TAINSメールニュース No.443 2019.12.26 発行(社)日税連税法データベース

2019年12月26日

【1】今週のお知らせ
(1)次号メールニュースは来年1月9日に配信します。
次週1月2日は休日のため、メールニュース444号は1月9日に配信します。

(2)公表裁決事例を収録中です。
先週より、国税不服審判所のホームページに掲載された、平成31年4月から
6月分の公表裁決事例の収録作業を行っております。

(3)収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・R01-10-30 東京地裁 一部取消し Z888-2277
馬券払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費性

【法人税】
・H30-07-02 裁決 棄却 F0-2-876
タックスヘイブン対策税制/所得に対して課される租税の額
・H21-11-20 裁決 却下、棄却 F0-2-879
収益事業該当性/NPO法人の行う福祉有償運送事業、施設の管理事業等

【相続税】
・H30-07-25 裁決 棄却 F0-3-642
土地の評価/「広大地」該当性・準工業地域に所在する土地
(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
収益事業該当性/社会福祉法人が運営する有料老人ホーム
(平31-03-06 福岡地裁 棄却 Z888-2274)

原告が運営する有料老人ホームの運営事業が収益事業に当たるとして、法人税
等の更正処分等を受けたのに対し、原告が、本件事業は収益事業に該当せず、非
課税である旨主張して、その取消しを求める事案で、裁判所は次のとおり、本件
事業は、社会通念上、下宿営業に該当するとして、原告の請求を棄却しました。

本件事業の内容及び態様は、原告が、入居者に対し、建物中にある個室を寝食
の場として提供することによって、その対価を得るとともに、食事等のサービス
を提供することによって、その対価を得るものであると認められる。
本件事業は、提供される居室及び共用施設並びに各種サービスの内容や、イン
ターネット等を利用した広告等の点において、公益法人等以外の法人が一般的に
行う事業と基本的に異なるものではなく、居室の大多数は、県指導指針において
必須とはされていない浴室や便所、台所などが備えられており、ペットの飼育も
可能であるなど、一般的な賃貸住宅と同程度の機能を備えたものであるし、温泉
施設、サウナ、エステルーム、バーラウンジなどの共用施設が利用できることか
らすると、原告の行っている本件事業は、公益法人等以外の法人の一般的に行う
事業と競合するものということができる。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2274

TAINSメールニュース No.442 2019.12.19 発行(社)日税連税法データベース

2019年12月19日

【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【相続税】
・H30-07-26 裁決 棄却 F0-3-641
土地の評価/2棟の貸家敷地の評価単位・「広大地」該当性/未払金債務の存

・H30-07-02 裁決 棄却 F0-3-640
貸付金及び未収入金の評価/同族会社に対する貸付金等の回収可能性

【消費税】
・H31-02-20 東京地裁 棄却 Z888-2254
還付申告/香港へ輸出したとする商品購入の課税仕入れ該当性

【他国税】
・H29-12-11 裁決 棄却 F0-8-198
納付義務の承継/公売公告処分の違法性/熟慮期間経過後の相続放棄
・H29-12-08 裁決 却下 F0-8-197
差押処分/不服申立適格・処分の不存在
(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
多国間を移動する役員の生活の本拠/居住者に該当せず(納税者勝訴)
(令和元年5月30日 東京地裁 全部取消し 控訴 Z888-2256)

本件は、複数の内国法人と海外法人の代表者である原告が「居住者」に該当す
るか否かを争点とする事例です。東京地裁は、原告の生活の本拠が日本にあった
と認めることはできないから「居住者」には該当しないとして、処分の全部を取
り消しました。なお、東京高裁(令和元年11月27日・TAINS未収録)も、
地裁と同様に「居住者」には該当しないと判断しています。

客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かは、滞在日数、住居、職業、
生計を一にする配偶者等の居所等を総合的に考慮して判断するのが相当である。
原告は、各年を通じて、海外法人の業務に従事し、そのために相応の日数にお
いてシンガポールに滞在し、また世界的なハブ空港があるシンガポールを主な拠
点としてインドネシアや中国その他の国への渡航を繰り返しており、これらの滞
在日数を合わせると年間の約4割に上っていたことなどからすれば、原告の職業
活動はシンガポールを本拠として行われていたものと認められ、他方、日本国内
における滞在日数とシンガポールにおける滞在日数とに有意な差を認めることは
できない。原告と妻は、原告の職業活動に適応した生活の在り方として、妻らの
生活の本拠は日本の居宅のままとし、原告が帰国したときに休暇も兼ねて妻らと
会うという方法を選択したものということができるから、生計を一にする妻らが
国内に居住していたことは、原告の生活の本拠が日本国内にあったことを積極的
に基礎付けるものとはいえない。これらを総合すると、原告の生活の本拠が日本
にあったと認めることはできない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2256

