2020年03月12日
【1】今週のお知らせ〔行政文書の紹介〕
解決すべき問題とどのように向き合って検討していくかの参考に!
(TAINSコード:調査審理の実務(大阪審判所)H150912)
租税の基本原則である「租税法律主義」。租税の賦課・徴収は、法律の根拠に
基づいて行われます。我々税理士の実務に目を向けると、この租税法律主義は頭
にあるものの、それをどのように実践し、問題解決に向けて事案とどのように向
き合って検討していけばよいのか分からないこともあると思います。
そのような場合に、「調査審理の実務(大阪審判所)H150912」を一読
してみると良いでしょう。この資料は、国税不服審判所が一つの審査請求事案に
ついて、どのような審理過程を経て、議決するのかをシナリオ化したものです。
担当審判官における事案の進行管理などを中心に示したものではありますが、問
題を解決するためにどのような手順や思考過程を経ているか、事実の認定や関係
法令への当てはめをどのように行っているのか参考になるものと考えられます。
審判官は、事実関係、請求人及び原処分庁の主張、関係法令などを順次整理し
て、最終的な結論(議決)に向けて作業を進めていきます。請求人や関係者と面
談して、当事者の主張等を丁寧に整理したり、租税法の書籍等で問題箇所の概略
的な知識を得たりするほか、過去の裁判例等も調べたりします。
また、この資料における事案では、所得税法における生命保険金の収入時期の
話がでてきますが、審判官は、保険法の概説書や一般的な保険約款、保険会社の
ホームページをみて、保険に関する知識を広げて、単に所得税法のことだけを考
えて判断しているわけではないことがみてとれます。
この資料では、一つの問題を解決するための手順や思考過程が、事例に基づい
て記述されており、参考になると思われます。 (要点メンバー:鈴木 涼介)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:小菅 貴子)
税理士損害賠償/相続税対策でされたDESに係る債務消滅益の説明義務違反
(令01-08-21 東京高裁 控訴棄却、請求認容 Z999-0174)
本件は、不動産の賃貸及び管理等を目的とする株式会社である被控訴人が、顧
問契約を締結していた税理士法人である控訴人に対し、控訴人は、被控訴人に対
して約11億円の貸金等債権を有する被控訴人の前代表者甲の相続税の節税のた
め、被控訴人に有利な方法(清算方式)があるのに、その助言指導をせず、DE
Sを提案し、その際、当該DESにより被控訴人に多額の債務消滅益が生じ、法
人税が課税されるリスクがあることを説明せず、本来支払う必要のなかった法人
税等相当額の損害などを被ったとして、税務顧問契約の債務不履行又は不法行為
に基づき、損害額合計3億2902万7820円及び遅延損害金の支払を求める
事案です。裁判所は、次のとおり判断して控訴人の控訴を棄却しました。
控訴人は、被控訴人に対し、顧問税理士として、租税関係法令に適合した範囲
内で、課税上最も有利となる方法を検討して、その方法を採用するように助言指
導する義務を負っているのであり、また、DES方式を提案するに当たり、債務
消滅益課税について具体的な説明をし、法人税及び相続税の課税負担を少なくし、
より節税の効果が得られる清算方式を採用するよう助言指導する義務があった。
控訴人が本件DESによって債務消滅益が発生することを正しく説明していれ
ば、被控訴人は2億9000万円の法人税の課税を避けるため、多少のデメリッ
トがあっても清算方式を採用したものと推認できるから、上記義務違反と法人税
の課税との間に相当因果関係はないという控訴人の主張は採用し得ない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z999-0174