TAINSメールニュース No.666 2024.04.25 発行(社)日税連税法データベース

2024年04月25日

【1】今週のお知らせ
TAINSだより
TAINSだより(2024年春号)を掲載いたしました。
≪特別寄稿≫令和6年度税制改正のあらまし
(東京税理士会:中島孝一氏)

ログイン後「TAINSだより」よりダウンロードすると閲覧できます。
https://app6.tains.org/search/tains_news

(広報部長:上田 健一)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
リフォームした土地建物の一括譲渡/売買契約書の区分が不合理と判断!
(令05-05-25 東京地裁 棄却・控訴 Z888-2559)

A社は、土地付き中古住宅を買い取り、その物件に必要なリフォームを施して、
顧客に販売していました。売買契約書には建物に係る消費税額等が記載されてい
ましたが、その算出方法は、戸建住宅の場合には売買代金総額に2.7パーセン
ト(過去に仕入れた物件の固定資産税評価額等の比の平均値を基に算出)を乗じ
たものでした。課税庁は、本件物件の譲渡の対価の額は、消費税法施行令45条
3項に規定する「課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに
合理的に区分されていないとき」に該当するとして、更正処分を行った事案です。
A社は、顧客との間で合意した「対価の額」が「合理的に区分されていないと
き」に該当するとはいえないと主張しましたが、東京地裁は、次のように判断を
してA社の請求を棄却しています。

一括譲渡の場合において、消費税法施行令45条3項の「合理的に区分されて
いないとき」に該当するか否かを判断するに当たっては、当該課税資産及び非課
税資産のそれぞれの本来的な価額の比率やこれらを仕入れた際のそれぞれの対価
の額の比率との比較において、課税資産の対価の額の割合が過少になっていない
かどうかなどの事情をも考慮すべきものである。
原告算出方法は、リフォームにより高めた各物件の交換価値を建物の対価の額
に適切に反映したものということはできず、不合理なものであることは明らかで
あり、「合理的に区分されていないとき」に該当するものというべきである。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62384

TAINSメールニュース No.665 2024.04.18 発行(社)日税連税法データベース

2024年04月18日

【1】今週のお知らせ
(1)公表裁決事例を収録いたしました。
国税不服審判所のホームページに掲載された、令和5年7月から9月分の公表
裁決事例の収録が完了いたしました。
≪検索方法≫
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に『★裁決事例集132集』を入力
して検索

(2)収録した判決の一部を紹介します。
【法人税】
・R06-03-27 最高裁 不受理 Z888-2620
上告不受理/青色申告承認取消し/税理士法人による2事業年度連続の期限後
申告
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62496

【その他】
・R06-03-21 地裁 有罪、控訴 Z999-9177
刑事事件/脱税スキームによる暗号資産(仮想通貨)取引に係る雑所得の除外
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62553
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
分割納付誓約期間内の公売公告処分は「不当な処分」として全部取消し!
(令05-08-21 公表裁決 全部取消し J132-2-02)

この事案は、原処分庁が、請求人の滞納国税を徴収するため、運送業を営む請
求人が所有する駐車場等の各不動産の公売公告処分を行ったのに対し、請求人が、
滞納国税について「分割納付誓約書」を提出し、これに基づく納付計画に従って
納付を継続していることから、分割納付計画の期間中にした公売公告処分は、公
売に付すべき時期を誤った違法又は不当な処分であるとして、その全部の取消し
を求めたものです。
審判所では、各不動産を公売に付する時期について、公売公告処分が違法であ
るとまではいえないものの、分割納付誓約期間内の公売公告処分は、次のとおり
「不当な処分」であるとして、その全部を取り消しました。

少なくとも分割納付誓約期間内においては、請求人が納付計画どおりの自主納
付を継続する蓋然性が高く、直ちに換価をすることで、換価額の下落の回避又は
換価額の相対的な価値の維持ができたなどの徴収上有利となる事情もなく、また、
分割納付誓約期間内に各不動産が公売に付されることはないと期待した請求人と
しては、各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なく、公売によ
る請求人の事業に対する影響がより大きくなったというべきである。
これらの各事情を考慮すると、公売公告処分は、原処分庁が分割納付誓約期間
内に公売に付したという時期の判断において、その裁量権の行使が、差押財産の
換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分である。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62481