TAINSメールニュース No.441 2019.12.12 発行(社)日税連税法データベース

2019年12月12日

【1】今週のお知らせ
調査対応、経験はもちろんですが、法令と判例に基づいて!〔行政文書の紹介〕
(TAINSコード:調査における法律的知識H170600-P01)
税務調査の現場では、どこまで調査官に権限があるのか?どこまでの調査が許
されるのか?といった場面が少なくありません。これは調査官としてもそうなの
でしょう。
この資料は東京国税局が若手職員向けに調査に際して注意するべき点をわかり
やすくマンガで(漫画になっているかはさておき)、解説してくれているもので、
この資料も情報公開法によって当社団が請求し開示されたものです。
調査の各場面のやりとりについて、「当局の見解」と「納税者の見解」(納税
者の見解は黒塗りされていてわかりませんが、推して知るべし)の対比、そして
それに関する判例が掲載されています。
任意調査における「明示の承諾」の原則と「黙示の承諾」と扱って良いかどう
かの判断など、興味深いものが多々あります(P01のコラム)。古い資料です
ので、事前通知などの手続規定は改正されていますが、プライベートの扱いに特
に当局が慎重になっているのが窺い知れる資料です。
この資料は、TAINSコード:調査における法律的知識H170600-P
01~P04までに分割されています。「P」が付いていない資料は当社団でテ
キスト化したものです。
このようにインターネット等で公表されていない文書が多数収録されています
ので、ぜひ一度行政文書を検索することをお勧めします。
≪検索方法≫【キーワード】調査における法律的知識
※検索トップ「フリーワード」に入力してください。
(要点メンバー:毛利 修平)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
社員税理士の事業所得に係る必要経費~業務委託費及び諸会費
(平30-05-16 非公開裁決 棄却 F0-1-969)

本件は、公認会計士及び税理士である請求人が、所得税等の確定申告をしたと
ころ、原処分庁が、事業所得の必要経費に算入した費用又は支出の一部は、必要
経費に算入されないなどとして更正処分等をした事案です。請求人は、税理士法
人の社員税理士及び同族会社A社の取締役であり、事業としての業務報酬は、税
理士法人からの記帳代行受託料及び公認会計士としての政治資金監査報酬です。
審判所は、業務委託費と諸会費については次のとおり判断しています。

請求人がA社に支払った業務委託費が、請求人の業務報酬等の金額に比して過
大であること、A社が配偶者の100%出資する会社であること等を併せて考え
れば、請求人は、A社に対し、業務委託費に相当する金額を移転する目的で業務
委託契約の外形を作出したものとみるべきである。
諸会費のうち、税理士会に係る会費は、社員税理士は税理士法人とは別に、社
員税理士として、税理士会費を負担する義務がある旨定められているところ、税
理士法第48条の14は、税理士法人の社員は自己のために税理士法人の業務の
範囲に属する業務を行ってはならない旨規定しており、請求人が税理士法人の社
員税理士としての立場で支出したものと認められるから、業務報酬等を得るため
に直接に要した費用とは認められず、また、本件事業と直接の関係があり、かつ、
本件事業の遂行上必要な支出であるとも認められない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-969

TAINSメールニュース No.440 2019.12.5 発行(社)日税連税法データベース

2019年12月05日

【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・H30-11-22 名古屋高裁 棄却 Z888-2259
先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除/連年提出要件

【法人税】
・H31-01-30 東京高裁 棄却、上告及び上告受理申立て
Z888-2262
源泉所得税/重加算税/退職給付資産に計上された理事長の預金口座へ送金し
た金員

【他国税】
・H30-06-12 裁決 棄却 F0-8-216
財産の換価/最高価申込者決定処分の適法性
・H30-03-07 裁決 棄却 F0-8-214
差押処分/滞納国税の徴収権の消滅時効
・H30-02-27 裁決 棄却 F0-8-215
財産の換価/売却決定処分の適法性
(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
更正の請求による税額控除の適用の可否~当初申告に控除明細書の添付なし~
(平30-10-19 札幌地裁 棄却 Z888-2257)

