TAINSメールニュース No.690 2024.10.03 発行(一社)日税連税法データベース

2024年10月03日

【1】今週のお知らせ
収録した判決の一部を紹介します。
【所得税】
・R06-03-13 大阪地裁 一部取消し、被告控訴 Z888-2668
行為計算否認/同族会社との不動産賃貸借契約における経済的合理性/転貸方

URL:https://app6.tains.org/search/detail/63087

【法人税】
・R05-12-07 東京地裁 認容、控訴、納税者勝訴
Z888-2653
移転価格税制/取引単位営業利益法に準ずる方法/市場の状況に関する差異
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62834
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
適格合併で繰越欠損金を引き継いだ組織再編成を租税回避行為と認定!
(令04-08-19 非公開裁決 棄却 F0-2-1201)

請求人の完全子会社A社は会社分割を行い、A社が行っていた青果物卸売事業
の資産、負債、雇用契約その他の権利義務が、分割承継法人であるB社に承継さ
れました。その後、A社を吸収合併した請求人は、A社が有していた未処理欠損
金額を引き継いだところ、課税庁から、本件組織再編成は未処理欠損金額の活用
による節税効果の享受を目的とし、法人税法132条の2の「法人税の負担を不
当に減少させる結果となる」に該当するとして更正処分等を受けた事案です。
審判所は、適格合併が行われた場合の未処理欠損金額の引継ぎを認めた法人税
法57条2項について、例えば、グループ内の他の法人への付替えと同視できる
場合にまで、未処理欠損金額の引継ぎを認めることを想定した規定ではないとし、
本件は通常は想定されない不自然な組織再編成と判断しています。

本件会社分割によって、A社が有していたほぼ全ての資産、負債、雇用契約等
がB社に移転しており、会社分割の前後で、事業内容にも変化は生じていない。
したがって、本件組織再編成は、組織再編成の前後で実態に変化を生じない組織
再編成であった。本件組織再編成は、A社の繰越欠損金を請求人に付け替えるこ
とによる税負担の減少を意図したものであって、このような意図に基づくのでな
ければ通常は想定されない不自然なものであるから、法人税法57条2項の本来
の趣旨及び目的を逸脱する態様でその適用を受けるものであり、法人税法132
条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となる」に該当する。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62179

TAINSメールニュース No.689 2024.09.26 発行(一社)日税連税法データベース

2024年09月26日

【1】今週のお知らせ
収録した裁決の一部を紹介します。
【消費税】
・R05-04-07 裁決 棄却 F0-5-399
仕入税額控除/居住用賃貸建物の取得/経過措置適用の有無
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62364

【相続税】
・R05-06-23 裁決 棄却 F0-3-886
更正の請求/通則法23条1項1号に規定する請求事由の該当性
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62325

【所得税】
・R05-04-14 裁決 棄却 F0-1-1605
先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除/適用要件
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62322
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
取引相場のない株式に評価通達6の適用なしと判断・納税者勝訴で確定!
(令06-08-28 東京高裁 控訴棄却・確定 Z888-2667)

被控訴人らが、相続により取得した株式(本件相続株式)の価額について、通
達評価額(類似業種比準価額)により相続税の申告をしたところ、処分行政庁は、
評価通達6を適用して算定報告額により更正処分等をしました。原審(Z888
-2556)は、被控訴人らの請求を認容し、通達評価額によるべきとしたこと
から、国が控訴しました。控訴審でも、通達評価額と交換価値との間の著しいか
い離が評価通達6を適用すべき特段の事情になるか否かが争われました。
東京高裁では、次のとおり判断し、国の控訴を棄却しました。