TAINSメールニュース No.664 2024.04.11 発行(社)日税連税法データベース

2024年04月11日

【1】今週のお知らせ
(1)システム改修実施のお知らせ
下記の日程でシステム改修を行うため、作業時間帯において一時的にTAIN
Sのご利用ができない場合がございます。
会員の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上
げます。
日時:2024年4月16日(火) 午後18:00 ~ 午後18:30
2024年4月16日(火) 午後22:00 ~ 午後22:30
(ユーザーサポート部長:小林 英樹)

(2)収録した判決の一部を紹介します。
【相続税】
・R04-09-22 大阪地裁 棄却、控訴 Z888-2545
貸付金債権等に係る決定処分/「理由の提示」の不備・「調査の懈怠」の有無
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62114

【所得税】
・R04-03-29 福岡高裁 棄却 Z888-2518
不服申立期間の徒過/処分に係る通知を受けた日
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62342
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
課税売上割合に準ずる割合の適用承認取消処分が全部取消し!
(令05-03-16 非公開裁決 全部取消し F0-5-390)

金融機関である請求人が、提携金融機関の現金自動預払機の利用における共通
対応課税仕入れに係る仕入控除税額の計算について、原処分庁から課税売上割合
に準ずる割合の適用の承認を受けていたところ、原処分庁が、その課税売上割合
に準ずる割合は合理的に算出されたものではないとして、承認の取消処分を行っ
たことから、これを不服とした請求人が、その取消しを求めた事案です。
審判所は、請求人は、承認の取消処分を受けた後に、新承認割合の申請をして
承認を受けているから、取消処分の取消しを求める利益はないとする原処分庁の
主張を斥け、本件準ずる割合を用いるためには、取消処分が取り消される必要が
あるから、請求人には、取消処分の取消しを求める利益があると判断しました。
また、本件準ずる割合が請求人の課税売上割合と比較して著しく高率であるこ
とから、本件準ずる割合が請求人の提携ATMに係る取引の実態を適切に反映し
ていない旨の原処分庁の主張を、次のとおり斥け、処分を取り消しました。

請求人は、金融機関であり、貸出金利息等非課税売上げが大きく、資産の譲渡
等の対価の額の合計額に占める非課税売上げの合計額の割合が高いことから、課
税売上割合が他の業種よりも低くなっている。そして、貸出金利息等の売上げは、
請求人顧客が請求人との間でATMを利用して行う取引によるものではなく、当
該売上げと請求人顧客のATMの利用との間の相関性は低いのであるから、請求
人の課税売上げが、ATM利用取引の実態を反映したものとも認められない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62355

TAINSメールニュース No.663 2024.04.04 発行(社)日税連税法データベース

2024年04月04日

【1】今週のお知らせ
TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。

建築士等の無資格者に支払った報酬の源泉徴収義務
講 師:税理士 黒住茂雄
(データベース部長 田川 哲)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
仕入税額控除の内外判定/仕入れた時の楽器の所在場所は国内と判断!
(令03-08-02 非公開裁決 一部取消し F0-5-365)

本件は、弦楽器の販売等を主たる事業としている請求人A社が、楽器の仕入金
額を課税仕入れとして消費税等の申告をしたところ、原処分庁が、仕入れた時の
楽器の所在場所が不明であり、仕入先の事務所所在地が国外であるから、楽器の
仕入れは国外において行われたものであるとして更正処分等をした事案です。
審判所は、次のように判断して、楽器に係る各取引は、いずれも国内において
行った課税仕入れに該当すると認めました。しかし、一部の取引については、帳
簿等に「課税仕入れを行った年月日」が記載されておらず、帳簿等の保存がない
課税仕入れに該当するとして、更正処分の一部を取り消しました。

請求人は、本件楽器については、仕入先から販売依頼を受け、仕入先によって
国内に持ち込まれたものを請求人が一定期間預かった上で、展示会への出展、演
奏家や同業者への貸出しを行いながら販売したものなどであり、請求人が譲り受
けた時には国内に所在していた旨主張し、証拠として請求書等の写しを当審判所
に提出している。請求書には、「Tokyo delivered」等の記載が
あるものがあり、これらの記載は、仕入先が楽器を国内に持ち込んで、請求人に
引き渡したことを示すものと認められる。その他の証拠からも、請求人の主張す
る取引形態によって取引が行われていたことが推認され、そうすると、請求人は
国内において本件楽器の引渡しを受けたと解するのが相当である。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/60963