原告が、確定申告した平成27年分の所得税等について、雇用者給与等支給額
が増加した場合の所得税額の特別控除の制度(措置法10条の5の3第1項)の
適用がされておらず、控除されるべき額を過大に納付したものとして、更正の請
求をしたところ、更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたことから、当該通
知処分の取消しを求める事案です。確定申告書に控除明細書を添付することなく
確定申告がされた場合において、更正の請求により本件特別控除が適用されるか
が争点ですが、裁判所は次のように判断し、原告の主張を退けました。

措置法10条の5の3第4項は、本件特別控除が適用される場合を「確定申告
書、修正申告書又は更正請求書に〔略〕控除の対象となる雇用者給与等支給増加
額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付が
ある場合」に限定し、これを受けて、「同項の規定により控除される金額は、当
該確定申告書に添付された書類に記載された雇用者給与等支給増加額を基礎とし
て計算した金額に限る」と規定しており、本件特別控除が適用されるためには、
確定申告書に控除明細書が添付されていなければならないことになる。
原告は、必ずしも確定申告書に控除明細書を添付することが要求されているも
のではないと主張するが、更正請求書のみに控除明細書を添付した場合にまで本
件特別控除が適用されることを認めた規定ではないというべきである。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2257

TAINSメールニュース No.439 2019.11.28 発行(社)日税連税法データベース

2019年11月28日

【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【法人税】
・H30-12-20 東京地裁 棄却、控訴 Z888-2269
源泉徴収義務/建築士等の資格を有しない個人に支払った数量積算業務に対す
る報酬
・H30-07-10 福岡地裁 却下、棄却 Z888-2266
棚卸資産の評価額/最終仕入原価法/法令28条1項1号ホ「種類等の異なる
ごとに区別」

【消費税】
・平30-09-04 裁決 棄却 F0-5-238
内外判定/ツアー客向け商品販売を行う輸出物品販売場が受ける役務の提供

【他国税】
・H31-02-06 東京地裁 棄却、控訴 Z999-7214
酒税法/特別税率適用の可否/酒税法23条2項3号「その他の発泡性酒類」
該当性
・H30-08-08 裁決 却下 F0-8-217
不服審査/審査請求書の記載不備
・H30-05-08 裁決 棄却 F0-8-228
第二次納税義務/債務免除/債務の返済に充てられた債務免除益の存否
(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:小菅 貴子)
土地の取得費/利用形態の変更と全国市街地価格指数等の変動率による推定
(平30-05-07 非公開裁決 棄却 F0-1-987)
本件は、請求人が、土地の取得費を譲渡に係る収入金額の100分の5に相当
する金額であるとして所得税等の確定申告をした後、収入金額に全国市街地価格
指数により求めた割合(変動率)を乗じることによって算出した昭和38年当時
の推定価額と近隣する5地点の路線価の平均倍率(変動率)から求めた昭和38
年当時の推定路線価を基に算出した価額との平均額をもって取得費とするのが相
当であるとして更正の請求をした事案です。審判所の判断は次のとおりです。

全国市街地価格指数は「宅地価格」の推移を表す指標であり、また、路線価は、
原則として「宅地」の評価に用いるものであるから、これらの指数又は金額の変
動率をもって、本件土地のように農地から昭和38年以後に宅地へと利用形態の
変更があった土地の昭和38年当時の価格を推定すること自体、その前提を欠く
ものといわざるを得ない。その点はおくとしても、請求人推定額の算定の基礎と
する全国市街地価格指数は、個別の宅地価格の推移を推し量る指標として適当な
ものとはいい難い。また、本件土地の存する地域と、請求人が本件土地の近隣か
ら任意に抽出したとする5地点が存する地域は、昭和38年当時において、それ
ぞれの地域における土地の利用形態や価格水準などの経済的な事情は明らかに異
なるものであったことが伺われ、このように状況の異なる地域の路線価の変動率
をもって、昭和38年当時路線価の設定のなかった本件土地が接面する路線の路
線価を推定するという方法は、合理的なものであるとはいい難い。
≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-1-987