取引相場のない株式の交換価値は、本来、専門的評価を経ない限り判明し得な
いものであって、外形的事実によって取引相場のない株式の交換価値を合理的に
推測することが可能であるとは必ずしもいえない。とりわけ、M&Aが行われる
場合においては、高度な経営判断や双方の交渉の結果等により株式の売買代金が
決定されるのであって、売買代金が交換価値を反映しているとは限らない。
本件相続株式について、譲渡予定価格(10万5068円)と算定報告額(8
万0373円)が比較的近く、これらが通達評価額(8186円)と大きくかい
離しているからといって、更正処分の時点にさかのぼって、譲渡予定価格が交換
価値を反映したものであるとして、評価通達の定める方法による画一的な評価を
行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情(特段の事情)が存
在していたということにはならない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/63092

TAINSメールニュース No.688 2024.09.19 発行(一社)日税連税法データベース

2024年09月19日

【1】今週のお知らせ
(1)収録した判決の一部を紹介します。
【相続税】
・R05-03-16 大阪高裁 棄却 Z888-2609
貸付金債権等に係る決定処分/「理由の提示」の不備・「調査の懈怠」の有無
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62301
・R05-01-19 最高裁 棄却、不受理、確定 Z888-2608
上告棄却・不受理/相続財産の範囲/配当期待権の評価
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62299
【所得税】
・R05-03-24 最高裁 棄却、不受理、確定 Z888-2568
上告棄却・不受理/更正の請求/商品先物取引に係る訴訟上の和解
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61976
(税法データベース編集室)

(2)TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、左メニューの「研修サイト」をクリックすると30分研修動画が
表示され、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施
する研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講
時間を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分程度となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。

少額減価償却資産の取得価額の損金算入(一時償却)の可否
~判定単位と金額基準~
講 師:税理士 栁沢 徹
※東京税理士会・近畿税理士会の会員の方は、同会会員専用ページにログインを
してからご視聴ください。
(データベース部長 田川 哲)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
契約時覚書に居住用・事業用を問わないとされていても、用途区分は居住の用
(令05-02-20 非公開裁決 棄却 F0-5-398)

請求人が、建物等の取得に係る課税仕入れについて、課税資産の譲渡等にのみ
要するものとして、消費税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該建物の
貸付けは、消費税法別表第一第13号に規定する「住宅の貸付け」に該当し非課
税取引であるなどとして更正処分等を行った事案です。
審判所は、以下のとおり、請求人の請求を棄却しました。

住宅の貸付けが非課税取引とされている趣旨は、消費税相当額を転嫁しないこ
とにより、住宅賃借人を政策的に保護することにあると解される。そして、建物
の貸付けが非課税取引である「住宅の貸付け」に該当するか否かは、貸付けに係
る契約において、最終的にそれを借り受ける者により居住の用に供されることが
明らかにされているものであるか否かを、貸付けに係る契約書の契約条項だけで
なく、契約締結に至る経緯をはじめ、建物の種類・用途や関連する契約の定め等
の諸般の事情を総合考慮して判断するのが相当である。
請求人とA社との間で賃貸借契約書及び2者間覚書が交わされた同日、A社と
B管理会社との間に交わされた一括賃貸借契約書によれば、各建物の居住用総部
屋数各6戸を転貸借することを目的とする旨記載があり、賃貸借契約は、A社が
各建物をB社に転貸し、B社は各建物を居住用として再転貸することを前提にし
たものであることは明らかであったと認められる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62277

TAINSメールニュース No.687 2024.09.12 発行(一社)日税連税法データベース

2024年09月12日

【1】今週のお知らせ
(1)Japplic書式集検索のご紹介
「事務所運営ツール(事務所レポート、事務所パンフレットひな型)」が新た
に追加されました。ぜひご活用ください。
ご利用方法は、TAINSにログイン後、左側メニューの「日本法令 法令書
式ビジネス書式集」をクリックしてください。
(税法データベース事務局)

(2)資産税審理研修資料の作成が廃止され、後継の文書が発行されました!
資産税審理研修資料の作成が令和4年で廃止され、令和5年からは「資産税質
疑事例集」「税制改正の概要について(情報)」の2つの資料に別れました。
令和5年、令和6年の資料は、次のTAINSコードで検索いただけます。