TAINSメールニュース No.662 2024.03.28 発行(社)日税連税法データベース

2024年03月28日

【1】今週のお知らせ
TAINSの新機能のご紹介
2024年3月21日に検索トップ画面をリニューアルしました。主な新機能
は次の通りです。
〇検索トップ画面のTAINSメニュー新設
検索トップページ左上にTAINSを便利にする機能のショートカット「TA
INSメニュー」を設置しました。
〇閲覧者数ランキングの新設
TAINSメニュー内「閲覧者数ランキング」より閲覧者数の多いコンテンツ
をランキング形式で見ることができるようになりました。
タイトル部分をクリックすると、該当のコンテンツの詳細画面を開くことがで
きます。
〇簡易検索における新着情報絞込機能の新設
簡易検索へ「新着情報のみに絞る」を追加し、検索を実行した日から1か月以
内にTAINSに新規登録されたものの絞込検索ができるようになりました。
〇関連判決欄に裁判所区分を表示
検索結果とコンテンツ詳細画面の関連判決欄に裁判所区分が表示されるように
なりました。
関連判決欄のTAINSコードをクリックすると、該当のコンテンツ詳細画面
を開くことができます。
(ユーザーサポート部長:小林 英樹)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
事前確定届出給与~対象となる職務執行期間は議事録により判断!全部取消し~
(令05-02-03 非公開裁決 全部取消し F0-2-1196)

請求人は、事前確定届出給与に関する届出書を所轄税務署長に提出し、その届
出書に基づき支給した給与の額を支払った事業年度の損金に算入して法人税の申
告をしたところ、原処分庁が、当該役員給与は過去の職務執行の対価であること
から損金に算入できないとして、法人税の更正処分をしました。主な争点は、各
役員給与が当職務執行期間における職務執行の対価であるか否かです。
原処分庁は、請求人が役員賞与引当金を計上し、支給時にこれを取り崩す会計
処理をしていたことから、各役員給与に係る職務執行期間は過去のものである旨
主張しましたが、審判所は、取締役会の議事録により、次のように判断し、原処
分の全部を取り消しました。

請求人の定時株主総会と同日開催の取締役会の議事録には、各役員給与をいつ
の職務執行に対する役員給与として決定したかを明確に示す記載はないものの、
各役員給与が過去の職務執行の対価であることをうかがわせる記載もなく、むし
ろ、請求人が、各役員給与を、同日開催された定時株主総会で選任(再任)され
た各取締役を対象に、当職務執行期間における職務執行の対価と認められる毎月
の定額報酬の額と合計した上で承認していたことからすれば、本件各役員給与は
毎月の定額報酬と同様、当職務執行期間の職務執行の対価として決議されたと考
えるのが自然である。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62383

TAINSメールニュース No.661 2024.03.21 発行(社)日税連税法データベース

2024年03月21日

【1】今週のお知らせ
収録した裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・R01-06-18 裁決 棄却 F0-1-1230
雑所得の貸倒損失/同族会社に対する貸付金
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61816
・R01-06-06 裁決 棄却 F0-1-1232
必要経費/同族法人に支払った不動産管理料
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61818
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
マンション購入時に売主から値引き相当分として受けた商品券は一時所得!
(令05-01-26 非公開裁決 全部取消し F0-1-1554)

請求人が、居住用マンション(本件物件)を購入した際に売主から商品券の交
付等を受けたものの、これを総所得金額に含めずに所得税等の確定申告をしたと
ころ、原処分庁が、請求人には当該商品券の交付等を受けたことで課税されるべ
き経済的利益が生じており、当該経済的利益は雑所得に該当するとして更正処分
をしました。これに対し、請求人が、この商品券の交付等は売買価格の支払と対
価関係にあり、課税対象となる経済的利益は生じていないなどとして、その全部
の取消しを求めた事案です。審判所は、経済的利益はあると判断したうえで、所
得区分については次のように一時所得に該当すると判断しました。