TAINSメールニュース No.438 2019.11.21 発行(社)日税連税法データベース

2019年11月21日

【1】今週のお知らせ
判決速報を収録しました。
判決速報1495から1500までの計6件を収録しました。一部を下記に紹
介します。
・判決速報1497
X(原告会社)が行った特定資本関係5年超要件を満たした適格合併(法人
税法57条3項の支配関係発生後5年超継続して支配関係がある適格合併)に
ついて、法人税法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果
となると認められるもの」に当たるとして、被合併法人から引き継いだ未処理
欠損金額の損金算入を否認することができるとされた事例
・判決速報1499
X(原告会社)による本件借入れについては、専ら経済的、実質的見地にお
いて、純粋経済人として不自然、不合理なものとはいえず、経済的合理性を欠
くものと認めることはできないとされた事例
・判決速報1500
贈与の有効性が裁判で争われていた等の事情をもって、国税通則法66条1
項ただし書が定めた「正当な理由があると認められる場合」に当たるとは認め
られないとされた事例
≪検索方法≫ 【キーワード】 判決速報 ☆2019年11月収録分 →6件
(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
公的年金等該当性/フランスの社会保険制度に基づき支給を受けた年金
(平30-05-15 非公開裁決 棄却 F0-1-940)

本件は、審査請求人がフランス共和国の社会保険制度に基づいて支給を受けた
年金について、原処分庁から、所得税法35条3項3号に規定する公的年金等に
該当するとして所得税等の各更正処分を受けた事案です。請求人は、平成4年か
ら約4年間フランスに滞在し、フランス国内での勤務経験がありました。
審判所は、下記のように本件年金は公的年金等に該当すると判断し、ユーロ建
てで入金された年金の収入金額の円換算は、年金入金日の電信売買相場の仲値に
よるとしています。

いわゆる外国年金については、外国の法令に基づく保険又は共済に関する制度
で所得税法31条1号及び2号に規定する法律の規定による社会保険又は共済に
関する制度に類するものに基づいて支給された年金である場合には、同法35条
3項3号に規定する公的年金等に該当することとなる。
本件年金は、いずれも、フランスの退職年金制度のうちの一般制度又は補足制
度に基づいて支給されたものと認めるのが相当であり、これらの退職年金制度は、
いずれも民間の被用者を対象とし、法律でその加入が義務付けられ、賦課方式に
よる財政運営を基礎とする退職年金であるという点において、所得税法31条1
号に規定する厚生年金保険法の規定による社会保険又は共済に関する制度に類す
るものと評価することができる。本件年金は、公的年金等に該当する。
《検索方法》 【キーワード】 F0-1-940

TAINSメールニュース No.437 2019.11.14 発行(社)日税連税法データベース

2019年11月14日

【1】今週のお知らせ
TAINSに収録されている行政文書のご案内 〔行政文書の紹介〕
給与所得か事業所得かの区分は東京国税局作成のチェックシートを参考に!
(TAINSコード:法人課税課速報H150700-28)
役務の提供の対価として支払った費用が外注費になるか、給与になるかは大きな
問題です。というのは、外注費の場合には、消費税において課税仕入れとして仕
入税額控除の対象になる上に所得税を源泉徴収する必要がないのに対し、給与の
場合には、課税仕入れにならない上に源泉徴収義務が生ずるからです。この問題
は受領側からいうと、役務提供の対価が事業所得になるか、給与所得かという問
題だということができます。
今回ご紹介する行政文書は、この問題に対する、「【給与所得と事業所得との区
分 給与?それとも外注費?】東京国税局平成15年7月第28号」という法人
課税課速報です。
これはインターネット等で公開されたものではなく、情報公開法によって当社団
が請求し開示されたものです。
本情報では、給与と事業の区分について詳細に検討した上で、「給与所得及び事
業所得の判定検討表」というチェックシートを提示しています。また、参考とし
て、京都地裁昭和56年3月6日判決(Z116-4756)、東京地裁昭和4
3年4月25日判決(Z052-1721)、最高裁昭和56年4月24日判決
(Z117-4787)に対する国税局の解説が載っている点も興味深いです。
筆者はこの文書をずっと探していましたが、TAINSで見つけることができま
した。
このようにインターネット等で公表されていない文書が多数収録されていますの
で、ぜひ一度行政文書を検索することをお勧めいたします。
≪検索方法≫【キーワード】H150700-28
※検索トップ「フリーワード」に全角で入力してください。
(要点メンバー:芹澤 光春)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
賃貸用不動産の評価~節税目的で取得した不動産に評価通達6を適用~
(令01-08-27 東京地裁 棄却 Z888-2271)