■令和5年「資産税質疑事例集」のTAINSコード:
資産課税課情報R050600-007
■令和5年「税制改正の概要について(情報)」のTAINSコード:
資産課税課情報R050428-007

■令和6年「資産税質疑事例集」のTAINSコード:
資産課税課情報R060700-013
■令和6年「税制改正の概要について(情報)」のTAINSコード:
資産課税課情報R060425-005

(3)東海税理士会から提供いただいた「論考」を収録しました。
税区分は「その他」、情報区分は「その他文書」です。
「TAINSキーワード」に次のように入力すると検索できます。
東海税理士会 ☆2024年09月収録分  ‥‥11件
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
市からバスの運行会社に支払われる運行負担金は、消費税の課税対象に!
(令06-06-11 非公開裁決 棄却 F0-5-407)

本件は、請求人A社が、B市との間で締結したバスの運行に関する協定に基づ
き支払われる運行負担金は「赤字の補填」として支払われたものであり、課税資
産の譲渡等の対価に該当しないとして消費税等の更正の請求をしたところ、原処
分庁が、運行負担金は「役務の提供の対価」であるとして、更正をすべき理由が
ない旨の通知処分をした事案です。審判所は、運行負担金の額は、消費税法28
条1項に規定する課税資産の譲渡等の対価の額に該当すると判断しました。

B市は、バスの運行事業を主体として行っていたと認められるところ、バスを
運行するための部署を有していないため、実際のバスの運行をA社に依頼し、A
社においてB市が策定した運行計画に基づいてバスの運行業務を行うことで、B
市は、「B市地域公共交通網形成計画」の一部を実現していたものと認めるのが
相当であり、A社が、バスの運行業務を行うことにより、B市が便益を享受して
いたものと評価できる。そうすると、A社が行っていたバスの運行業務は、B市
に対する役務の提供に当たる。
バス協定書の定め(運行負担金は、経費の総額から収入等を減じた額)からす
ると、運行負担金の支払は、A社が実際に「運行計画に基づくバスの運行」を行
うことが条件となっていたと認められる。そして、A社は、実際にB市に対する
役務の提供を行っており、B市から運行負担金の支払を受けていたから、運行負
担金は、A社のB市に対する役務の提供の対価に該当する。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62901

TAINSメールニュース No.686 2024.09.05 発行(一社)日税連税法データベース

2024年09月05日

【1】今週のお知らせ
収録した裁決の一部を紹介します。
【相続税】
・R04-12-22 裁決 全部取消し F0-3-885
調査の違法性/相続財産の範囲/死因贈与による取得か生前贈与による取得か
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62728

【所得税】
・R05-02-02 裁決 棄却 F0-1-1625
「給与等」該当性/法人の代表者に対して支出した仮払金等
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61758
・R05-02-01 裁決 棄却 F0-1-1628
重加算税/内容虚偽の領収書を添付した寄附金控除
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61867
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
マンション購入時に売主から受けた「修繕積立基金」は一時所得に該当!
(令05-05-19 非公開裁決 全部取消し F0-1-1613)

請求人は、居住用マンション(本件物件)を購入した際に売主から修繕積立基
金の負担(本件費用負担)を受けましたが、これを総所得金額に含めずに所得税
等の確定申告をしました。本件は、原処分庁が、この売主の負担は経済的利益で
あり、雑所得に該当するとして更正処分等を行ったことにより争われた事案です。
審判所は、売買契約及び合意において、本件費用負担は、売買契約の目的物で
ある本件物件とは別であり、合意により外部から本件費用負担に係る経済的価値
(本件経済的利益)の流入があったというべきであり、所得税法第36条第1項
括弧書「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」が生じていると認定した上
で、所得区分については次のように判断しました。