請求人及び妻は、本件売主との間で、本件売買契約及び本件合意(売主の負担
とする商品券等が合意事項として記載された覚書)をし、居住用マンションであ
る本件物件を購入するとともに、本件売主から無償で本件商品券の交付等を受け
たにすぎず、本件商品券の交付等により請求人に生じた本件経済的利益は、営利
を目的とする継続的行為から生じたものとは認められないし、本件商品券の交付
等に係る給付が請求人の何らかの具体的な役務行為に関連してされたものとは認
められず、また、抽象的又は一般的な役務行為に密接に関連してされたものとも
認められない。
したがって、本件経済的利益は非継続要件及び非対価要件を満たしていること
から、一時所得に該当する。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62134

TAINSメールニュース No.660 2024.03.14 発行(社)日税連税法データベース

2024年03月14日

【1】今週のお知らせ
(1)システム改修実施のお知らせ
下記の日程でシステム改修を行うため、作業時間帯において一時的にTAIN
Sのご利用ができない場合がございます。
会員の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上
げます。

日時:2024年3月21日(木) 午後10:00 ~ 午後11:00
(ユーザーサポート部長:小林 英樹)

(2)収録した判決の一部を紹介します。
【相続税】
・R04-02-09 大阪高裁 棄却、上告、上告受理申立て
Z888-2539
貸付金債権の評価/同族会社に対する貸付金の回収可能性・「特別の事情」の
有無
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62138

【法人税】
・R04-06-30 名古屋地裁 棄却、確定 Z888-2537
源泉徴収義務と重加算税/宗教法人の住職夫婦の証券口座に入金された金員
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61990
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等          (税法データベース編集室:草間 典子)
更正処分の取消判決が出ましたが、納めた重加算税の金額が返ってきません!
(令04-02-25 東京地裁 棄却・控訴 Z888-2497)

A社とB社は、グループ法人間で行った不動産売買が架空取引であるとして、
課税庁から法人税の更正処分及び重加算税賦課決定処分等を受けました。A社ら
は、訴訟を提起し、請求は全て認められましたが、この訴訟は更正処分のみの取
消しを求めたもので、所轄税務署長は、重加算税賦課決定処分の変更決定処分等
をしませんでした。そのため、A社らが、国家賠償請求訴訟を起こした事案です。
東京地裁は、本件の重加算税が国税通則法71条1項1号の適用対象とはなら
ず、除斥期間が経過しているとした所轄税務署長の判断は、法令の解釈を誤って
いたとしましたが、国家賠償法1条1項の違法性は認めませんでした。

所轄税務署長は、前件取消訴訟の判決が確定した日から6月間、国税通則法7
1条1項1号により、重加算税の計算の基礎となる税額及び納付すべき税額をい
ずれも0円とする旨の変更決定処分をすることができたというべきである。
しかしながら、被告が援用する『国税通則法精解』のような文献等が存在し、
これらと異なる内容の文献等の存在がうかがわれないという状況の下では、所轄
税務署長が、被告の主張する国税通則法71条1項1号の解釈(判決の対象とな
った法人税と同一の事業年度の重加算税賦課決定処分については適用されない)
が誤っていると判断することが容易にできたはずであるということはできない。
(編集員からひとこと)
加算税が訴訟の対象でない場合の通法71条1項1号の解釈が示されています。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61541

TAINSメールニュース No.659 2024.03.07 発行(社)日税連税法データベース

2024年03月07日

【1】今週のお知らせ
TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。

工場で製造に使用されている冷蔵庫等の資産区分
~パン工場の冷蔵庫は器具備品か~
講 師:税理士 望月重樹
(データベース部長 田川 哲)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
賃貸借契約を解除し店舗撤退に伴い収受した損失補償金の消費税課税は?
(令06-01-10 広島地裁 全部取消し・確定 Z888-2557)

パチンコ店を営む原告は、C社との不動産賃貸借契約(原契約)を解除し、目
的不動産から退去撤退するに当たり、中古自動車販売業を営むB社が土地の利用
を希望したことから、B社と「物件移転等に関する協定書」による協定をし、B
社及びC社と「契約上の地位承継に関する覚書」による合意をしました。本件で
は、上記協定に基づき、原告がB社から収受した損失補償金2億円(本件金銭)
が、「資産の譲渡等」の対価(課税対象)に当たるか否かが争われました。
裁判所では、次のとおり判断し、更正処分等の全部を取り消しました。

