2024年07月25日
【1】今週のお知らせ
(1)TAINSだより
TAINSだより(2024年夏号)を掲載いたしました。
≪特別寄稿≫なんでや!納税者関係ないやろ!
―令和5年(行ツ)第334号最高裁第三小法廷令和6年5月7日判決―
(弁護士 金谷 比呂史)
ログイン後「TAINSだより」よりダウンロードすると閲覧できます。
https://app6.tains.org/search/tains_news
(広報部長:上田 健一)
(2)大阪国税局の課税第一情報を「その他」「行政文書」に収録いたしました。
主な内容は下記のとおりです。ご活用ください。
・国税通則法第65条「更正があるべきことを予知してなされたもの」とは?
・過大役員給与の損金不算入制度の概要
・苦情?それとも再調査の請求?=文言に捕らわれずに内容で判断=
・「裁判例からみた立証のポイント(令和2年版)」の送付について
・理由附記定型文例集について
・「推計課税の基礎知識」の送付について
「TAINSキーワード」に次のように入力すると検索できます。
大阪国税局 ☆2024年07月収録分 ‥‥9件
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
経済的利益の供与~個人的な解決金等は損金不算入の給与!源泉徴収義務も~
(令06-01-17 横浜地裁 棄却・控訴 Z888-2558)
原告が、取締役甲の会社法429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
1項の解決金及び弁護士費用を損金とし、弁護士費用を課税仕入れとして法人税
及び消費税の確定申告をしたところ、処分行政庁は、それらを損金又は課税仕入
れとすることはできないとして、法人税等の更正処分等をしました。
甲は、原告の取引先であるB社の取締役として、善管注意義務、忠実義務等を
負っていたにもかかわらず、実際にはB社の経営に全く関与しておらず、取締役
としての職務を果たしていませんでした。本件B社訴訟解決金は、B社の「未公
開株式商法」の被害者からの損害賠償請求等(本件各請求)に係るものです。
横浜地裁は、次のとおり判示し、原告の請求を棄却しました。
甲が負担することになった損害賠償債務は、甲個人の債務であるというべきで
あって、原告が、B社訴訟解決金相当額及びB社訴訟弁護士費用相当額等(本件
各金員)について、民法650条3項の規定に基づき、甲に対する損害填補(賠
償)義務を負うということはできない。本件各金員は、法人税法34条1項各号
に規定する損金の額に算入される役員給与の額のいずれにも該当しないから、原
告の損金の額に算入することはできない。当該弁護士から役務の提供を受けたの
は、本件各請求の当事者である甲個人であって、原告ではないから、本件各弁護
士費用相当額は、消費税の課税仕入れに係る支払対価の額に算入されない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62286
2024年07月18日
【1】今週のお知らせ
収録した税務訴訟資料の一部を紹介します。
【相続税】
・R04-08-03 大阪高裁 棄却、上告受理申立て
Z272-13743
裁決の無効確認の訴え/裁決固有の瑕疵に関する主張立証がない場合
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62723
・R04-12-23 最高裁 不受理、確定 Z272-13798
上告不受理/裁決の無効確認の訴え/裁決固有の瑕疵に関する主張立証がない
場合
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62726
収録完了したものは下記のキーワードで検索できます。
≪検索方法≫ 【TAINSキーワード】 ★税資272号
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
事業廃止後も小規模企業共済金を掛け続けた共済金等は本来の相続財産に!