本件経済的利益は、営利を目的とする継続的行為から生じたものとは認められ
ない。本件合意により請求人が無償で本件費用負担を受けたものであり、具体的
な役務行為に関連してされたものとは認められない。以上からすれば、本件経済
的利益は、非継続要件及び非対価要件を満たしており、一時所得に該当する。
また、本件経済的利益は、本件物件の購入において当然にその発生が予定され
ていたものではなく、請求人及び売主による売買契約及び本件合意に至る交渉の
結果、1回限りのものとして、偶発的に生じたものであったというべきであって、
一時的又は偶発的なものであるという一時所得の性質に反するものではない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62360

TAINSメールニュース No.685 2024.08.29 発行(一社)日税連税法データベース

2024年08月29日

【1】今週のお知らせ
(1)大阪国税局の課税第二情報を「その他」「行政文書」に収録いたしました。
「審理事項非違事例ニュース」などの行政文書です。ご活用ください。
「TAINSキーワード」に次のように入力すると検索できます。
大阪国税局 ☆2024年08月収録分 ‥‥10件

(2)収録した裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・R05-04-14 裁決 全部取消し F0-1-1612
所得区分/マンション購入時に売主から交付を受けた商品券等
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62359
・R05-05-19 裁決 全部取消し F0-1-1613
所得区分/マンション購入時に売主が負担した修繕積立基金
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62360
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
預託金制ゴルフ会員権の預託金返還請求権に係る貸倒損失の損金算入時期は?
(令05-01-27 東京地裁 棄却・控訴 Z888-2625)

原告は、A社経営のゴルフ場のゴルフ会員権を3000万円(入会金500万
円、預託金2500万円)で取得していましたが、A社の民事再生法による再生
計画認可の決定により預託金債権の97.5%が切り捨てられました。この切り
捨てられた預託金返還請求権に係る貸倒損失の会計処理を本件カントリークラブ
を退会した事業年度に損金の額に算入して申告したところ、課税庁から支払免除
の効力が生じた事業年度の損金の額に算入すべきであるとして指摘を受けました。
本件の争点は、本件預託金債権の貸倒損失を損金の額として算入すべき時期に
ついてです。東京地裁は、次のように判示し、原告の主張を棄却しました。なお、
原告は控訴しましたが、控訴審(東京高裁・令和5年9月14日判決・TAIN
S未収録)においても、原判決と同旨で控訴棄却になっています。

本件預託金債権については、原告が退会した日に初めて全部が金銭債権として
顕在化したのではなく、そのうち元本金額の97.5%に相当する部分(本件損
失額)については、確定した認可決定によって認可された再生計画に従い、支払
免除の効力が生じた日に、顕在化した上で切り捨てられて消滅したと認められる。
そうすると、同部分に係る損失である本件損失額については、同日を含む事業年
度の損金の額に算入されるべきものであるということができる。したがって、原
告が主張するように、本件損失額を損金の額に算入すべき時期を、原告が本件カ
ントリークラブを退会した日を含む本件事業年度であるということはできない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62546

TAINSメールニュース No.684 2024.08.22 発行(一社)日税連税法データベース

2024年08月22日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。

土地建物一括譲渡の場合の対価の区分
~売買契約書における区分は「合理的」といえるか~
講 師:税理士 上西 由香
※東京税理士会・近畿税理士会の会員の方は、同会会員専用ページにログインを
してからご視聴ください。
(データベース部長 田川 哲)
(2)国税庁の下記「行政文書」(令和6年4月)を収録しました。
・調査手続等に関するFAQ・実施例(シナリオ)【調査課関係】
(令和6年4月 国税庁調査課)
TAINSコード 税務調査手続等FAQR060400調査
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62889

・資産課税課情報 第5号 「税制改正の概要について(情報)」
令和6年度税制改正の概要
(令和6年4月25日 国税庁 課税部 資産課税課)
TAINSコード 資産課税課情報R060425-005
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62890
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
交際費等で継続的取引関係などから業務関連性を認め、処分を一部取消しに!
(令05-05-12 東京地裁 一部認容・確定 Z888-2553)