原告とB社は、「原告は、原契約を解除する。B社は、C社との間で新たな賃
貸借契約を締結するとともに、原告に対して原契約を解除して店舗の撤退をする
ことに伴い生じる損失補償金として2億円を支払う。」ことを内容とする協定を
締結したこと、B社はその協定に基づいて2億円を支払ったことが認められる。
したがって、本件金銭は、原契約上の解約により同契約上の地位が消滅するこ
とに対する対価であるといえ、「資産の譲渡等」の対価とはいえない。
覚書合意は、もっぱら、原告が不動産から撤退した後もB社が原契約の賃料を
継続して支払うという法形式を採ることで、C社が賃料を得られない期間をなく
すことを目的として締結されたもので、B社が原契約上の地位に基づいて建物の
使用収益をすることは予定されていなかったのであり、本件金銭を覚書合意に基
づく原契約上の地位の譲渡(資産の譲渡等)に対する対価ということはできない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62242

研修情報

2024年03月01日

○名古屋税理士会
日 時:令和6年3月収録
会 場:受講管理システムにて放映予定
講 師:守田啓一 中臣 豊
テーマ:家族名義財産の相続財産該当性を検証する

○北陸税理士会
日 時:令和6年4月1日(月) 13:30~16:30
会 場:北陸税理士会 会館3階(石川県金沢市北安江3丁目4番6号)
講 師:守田啓一 中臣 豊
テーマ:貸付金債権の相続財産該当性を検証する
○東京税理士会
日 時:令和6年4月18日(木)15:00~17:00
会 場:Zoom
講 師:青木 丈
テーマ:国税職員向け税務調査手続 FAQ (TAINS より入手した非公開文書)の検証

TAINSメールニュース No.658 2024.02.29 発行(社)日税連税法データベース

2024年02月29日

【1】今週のお知らせ
(1)東京税理士会からご提供いただいた相談事例を収録しました。
「TAINSキーワード」に次のように入力します。
東京税理士会 ☆2024年02月収録分 ‥‥5件

(2)誤りやすい事例集(東京・大阪国税局作成)を収録いたしました。
東京・大阪国税局が実務で誤りやすいポイントをまとめた資料の収録が完了い
たしました。
「TAINSコード」に以下の各コードを入力で検索いただけます。
■東京国税局
法人消費事例東京局R050900
所得事例東京局R0512
消費事例東京局R0512

■大阪国税局
通則事例大阪局R050000
所得事例大阪局R050000
消費事例大阪局R050000
評価事例大阪局R050000
相続事例大阪局R050000
贈与事例大阪局R050000
譲渡事例大阪局R050001
譲渡事例大阪局R050002
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
評価通達6により株式を評価した相続税の更正処分が全部取消し!
(令06-01-18 東京地裁 全部取消し・控訴 Z888-2556)

原告らが、相続により取得した財産の価額を財産評価基本通達の定める方法に
より評価して相続税の申告をしたところ、S税務署長から、株式の価額について
通達評価額(1株当たり8186円)は著しく不適当と認められるとして、評価
通達6に基づく評価(1株当たり8万0373円)により、相続税の各更正処分
等を受けたことから、その取消しを求めた事案です。
裁判所は、次のとおり納税者の請求を認め、更正処分を取り消しました。

相続財産となるべき株式売却に向けた交渉が相続開始前から進行しており、相
続開始後に実際に相続開始前に合意されていた価格で売却することができ、かつ、
当該価格が通達評価額を著しく超えていたという事実をもってしても、直ちに納
税者側に不当ないし不公平な利得があるという評価をすることは相当ではなく、
評価通達6を納税者の不利に適用するには、納税者間の不均衡や不利益等を納税
者に甘受させるに足りる程度の一定の納税者側の事情が必要と解すべきである。
本件では、株式の売却手続が進行中に被相続人が死亡しているところ、その手
続が遅れたとか、本来は被相続人の生前に売却手続を完了することができたとい
った事情は認められない。よって、特段の事情はないものというほかはないから、
株式の価額については通達評価額によって評価すべきであり、各更正処分等は、
最高裁令和4年判決の示した判断枠組みに照らし、平等原則という観点から違法
である。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62178