(令04-11-18 千葉地裁 棄却・確定 Z272-13773)
被相続人丙は、個人事業者であった昭和58年12月に小規模企業共済契約を
締結し、その後平成19年3月30日に事業を廃止したものの、共済掛金は丙が
死亡した平成27年3月×日を過ぎた平成27年12月まで丙名義の預金口座か
ら引き落とされていました。相続人は、平成30年9月26日に機構に対して共
済金の請求事由を「個人事業の廃止」、請求事由発生日を「平成19年3月30
日」とし、受給権者亡丙の権利義務を相続することになったとして、本件共済契
約に係る共済金及び本件過納掛金の支払を請求しました。この共済金返還請求権
及び過納掛金の返還請求権は相続財産ではないとして相続税の修正申告をしまし
たが、処分行政庁から、上記各請求権は亡丙の相続財産であるとして、それぞれ
更正等の賦課決定を受けたことから、その取消しを求める事案です。
裁判所は次のように判示し、原告の主張を棄却しました。
原告らは、本件共済金は亡丙に係る退職手当金等としての性質を有するところ、
本件共済金の支払決定日は相続の開始日である平成27年3月×日の3年経過後
の平成30年10月19日であり、本件共済金は、亡丙の死亡後3年以内に支給
が確定したものでないから、みなし相続財産でないと主張する。しかし、相続税
が課されたのは、本件共済金請求権であって本件共済金でない。本件共済金請求
権は、相続税法3条に規定するみなし相続財産として相続税が課されたものでな
く、同法2条に規定する本来の相続財産として相続税が課されたものである。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61628
2024年07月17日
≪第2弾 弁護士 三木義一先生による判例紹介!≫
「あと百万円払えば免除される条件づきの相続債務十億円の債務控除は可能か?」
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画27作目を掲載いたしました。
前回26作目に続き「第2弾」弁護士・三木義一先生が講師を担当され、相続
税に関する判例紹介です。
債務免除益の所得税との二重課税にもふれた大変興味深いものです。
なお、この判例は、メールニュース676号(7月4日発行)の「今週の判決
等」でも扱っております。
ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分程度となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。
今後もコンテンツの充実に取り組んでまいりますので、ますます進化するTA
INSにご期待ください。
記
相続税における債務免除控除と所得税における債務免除益課税
講師:弁護士 三木義一
※東京税理士会・近畿税理士会の会員の方は、同会会員専用ページにログインを
してからご視聴ください。
(データベース部長 田川 哲)
2024年07月11日
【1】今週のお知らせ
(1)サービス停止のお知らせ
下記の日程でシステム改修を行うため、作業時間帯はすべての機能のご利用がで
きません。
会員の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上げ
ます。
(システム部長:坂井 昭彦)
日時:2024年7月11日(木) 午後10:00 ~ 午後10:30
※作業状況により、時間が多少前後する場合がございます。
(2)東京地方税理士会からご提供いただいた相談事例を収録しました。
「TAINSキーワード」に次のように入力します。
東京地方税理士会 ☆2024年07月収録分 ‥‥9件
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:草間 典子)
一括払の金型費用について、毎月収益計上する処理を認め処分を全部取消しに!
(令05-12-21 公表裁決 全部取消し J133-3-07)
請求人は、N社から注文を受けた部品を製造する際、金型等もその都度製作し
ていました。金型等の製作費用相当額(金型等相当額)について、請求人とN社
は、部品の量産開始日を含む月の翌月から24回の月額均等分割払とすることで
合意し、契約を締結しています。しかし、契約の途中でコロナ禍となり、N社は、
取引先への緊急支援策として、金型等相当額の残額について、希望する取引先に
は一括で支払う旨通知し、請求人は残額を一括で受けました。
原処分庁は、一括払の金型等相当額は、請求人が受領した時点で所得の実現が
あったとし、受領した日の属する事業年度において、全額を益金の額に算入する
更正処分等を行いました。しかし、審判所は、処分を全て取り消しています。
請求人とN社との契約は、請求人からN社に対して、請求人が製作した金型等
についてN社に一定の権利を付与する権利設定契約に係る役務を提供し、N社か
ら請求人に対して役務の対価として金型等相当額を支払うことを内容とする契約
と解される。本件役務は、製作した金型等を使用して日々部品を製造し、日々金
型等の維持管理を継続するというもので、継続的に日々提供されるという特質を
有するものである。金型等相当額は、均等分割払方式か一括払で受領したかにか
かわらず、毎月末日の経過でその支払請求権(収入の原因となる権利)が順次確
定するものと認められ、請求人が、本件一括払費を均等分割払方式の際と同様に、
毎月末日に収益計上した会計処理は、公正処理基準に適合するものと認められる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62866
2024年07月04日
【1】今週のお知らせ
(1)公表裁決事例を収録いたしました。
国税不服審判所のホームページに掲載された、令和5年10月から12月分の
公表裁決事例の収録が完了いたしました。
≪検索方法≫
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に『★裁決事例集133集』を入力
して検索
(2)収録した判決の一部を紹介します。
【その他】
・R06-06-03 東京地裁 有罪 Z999-9178
刑事事件/脱税スキームによる暗号資産(仮想通貨)取引に係る雑所得の除外
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62869
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:依田 孝子)
あと百万円払えば免除される条件づきの相続債務十億円の債務控除は可能か?
