2020年10月22日
【1】今週のお知らせ
国外関連者への貸付金に係る利率〔行政文書の紹介〕
(TAINSコード:調査に生かす判決情報068)
今回、紹介する行政文書は、近年、国際税務で重要なテーマの一つである移転
価格課税の訴訟を取り上げた「調査に生かす判決情報068」(平成28年12
月東京国税局課税第一部国税訟務官室)です。
平成10年3月期から平成12年3月期までの国外関連者との金銭貸借取引に
ついて、移転価格税制を適用して行った更正処分の適法性が争われた事件を解説
しています。納税者は国外関連者に対して年2.5%~3.0%としてタイバー
ツ建ての貸付を行っていましたが、課税庁は独立価格比準法に準ずる方法と同等
の方法を用いて行った独立企業間価格を算定し、年10.5%~19.2%の利
率で納税者の所得金額を算定しました。裁判所は、課税庁の主張する金利は市場
金利に基づき算出されており、高い合理性が認められるとして、納税者の更正処
分取消請求を棄却しました。現在は、「移転価格事務運営要領」(平成13年6
月)に国外関連者との金銭貸借取引についての定めがありますが、定めのない時
点において、経済的合理性の有無がポイントとなったことが分かります。
解説は課税庁の立場で説明されていますが、税理士としても大変参考になりま
す。今回の文書では、「訴訟となった場合には、通達及び事務運営指針に従い検
討し、更正処分を行っていたとしても、比較対象取引との比較可能性の有無や融
資形態としての合理性等について、具体的な証拠に基づき立証をすることが必要
となるため、調査時においては、その点を念頭において証拠の収集に努める必要
がある。」という点が、調査を受ける側の立場としても参考となりました。
≪検索方法≫ 【キーワード】 調査に生かす判決情報068
(要点メンバー:筏井 陽子)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
カード会員に付与したポイントの未使用分の損金算入時期
(令01-10-24 東京地裁 棄却・確定 Z888-2302)
アニメのキャラクター商品等の販売を行う原告A社は、顧客(カード会員)が
A社の店舗で商品等を購入する際に付与したポイントの事業年度末における未使
用分に相当する金額(ポイント未払計上額)を損金の額に算入して申告したとこ
ろ、豊島税務署長から、ポイント未払計上額につき、事業年度末において債務が
確定しているとは認められないとして更正処分を受けました。裁判所は、次のよ
うに判示して、処分の取消しを求めるA社の請求を棄却しました。
カード会員の初回購入時に付与されたポイントは、期間内に失効して使用され
なくなる可能性もある上、期間内に使用されるとしても、いつ、どのような内容
を選択するかによって、費用の発生する時期や金額が異なってくるものといえる。
そうすると、カード会員の初回購入時にポイントが付与された時点では、仮に
その時点でA社の主張する債務(次回購入時における代金充当又は景品交換をす
べき債務)が成立しているとしても、次回購入時における代金充当の選択又は景
品交換の選択がされない限り、その債務に基づいて給付をすべき具体的内容が明
らかにならないため、これに伴う費用が発生したとはいえず、その費用の金額を
合理的に算定することができるともいえない。したがって、債務確定要件(法基
通2-2-12)を充足していると認めることはできず、ポイント未払計上額を
損金の額に算入することはできないというべきである。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2302