2019年12月19日
【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【相続税】
・H30-07-26 裁決 棄却 F0-3-641
土地の評価/2棟の貸家敷地の評価単位・「広大地」該当性/未払金債務の存
否
・H30-07-02 裁決 棄却 F0-3-640
貸付金及び未収入金の評価/同族会社に対する貸付金等の回収可能性
【消費税】
・H31-02-20 東京地裁 棄却 Z888-2254
還付申告/香港へ輸出したとする商品購入の課税仕入れ該当性
【他国税】
・H29-12-11 裁決 棄却 F0-8-198
納付義務の承継/公売公告処分の違法性/熟慮期間経過後の相続放棄
・H29-12-08 裁決 却下 F0-8-197
差押処分/不服申立適格・処分の不存在
(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
多国間を移動する役員の生活の本拠/居住者に該当せず(納税者勝訴)
(令和元年5月30日 東京地裁 全部取消し 控訴 Z888-2256)
本件は、複数の内国法人と海外法人の代表者である原告が「居住者」に該当す
るか否かを争点とする事例です。東京地裁は、原告の生活の本拠が日本にあった
と認めることはできないから「居住者」には該当しないとして、処分の全部を取
り消しました。なお、東京高裁(令和元年11月27日・TAINS未収録)も、
地裁と同様に「居住者」には該当しないと判断しています。
客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かは、滞在日数、住居、職業、
生計を一にする配偶者等の居所等を総合的に考慮して判断するのが相当である。
原告は、各年を通じて、海外法人の業務に従事し、そのために相応の日数にお
いてシンガポールに滞在し、また世界的なハブ空港があるシンガポールを主な拠
点としてインドネシアや中国その他の国への渡航を繰り返しており、これらの滞
在日数を合わせると年間の約4割に上っていたことなどからすれば、原告の職業
活動はシンガポールを本拠として行われていたものと認められ、他方、日本国内
における滞在日数とシンガポールにおける滞在日数とに有意な差を認めることは
できない。原告と妻は、原告の職業活動に適応した生活の在り方として、妻らの
生活の本拠は日本の居宅のままとし、原告が帰国したときに休暇も兼ねて妻らと
会うという方法を選択したものということができるから、生計を一にする妻らが
国内に居住していたことは、原告の生活の本拠が日本国内にあったことを積極的
に基礎付けるものとはいえない。これらを総合すると、原告の生活の本拠が日本
にあったと認めることはできない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2256