(令04-04-13 非公開裁決 棄却 F0-3-872)
請求人らは、承継債務のうち相続開始後に銀行から支払義務を免除された債務
(本件債務、9億7370万円)につき、その債務免除益が一時所得として所得
税等の更正処分を受けたことを前提に、本件債務は相続税法第14条第1項に規
定する「確実と認められるもの」に該当するとして審査請求をしました。
審判所では、次のとおり判断し、本件債務は「確実と認められるもの」には該
当しないから、債務控除の対象とはならないとしました。なお、所得税等の更正
処分は、東京高裁(Z888-2622)で、その全部が取り消されています。
「確実と認められるもの」とは、相続開始の時において、債務の存在が確実と
認められるのみでは足りず、債権者による請求等により、債務者につきその債務
の履行が義務付けられている債務であることが必要であり、その金額は、その時
の客観的経済価値によって評価すると解すべきである。
被相続人は、和解条項に従って原債務を履行し、相続の開始の時において、支
払条件により本件債務が免除されるために履行が必要となる残高は合計100万
円であったこと、現に、請求人らが支払条件に従った履行をし、銀行により本件
債務が免除されたこと等に照らして、相続の開始の時の現況により控除すべき債
務の金額の客観的経済価値を評価すれば、100万円と認められるから、本件債
務は、債権者である銀行の請求等により、債務者である被相続人につき債務の履
行が義務付けられている債務であると認めることはできない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62149
2024年06月27日
【1】今週のお知らせ
(1)号外発行のご案内
ユーザーの皆様へオススメのコンテンツ等の収録情報をいち早くお伝えする取
り組みとして、今後は新作の30分研修動画の公開にあわせて、メールニュース
の号外としてお知らせいたします。ぜひご視聴ください。
(ユーザーサポート部長:小林 英樹)
(2)収録した判決の一部を紹介します。
【法人税】
・R06-01-17 横浜地裁 棄却 Z888-2558
損金の額と役員給与/取引先の取締役就任により生じた損害賠償債務と弁護士
費用
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62286
【地方税】
・H23-01-26 広島高裁 棄却、上告 Z999-8522
固定資産税/登録価格/ゴルフ場クラブハウス等の需給事情による減点補正の
要否
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62855
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:大高 由美子)
ドバイLLCは二国間条約の「一方の締約国の居住者」に該当しない!
(令05-05-30 東京地裁 棄却・確定 Z888-2551)
ドバイに本店を置くLLCである原告が、税務署長から、原告は、「所得に対
する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国
連邦との間の条約」4条1の「一方の締約国の居住者」には該当せず、本件条約
は原告に適用されないことを前提に、原告による株式の譲渡に係る所得及び役務
提供に係る所得は、国内源泉所得に当たるとして、法人税、地方法人税の決定処
分及び無申告加算税の賦課決定処分を受けたのに対し、原告はドバイの「居住者」
であって本件条約が適用されるなどとして、処分の取消しを求める事案です。
裁判所は、以下のとおり、原告の請求を棄却しました。
連邦国家としてのUAEは、法人に対する課税制度を設けていない。また、ド
バイ所得税命令に基づき、居住者基準により課税を受けるべきものとされる者は
ない。UAE及びドバイの税制の下においては、ドバイ法人は、ドバイの「居住
者」、すなわち本件条約4条1の規定する「一方の締約国の居住者」には当たら
ない。以上からすれば、ドバイのLLCである原告は、「一方の締約国の居住者」
に当たらないから、本件条約1条により、原告に本件条約の適用はない。
本件活動拠点が販売に係る人的機能を有していたと認められ、ドバイ本店は、
各関連会社株式の譲渡に関し積極的な意思決定を行っていたとはいえず、株式の
譲渡益及び各事業に関する役務提供に係る収入は国内源泉所得に当たる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62197
2024年06月20日
【1】今週のお知らせ
(1)≪横断検索≫第一法規「税務・会計データベース」
システムメンテナンスについて
下記の日時にてシステムメンテナンスを行います。
メンテナンス時間中もご利用いただけますが、サービスの瞬断や、画面の体裁
の崩れ等が発生することがあります。
また、Standardにおいては、メンテナンス時間中に保存された「ふせ
ん」「保存した本文」「保存した検索」、作成されたフォルダおよび「閲覧履歴」
「検索履歴」は、メンテナンス完了後にクリアされますので、ご注意ください。
ご迷惑をおかけいたしますが、ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
―記―
令和6年6月25日(火)午後6時~同10時
※メンテナンス時間は作業状況により短縮又は延長する可能性がございます。
(2)東京税理士会からご提供いただいた相談事例を収録しました。
「TAINSキーワード」に次のように入力します。
東京税理士会 ☆2024年06月収録分 ‥‥7件
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
相続税で控除されなかった債務の免除益に所得税を課税するのは二重課税に!
