2018年03月29日
【1】今週のお知らせ
国税不服審判所のホームページに平成29年7月から9月分の裁決事例12件
が公表されました。 http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/108.html
【所得税】
1.J108-1-01 H29-08-22公表裁決 棄却
(国税の納付義務の確定/措置法29条の2(税制適格ストックオプション)
適用後に非居住者となった場合)
2.J108-1-02 H29-09-01公表裁決 棄却
(過少申告加算税/修正申告後に国外財産調書を提出した場合)
3.J108-1-03 H29-09-26公表裁決 一部取消し
(無申告加算税 更正又は決定の予知/請求人名義の不動産から生ずる所得)
4.J108-1-04 H29-08-23公表裁決 一部取消し
(重加算税/医師(内科医及び産業医)の収入計上漏れ)
5.J108-2-05 H29-07-26公表裁決 一部取消し
(歯科矯正治療費の収入すべき時期/矯正装置装着時)
6.J108-2-06 H29-08-02公表裁決 棄却
(FX取引に係る差損益金等の収入すべき時期/ロールオーバーの時)
【他国税】
7.J108-5-12 H29-07-25公表裁決 棄却
(滞納処分に関する猶予、停止等/徴収法153条1項各号該当性)
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
国税の納付義務の確定/措置法29条の2適用後に非居住者となった場合
(平29-08-22 公表裁決 棄却 J108-1-01)
ストックオプションの権利行使益は、原則として給与所得として課税されます
が、税制適格ストックオプションについては、権利行使時には課税せず、取得し
た特定株式の譲渡時に、値上がり益と併せて譲渡所得として課税されます。
本件は、請求人が、居住者として税制適格ストックオプションの権利行使によ
り取得した株式をK国に出国後に移転(保管口座を移管)したことによるみなし
譲渡所得について確定申告をした後、当該譲渡所得は、K国との間の租税協定に
より日本国には課税権がないとして更正の請求をしたのに対し、原処分庁が、更
正をすべき理由がない旨の通知処分をした事案です。
措置法29条の2第4項は、特定株式の移転があった場合には、その時におけ
る価額による譲渡があったものとみなす旨規定している。そして、非居住者の特
定株式の譲渡に係る所得は、所得税法161条1号に規定する国内源泉所得に該
当することから、特定株式を譲渡した非居住者は、所得税を納める義務がある。
本件みなし譲渡益のうち「権利行使益」については、権利行使日における居住
地国である日本国に課税権が認められ、租税協定は日本国の課税権を制限してい
ないから、課税権は日本国にある。一方、みなし譲渡益のうち「値上がり益」は、
K国にのみ課税権が配分されることになる。
≪検索方法≫ 【キーワード】 J108-1-01