この事案は、代表者個人名義のクレジットカードで支払った飲食代金の一部に
ついて交際費等に該当しないと税務調査で指摘を受けたA社らが、修正申告書を
提出した後、更正の請求を行った事案です。
東京地裁は、内国法人の所得金額の計算上、損金の額に算入することができる
支出は、当該法人の業務に関連するものであって、その遂行上必要であると認め
られるものでなければならないとし、業務関連性の点から写真家丙との飲食代金
については交際費等に該当すると認め、処分を一部取り消しています。

丙と原告らは継続的に取引関係にあるものであり、互いに業務を発注するなど
の実績があることに照らせば、丙を相手方に含む支出については、その親睦を密
にして取引関係の円滑な進行を図るために必要なものであるということができる
から、原告らの業務と具体的に関連性があると認められる。
交際費等の該当性を検討するに当たり、法人が支出した個別の飲食等に係る接
待交際と、その後、当該法人と接待交際の相手方との間で、行われた個別的具体
的な取引・契約等との厳密な結び付きが認められない限り、業務との関連性が認
められないと解することは、中小法人損金算入特例において年800万円の定額
控除限度額が認められていることや、現実に行われている企業の営業・取引活動
の実態にそぐわないものであるといわざるを得ないというべきであり、業務との
関連性は上記程度の結び付きで足りると解するのが相当である。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62265

TAINSメールニュース No.683 2024.08.15 発行(一社)日税連税法データベース

2024年08月15日

【1】今週のお知らせ
(1)税理士会から提供いただいた「相談事例」を収録しました。
「TAINSキーワード」に次のように入力すると検索できます。
千葉県税理士会 ☆2024年08月収録分  ‥‥22件
南九州税理士会 ☆2024年08月収録分  ‥‥10件

(2)収録した判決の一部を紹介します。
【法人税】
・R05-05-12 東京地裁 一部認容、確定 Z888-2553
飲食代金の交際費等該当性/中小法人損金算入特例における業務関連性の程度
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62265
・R05-07-20 東京地裁 認容、確定、納税者勝訴
Z888-2594
非適格分社型分割における承継資産負債の時価/DCF法による価値算定の合
理性
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62049
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
相続税の申告期限までに解散・清算した同族会社に対する貸付金の評価は?
(令05-08-31 東京地裁 棄却・確定 Z888-2607)

不動賃貸業を営むA社は、甲の相続開始(平成29年12月)後、平成30年
7月に解散、同年10月に清算手続が結了しました。その過程で、所有不動産を
売却し、甲からの借入金のうち1405万円を甲の一切の財産を相続した原告に
返済をしました。原告は、甲のA社に対する貸付金(本件債権)について、評価
通達205により1405万円と評価して相続税の申告をしましたが、処分行政
庁は、評価通達204により6036万円と評価して更正処分等を行いました。
東京地裁では、次のとおり判断し、本件債権について、評価通達205の「そ
の回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に当たるとはいえない
として、相続開始時の元本価額6036万円と評価すべきであるとしました。

A社は、各事業年度において、ほぼ債務超過の状況ではあったが、その債務が
無利息かつ返済期限のないものであった上、相続開始時点の債権者は原告(A社
の代表取締役)であり、直ちに返済を要するものではないことは明らかである。
一般的に不動産賃貸業は、その継続について格別の知識や能力を要するものと
いうことはできず、甲の死亡によって事業の継続が困難になったということはで
きない。そして、相続開始日後もA社を存続させ、将来にわたって生じ得る経常
利益を本件債権の返済に充てることは可能であったものと解すべきであって、A
社の解散及び清算は、損害のこれ以上の拡大を防ぐためにやむなく行われたとい
うよりは、飽くまでもA社における経営上の判断の結果によるものと認められる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62346

TAINSメールニュース No.682 2024.08.08 発行(一社)日税連税法データベース

2024年08月08日

【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・R05-08-01 東京地裁 棄却 Z888-2584
決定処分等及び裁決の手続の適法性
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62295