(令06-01-25 東京高裁 認容・上告受理申立て Z888-2622)
亡甲の相続人である一審原告らは、亡甲の銀行債務を相続し、銀行との間で成
立していた一定額の分割金を支払った場合には残部について債務免除をするとの
裁判上の和解に基づき9億7370万円の債務免除を受け、その免除益を申告し
なかったところ、一時所得に該当するとして更正処分を受けました。一審原告ら
は、相続税の債務控除が認められないのに、債務免除益に所得税を課すのは所得
税法9条1項16号に反する二重課税として許されない旨主張しています。
東京高裁は、次のように判示して、原判決(Z888-2487・一部取消し)
を変更し、本件各処分の全部を取り消しました。
相続税法13条及び14条の規定の趣旨を踏まえれば、担税力を減殺させるも
のではないとして相続財産から控除されなかった相続債務が相続開始後に免除を
受けたからといって、これにより債務者に新たな担税力が生じるものと解するこ
とは相当でない。そうすると、相続人の免除益については、形式的には債務免除
を受けた時点で発生したものといえるとしても、所得税課税との関係では、潜在
的には相続により取得していたものとみることが可能であり、また、控除されな
かった債務に相当する部分の経済的価値と実質的に同一のものということができ
るから、特段の事情のない限り、これに所得税の課税をすることは、所得税法9
条1項16号に反するものとして許されないというべきである。
URL: https://app6.tains.org/search/detail/62831
2024年06月13日
【1】今週のお知らせ
(1)≪横断検索≫第一法規「税務・会計データベース」
システムメンテナンスについて
下記の日時にてシステムメンテナンスを行います。
メンテナンス時間中もご利用いただけますが、サービスの瞬断や、画面の体裁
の崩れ等が発生することがあります。
また、Standardにおいては、メンテナンス時間中に保存された「ふせ
ん」「保存した本文」「保存した検索」、作成されたフォルダおよび「閲覧履歴」
「検索履歴」は、メンテナンス完了後にクリアされますので、ご注意ください。
ご迷惑をおかけいたしますが、ご協力のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
―記―
令和6年6月25日(火)午後6時~同10時
※メンテナンス時間は作業状況により短縮又は延長する可能性がございます。
(2)収録した税務訴訟資料の一部を紹介します。
【所得税】
・R04-10-06 最高裁 棄却、不受理、確定 Z272-13761
上告棄却・不受理/外国税額控除/控除限度額の規定と租税条約/ブラジル国
債の利子
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62145
【消費税】
・R04-10-26 東京地裁 棄却、確定 Z272-13763
用途区分/住宅用賃貸部分を含む中古建物/販売目的の取得でも共通対応分
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61784
収録完了したものは下記のキーワードで検索できます。
≪検索方法≫ 【TAINSキーワード】 ★税資272号
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
不当利得返還請求権が相続財産に!税理士に伝えなかった行為は隠蔽に該当!
