 ・H27-10-21 裁決 棄却 F0-5-200
  過少申告加算税/更正があるべきことの予知
                        (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
  重加算税/換地不交付に対する清算金の期限後申告
 (平30-01-11 非公開裁決 一部取消し F0-1-848)
 
  請求人が、土地区画整理組合から交付を受けた換地不交付に対する清算金につ
 いて、調査を受け、法定申告期限後に確定申告書を提出したところ、原処分庁か
 ら重加算税の賦課決定処分を受けた事案です。
  審判所は、次のとおり、重加算税の賦課要件は満たさないとして、無申告加算
 税相当額を超える部分を取り消しました。
 
  原処分庁は、請求人が、確定申告会場に行った際、清算金を受領した事実を秘
 匿するために、あえてお知らせや支払調書を持参しなかった旨主張するが、仮に
 お知らせ等を持参しなかった事実が認められるとしても、清算金についての確定
 申告をすることは可能であったといえる。また、請求人は、自身が理事を務める
 組合から支払調書を受領しており、組合がこれを原処分庁へ提出することは容易
 に察し得る状況にあったといえるから、請求人がこれらの書類を確定申告会場へ
 持参しなかったとして、清算金の受領の事実を秘匿するための行動と評価するの
 は困難といわざるを得ない。
  請求人は、お知らせ及び支払調書を含む清算金に係る書類を廃棄するなどの行
 為をしていないこと、預金口座に清算金が振り込まれた日以降調査が開始された
 日までの間において、預金口座から特段多額の出金はなく、清算金を受領した後、
 これを隠匿しようとするような行為をしていないことが認められる。
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-848

TAINSメールニュース No.375 2018.9.13 発行(社)日税連税法データベース

2018年09月13日

【1】今週のお知らせ
  収録した裁決の一部を紹介いたします。
 【所得税】
 ・H30-03-19 裁決 一部取消し F0-1-835
  みなし譲渡/発行会社への株式引渡し
 ・H21-06-05 裁決 一部取消し F0-1-841
  必要経費/中古車両の耐用年数/空調設備工事業
 
 【法人税】
 ・H27-12-01 裁決 棄却 F0-2-769
  重加算税/取締役個人名義口座に入金された車両売却代金/税理士に対する虚
  偽説明
 ・H29-10-24 裁決 棄却、却下 F0-2-772
  通則法65条1項「納付すべき税額」/減額更正後の修正申告による過少申告
  加算税
 
 【相続税】
 ・H29-09-05 裁決 却下、棄却 F0-3-581
  更正通知書の処分理由/宅地の評価/道路と高低差のある土地の10%評価減
  の可否
 ・H29-11-20 裁決 棄却 F0-3-583
  株式評価/類似業種比準方式/クレーン車売却益の「非経常的な利益の金額」
  該当性                   (税法データベース事務局)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
  法定納期限から5年経過後の期限後申告の可否/先物取引に係る損失
 (平30-01-16 千葉地裁 棄却・控訴 Z888-2194)
 
  給与所得者である原告は、先物取引の差金決済に係る損益について、平成22
 年分以降の所得税の期限後申告をしたところ、処分行政庁から、平成21年分の
 所得税についても申告義務があるとして、決定処分を受けました。原告は、調査
 の際、平成20年分の損失(2116万円)を翌年に繰り越したいと述べたとこ
 ろ、時効により期限後申告をすることはできない旨の説明を受けました。しかし
 原告は、調査の時点では、通則法25条の決定を受けていなかったから、期限後
 申告を行うことができたと主張しています。裁判所は次のように判示しました。
 
  確定申告は、納税者自らの判断と責任においてその納税額を自ら確定させる行
 為であると解されるから、通則法25条の規定による決定がされない場合であっ
 ても、当該申告の対象となる国税の時効期間が経過し、抽象的な納税義務自体が
 消滅し、具体的な納税義務の内容をおよそ確定することができなくなったときに
 は、期限後申告をすることはできなくなると解するほかはなく、したがって、納
 税者が期限後申告をすることができる期間は、原則として、当該国税に係る法定
 納期限から5年間であると解するのが相当である。
  そうすると、平成26年11月18日の調査時においては、平成20年分所得
 税の法定納期限(平成21年3月16日)から5年を経過し、原告は、同所得税
 の期限後申告をすることができなかったこととなる。
 
 ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2194