TAINSメールニュース No.498 2020.11.26 発行(社)日税連税法データベース

2020年11月26日

【1】今週のお知らせ
  TAINSに収録されている行政文書のご案内 〔行政文書の紹介〕
             (TAINSコード:国税局長会議R010801)
  TAINSには、情報公開法に基づく開示請求により入手した様々な行政文書
 が掲載されています。その中には、国税局長会議や徴収部長会議、課税部長会議
 などの会議資料といったものまで収録されています。これらは、課税庁の「今」
 の取り組みが見える資料です。少しマニアックな資料になりますが、個人的には、
 雑談に使える面白い資料になっていると思います。
  今回紹介する行政文書は、令和元年8月1日から2日間にわたって行われた、
 全国国税局長会議の会議資料です。まず、日程表が掲載されています。長官の訓
 示からはじまり、一つの議題について約20分程度の時間をかけて会議が進行し
 ているのがわかります。次に、参加者の名簿、配席図(席順表)が掲載されてい
 ます。そして、会議資料が70頁以上にわたって掲載されています。内容は、各
 課、各部の課題や個別議題といったものです。まず、目を引くのは、「課税部当
 面の課題」です。「調査パフォーマンス向上に向けた取組」として、(1)局署
 の調査パフォーマンス、(2)調査におけるデータ活用の推進、(3)シェアリ
 ングエコノミー等新分野の経済活動への的確な対応といった取組が報告されてい
 ます。そして、「調査査察部当面の課題」は、「リスク・ベース・アプローチに
 基づいた取組の推進」と銘打って(1)組織的・継続的な納税者管理等、(2)
 適正な調査事務運営の推進、(3)データ活用の推進、(4)経済社会情勢の変
 化への的確な対応、(5)協力的手法に係る取組、(6)国際課税分野への対応、
 といった課題と対応が示されています。
  これらの資料を見ると、調査の効率性をいかに高めるかが最大の課題になって
 いることがわかります。そして、調査必要度の高いのはどのような法人なのかが、
 見えてきます。
  読み物として楽しむもよし、クライアントとの雑談資料として使うもよし、課
 税庁の今後の傾向を読み解く分析資料として使うもよし、様々な楽しみを見つけ
 てみてはいかがでしょうか。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 国税局長会議R010801
                       (要点メンバー:黒住 茂雄)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
  住宅用賃貸部分を含む中古建物の用途区分~課税対応課税仕入れの該否
 (令02-09-03 東京地裁 全部取消し 控訴 Z888-2312)
 
  不動産の売買及び仲介業務等を目的とする原告X社は、将来の転売を目的とし
 てマンション84棟(その一部又は全部が住宅として貸し付けられているもの)
 を購入し、消費税等の確定申告において、本件各課税仕入れが消費税法30条2
 項1号にいう「課税対応課税仕入れ」に区分されるとして、消費税額の全額を控
 除して申告をしました。これに対し、麹町税務署長は、本件各課税仕入れは同号
 にいう「共通対応課税仕入れ」に区分すべきものであり、本件各課税仕入れに係
 る消費税額の一部しか控除することができないとして、各更正処分をした事案で
 す。裁判所は、次のように判断し、X社の主張を全面的に認めました。
 
  X社が仕入れた収益不動産を賃貸することは、販売のための手段として位置付
 けられるもので、その賃料収入は、収益不動産を賃貸することによって不可避的
 に発生するものであり、事業の目的からして、副産物というべきものである。
  各仕入日に賃料収入が見込まれることをもって、各課税仕入れにつき「その他
 の資産の譲渡等」にも要するものとして共通対応課税仕入れに区分することは、
 本件事業に係る経済実態から著しくかい離するばかりでなく、課税仕入れに係る
 消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分する
 という観点に照らしても、相当性を欠くものといわざるを得ない。したがって、
 各課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要するものとして課税対応課税仕入れに
 区分するのが相当であるから、その全額が控除対象仕入税額となる。
  ≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2312