【消費税】
・R06-06-11 裁決 棄却 F0-5-407
課税範囲/バスの運行負担金
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62901
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
障害福祉サービスの生産活動売上は課税でも工賃は課税仕入れではない!
(令06-07-18 名古屋地裁 棄却 Z888-2624)

社会福祉法人である原告が、消費税等に係る確定申告について、原告が提供す
る各福祉サービスを利用して生産活動に従事する利用者に対し支払った工賃を課
税仕入れに係る支払対価の額に計上すべきであるとして、更正の請求をしたとこ
ろ、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受け、その取消しを求める事案です。
裁判所は、以下のとおり、原告の請求を棄却しました。

各事業所の利用者は、原告との間で、請負等の契約により生産活動に従事し、
原告に役務を提供した反対給付として工賃を受領しているのではなく、原告によ
る福祉サービスの一環として、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除
した残額(剰余金)の分配として工賃を受領していると認めるのが相当である。
工賃は生産活動による成果物の販売代金に転嫁可能な程度に生産活動への従事
と結びついているとはいえないから、消費税法30条1項に規定する課税仕入れ
に係る支払対価に該当すると認めることはできない。
障害福祉事業における利用者の生産活動としての作業に基づいて行われる資産
の譲渡等については、非課税とされる社会福祉事業の範囲から除かれているのは、
購入者にとって仕入税額控除の対象とならず、事業者が取引から排除される状況
を考慮した社会政策的配慮からであり、工賃も収入に対応する原価として課税取
引として取り扱うのが筋である旨の原告の主張は採用できない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62952

TAINSメールニュース No.681 2024.08.01 発行(一社)日税連税法データベース

2024年08月01日

【1】今週のお知らせ
収録した判決の一部を紹介します。
【所得税】
・R05-07-07 最高裁 棄却、不受理、確定 Z888-2579
上告棄却・不受理/不当利得返還請求(修正申告の無効)/発行会社への株式
譲渡(みなし配当)
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62317
・R05-01-27 最高裁 棄却、確定 Z888-2569
上告棄却/給与所得の収入金額/給与等の一部が差し押えられた場合
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61980
・R05-05-10 最高裁 棄却、確定 Z888-2583
上告棄却/給与所得の収入金額/滞納国税に係る差押相当額を控除することの
可否
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62294
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
米国で組成したLLPは外国法人、その利益は雑所得と認定された事例
(令05-03-01 非公開裁決 一部取消し F0-1-1587)

法律事務所を営む請求人は、米国において組成したLLP(リミテッド・ライ
アビリティー・パートナーシップ)の事業活動から生じた所得を含めずに申告し
たところ、原処分庁から、本件LLPは任意組合等に該当し、パス・スルー課税
が適用されるとして、その所得を事業所得とする更正処分を受けました。
これに対し、請求人は、本件LLPは外国法人に該当し、その利益は配当所得
になる、また、請求人は所得税法上の非永住者に該当すると主張しています。
国税不服審判所は、本件LLPは、外国法人に該当するが、その利益は配当所
得ではなく雑所得となる。そして、その所得は、非永住者以外の居住者として得
た所得として、その全てが所得税等の課税対象になると判断しました。

請求人は国内に住所を有する居住者であり、過去10年以内において国内に住
所等を有していた期間の合計が5年を超えているから、非永住者には該当しない。
本件LLPは、設立根拠法令である州PS法等の定めによると、自ら法律行為
の当事者となることができ、かつ、その法律効果がLLPに帰属するものという
ことができるから、権利義務の帰属主体と認められ、我が国の租税法上の法人に
該当し、所得税法2条1項7号等に規定する外国法人に該当する。
本件LLPとパートナーとの間において、LLP契約に定める分配は省略され
ていたのであるから、当該利益は配当所得には該当しない。当該利益の額は、純
利益と資本割合によって自動的に定まるものであるから、雑所得に該当する。
URL: https://app6.tains.org/search/detail/62150