TAINSメールニュース No.639 2023.10.05 発行(社)日税連税法データベース

2023年10月05日

【1】今週のお知らせ
 TAINS研修サイトの更新について
  研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
 NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
  ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
 動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
 研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
 を登録することができます。
  同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
 して受講・登録ができます。
         記
  給与所得を有する医師の洋画制作販売から生じた損失
                 ~「事業」の該当性が争点となった事例~
                        講 師:税理士 筏井陽子
                      (データベース部長 田川 哲)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
 貸付残債権の放棄による損失/雑所得の必要経費算入の可否(所法51条4項)
 (令04-07-14 東京地裁 棄却 Z888-2512)
 
  原告は、平成23年、英国領バージン諸島に設立したA社に対して、合計で約
 3992万ユーロの貸付けを行い、A社はその貸付金により船舶(中古ヨット)
 を3500万ユーロで購入し維持管理した上、平成26年に約2145万ユーロ
 で船舶を売却し、その代金を貸付けの一部に対する弁済に充てました。本件は、
 原告が貸付残債権を放棄したことにより生じた損失を、所得税法51条4項に基
 づき、雑所得(為替差益)の必要経費に算入することができるか否かを争点とす
 る事案です。東京地裁は、次のように判示して、原告の請求を棄却しました。
 
  本件貸付けについては、無担保かつ無利息であり、また、船舶の購入資金とし
 て貸付けを行ったものであり、利息による利益獲得の営利性や為替差益を得る旨
 の営利性を認めることができない。そうすると、原告が独立的営利活動を行って
 いたことを認めることはできず、雑所得を生ずべき業務自体が認められないから、
 貸付残債権は、「雑所得を生ずべき業務の用に供される資産」に該当しない。
  本件貸付けは、A社が十分な資金を有するまで弁済を求めないことが合意され
 ていたこと、A社の資産は、船舶又はその売却代金のみであった上、A社は弁済
 に充てる原資を獲得するための活動を行っていなかったことが認められるから、
 貸付残債権は、その客観的性質に照らし、弁済を受けて為替差益(雑所得)が発
 生する具体的可能性がなく「雑所得の基因となる資産」に該当しない。
  以上によれば、所得税法51条4項の適用によって、貸付残債権に係る損失を
 雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできない。
 URL:https://app6.tains.org/search/detail/61513