被相続人は、節税目的で相続開始前3年5か月前及び2年6か月前に、銀行か
らの借入金で、2棟の賃貸用不動産を購入しました。この事案は、相続人である
原告らが、各不動産を評価通達に基づき評価をして相続税の申告をしたところ、
処分行政庁が、評価通達の定めにより評価することが著しく不適当(評価通達6)
であるとして、鑑定評価額により更正処分等を行ったことから争われたものです。
裁判所では、次のとおり判断し、原告らの請求を棄却しました。

通達評価額は、それぞれ、鑑定評価額の約4分の1の額にとどまっていること
などから、通達評価額が相続開始時における各不動産の客観的な交換価値を示し
ていることについては、相応の疑義があるといわざるを得ない。
本件における事実関係の下では、本件相続における各不動産については、評価
通達の定める評価方法を形式的に全ての納税者に係る全ての財産の価額の評価に
おいて用いるという形式的な平等を貫くと、各不動産の購入及び各借入れに相当
する行為を行わなかった他の納税者との間で、かえって租税負担の実質的な公平
を著しく害することが明らかというべきであり、評価通達の定める評価方法以外
の評価方法によって評価することが許されるというべきである。
鑑定評価の適正さに疑いを差し挟む点が特段見当たらないことに照らせば、各
不動産の相続税法22条に規定する時価は、鑑定評価額であると認められる。
≪検索方法≫【キーワード】 Z888-2271

TAINSメールニュース No.436 2019.11.7 発行(社)日税連税法データベース

2019年11月07日

【1】今週のお知らせ
収録した判決の一部を紹介します。
【法人税】
・H30-10-31 福岡高裁 棄却、確定 Z888-2264
収用/圧縮記帳の対象となる対価補償金/収用による土地の分筆と建物移転費

【他国税】
・H31-04-17 横浜地裁 却下、棄却、確定 Z999-7215
更正の請求/通令6条1項3号「帳簿書類の押収その他やむを得ない事情」の
有無
・H31-02-15 東京地裁 棄却、控訴 Z999-7213
酒税法/納税義務者/他の製造者から移入した酒類を容器詰め後に再移出した

【その他】
・H30-03-16 東京地裁 有罪、懲役3年、執行猶予5年
Z999-9157
刑事事件/破産法違反/重要文化財の隠匿・破産管財人に対する虚偽説明
・H16-10-07 東京地裁 本訴棄却、反訴認容、控訴
Z999-5400
不動産売買契約の有効性/通謀虚偽表示の有無・新会社に対する不動産の譲渡

(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
行為計算否認/組織再編に伴う同族会社からの借入
(R01-06-27 東京地裁 全部取消し・控訴 Z888-2250)

原告が、同族会社である外国法人からの借入れに係る支払利息の額を損金の額
に算入して申告したところ、麻布税務署長から、同支払利息の損金算入は法人税
の負担を不当に減少させるものであるとして、法人税法132条1項に基づき、
各更正処分等を受けた事案で、裁判所はその処分を全部取り消しました。

原告による借入れが行われる原因となった、ヴィヴェンディ・グループが設定
した8つの目的は、日本の関連会社に係る資本関係の整理や、同グループの財務
態勢の強化等の観点からいずれも経済的合理性を有するものであったと認められ
、本件再編成等スキームに基づく組織再編取引等は、これらの目的を達成する手
段として相当であったと認められる。そして、これらの目的の達成は原告にとっ
ても経済的利益をもたらすものであったといえる一方、本件借入れが原告に不当
な経済的不利益をもたらすものであったとはいえない。
そうすると、原告による本件借入れについては、法人税の負担が減少するとい
う利益を除けばこれによって得られる経済的利益がおよそないとか、あるいは、
これを行う必要性を全く欠いているなどということはできないから、専ら経済的
、実質的見地において、純粋経済人として不自然、不合理なものとはいえず、経
済的合理性を欠くものと認めることはできない。
≪検索方法≫【キーワード】 Z888-2250

TAINSメールニュース No.435 2019.10.31 発行(社)日税連税法データベース

2019年10月31日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINSだより
TAINSだより(2019年秋号)を掲載いたしました。検索トップページ
の右下「TAINSだより」をクリックすると、閲覧できます。
(事業部長:上田 健一)

(2)収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【法人税】
・R01-06-27 東京地裁 全部取消し、控訴 Z888-2250
ユニバーサルミュージック事件/行為計算否認/組織再編に伴う同族会社から
の借入
・H31-01-25 東京地裁 却下、棄却 Z888-2261
更正の請求/所得拡大促進税制/雇用者給与等支給額の誤記載の訂正

【相続税】
・H30-03-13 非公開裁決 棄却 F0-3-601
無申告加算税/期限後申告の無効
・H30-03-07 非公開裁決 棄却 F0-3-602
無申告加算税/「正当な理由」の有無/贈与を雑所得と誤解して申告をした場

・S63-12-22 非公開裁決 一部取消し F0-3-603
債務控除/連帯債務・未納公租公課
(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
市民税等の延滞金減免申請/棄却処分通知書の理由不備につき「不当」と認定
(平30-03-14 裁決 認容 F0-7-009)

本件は、請求人が平成22年以後3年間の市民税等の延滞金について減免申請
をしたところ、処分庁が棄却の処分をしたことから、請求人が、減免事由を具備
しており、処分通知書にも理由付記の不備があるとして、その取消しを求めた事
案です。審査庁は、減免事由は認められないが、理由の付記については、違法で
はないが、不当であるとして、棄却処分を取り消しました。

請求人は、平成22年1月の事業廃止から再就職により給与収入を得るまでの
約2か月間は困窮状況に置かれたことが窺われるものの、この期間に対応する延
滞金は存在せず、その後、生活の基盤を回復していることが認められ、さいたま
市市税規則に定める「やむを得ない事情」があったと認めることはできない。
さいたま市には処分等を行うに当たって理由の提示を義務付ける条例等が存在
しない以上、通知書にその処分理由が具体的に付記されていなかったとしても、
そのことによって本件処分が直ちに違法であるということはできないが、延滞金
の減免処分に係る市長の裁量権の範囲はなお相当に広いことを踏まえると、処分
に当たっては十分な理由提示を行うことが求められるものといえる。しかし、本
件処分に係る通知書の理由の付記は、申請者に対する配慮を著しく欠いた不当な
ものというだけでなく、処分庁の判断の慎重・合理性を欠く、極めて不十分なも
のであったと言わざるを得ない。
≪検索方法≫ 【キーワード】 F0-7-009

TAINSメールニュース No.434 2019.10.24 発行(社)日税連税法データベース

2019年10月24日

【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・H30-11-27 福岡高裁 棄却、確定 Z888-2265
所得区分/債権譲受会社との合意に基づく債務免除益/不動産貸付業
・H30-05-15 裁決 棄却 F0-1-938
重加算税/学習塾経営業及び不動産賃貸業
・H30-04-20 裁決 棄却 F0-1-985
雑損控除/「横領損失」該当性
・H30-04-10 裁決 棄却 F0-1-943
海外法人から受領する金員の所得区分/税務相談と信義則

【法人税】
・H31-03-14 東京高裁 棄却、上告 Z888-2252
青色取消しと国家賠償請求/みなし解散の登記による2事業年度連続の期限後
申告
・H30-07-18 裁決 棄却 F0-2-874
損金の額/繰越欠損金と青色申告承認申請書の提出

【相続税】
・R01-05-14 東京地裁 棄却 Z888-2258
株式評価/類似業種比準方式/クレーン車売却益の「非経常的な利益」該当性
(税法データベース事務局)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
組織再編成に係る行為計算否認~特定資本関係5年超要件を満たす適格合併~
(令01-06-27 東京地裁 棄却・控訴 Z888-2251)

本件は、自動車部品等の製造・販売を行う原告が、その完全子会社(旧子会社
)を被合併法人とする適格合併を行い、その子会社が有していた未処理欠損金額
を法人税法57条2項の適用により原告の欠損金額とみなして損金に算入して法
人税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、同法132条の2の適用により
更正処分等を受けたことから、これらの一部の取消しを求めた事案です。
争点は、同法132条の2による未処理欠損金額の損金算入の否認が適法であ
るか否かですが、東京地裁は、平成28年2月29日最高裁判例(Z266-1
2813・ヤフー事件)を参照して検討した上で、次のとおり判断しました。

本件合併は、通常想定されない組織再編成の手順や方法に基づくものであり、
実態とはかい離した形式を作出するものであって、その態様が不自然なものであ
ることに加えて、本件未処理欠損金額の引継ぎによって原告の法人税の負担を減
少させること以外に本件合併を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の
事情があったとは認められないことからすれば、法人税法57条2項の本来の趣
旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるものというべきである。
そうすると、本件合併は、組織再編税制に係る規定を租税回避の手段として濫
用することによって法人税の負担を減少させるものとして、同法132条の2に
いう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たる。
≪検索方法≫ 【キーワード】 Z888-2251