(令05-02-16 東京地裁 棄却・確定 Z888-2554)
本件は、原告甲に対する不当利得返還請求権が亡母丙の相続財産になると判断
された事件です。原告甲は、平成21年1月、丙名義で証券会社の一般口座(本
件口座)を開設し、MRFを現金に換金して出金するカードを受け取りました。
平成22年11月、丙は認知症と診断され、平成24年12月、老人保健施設に
入所しました。平成25年9月から4か月の間に、本件口座の株式が全て売却さ
れ、その後、本件口座からほぼ毎日のようにATMの1日当たりの限度額である
200万円が出金(本件各出金)され、総額14億円超の出金となっていました。
東京地裁は、本件各出金をしたのは原告甲であると認定し、次のように判断し
ました。また、本件各出金の事実を税理士に伝えなかった行為は、国税通則法6
8条1項の「隠蔽」に該当し、重加算税処分は適法であると判断しました。
丙が黙示的であれこのような出金をする権限を原告甲に付与していたとは通常
考え難いし、本件各出金が行われた当時の丙の認知能力が相当低下していたこと
からすれば、丙が原告甲に対して上記の態様の出金に係る授権をしたものとは一
層考え難い。原告甲は、本件各出金に係る金員について、丙の占有を排除して自
己のために所持等していたのであり、法律上の原因なく利益を受け、そのために
丙に損失を及ぼしたものといえるから、丙は、民法703条、704条に基づき、
原告甲に対する不当利得返還請求権を有するに至っていたと認められる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62180
2024年06月06日
【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【相続税】
・R05-02-16 東京地裁 棄却、確定 Z888-2554
相続財産/不当利得返還請求権の成否/隠蔽又は仮装の有無/証券口座からの
出金
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62180
・R03-06-07 裁決 棄却 F0-3-772
土地の評価/「広大地」該当性/マンション等の敷地
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62184
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
審査請求が不適法でも裁決の取消しを求める「訴えの利益」は否定されない!
(令04-06-30 大阪地裁 棄却・確定 Z272-13731)
原告が、所得税等に係る更正処分等を不服として審査請求をしたところ、国税
不服審判所長から、本件審査請求をいずれも却下する旨の裁決(本件裁決)を受
けたため、被告を相手に、本件裁決の取消しを求める事案です。
争点は、本件裁決の取消しを求める訴えの利益の有無と本件裁決の適法性です。
裁判所は、裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有すると判断しました
が、本件裁決の適法性については、本件審査請求は不服申立期間の徒過につき正
当な理由が認められる余地はなく、不適法として却下した本件裁決に誤りはなく、
本件裁決は適法であると判断して原告の主張を棄却しています。
被告は、審査請求が不適法であって補正することができないものである場合に
は、審査請求に対する裁決を取り消したとしても、裁決行政庁としては、改めて
審査請求を不適法として却下するほかなく、裁決によって原処分が取り消される
余地はないから、裁決の取消しを求める訴えの利益はない旨主張する。
しかし、本件審査請求が不適法であるかどうかは、本件裁決の適法性という正
に本案の問題であり、その審理判断の結果、本件審査請求が適法であるとして本
件裁決が判決により取り消された場合には、本件裁決がされていない状態に復す
ることにより、審査請求人である原告は、裁決行政庁である国税不服審判所長に
よる審査を改めて受けることが可能となるのであるから、原告は、本件裁決の取
消しを求めるにつき法律上の利益を有するというべきである。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62698
2024年05月30日
【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・R05-08-02 東京高裁 棄却、上告、上告受理申立て
Z888-2576
上場株式の払込価額/「有利な金額」該当性/特段の事情の有無
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62344
【消費税】
・R04-05-10 裁決 棄却 F0-5-386
無申告加算税の正当な理由/e-Taxに対応しない電子証明書の使用
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62228
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等 (税法データベース編集室:草間 典子)
事前の防御機会のない青色申告承認取消処分は憲法31条違反とする少数意見が!
(令06-05-07 最高裁 棄却・確定 Z888-2621)
この事案は、税理士法人の職員がA社の確定申告書を2事業年度連続して期限
内に提出することを失念し、A社が課税庁から青色申告承認取消処分を受けた事
案です。裁判では、事前にA社に防御する機会を与えなかったことが憲法31条
に反して違憲又は違法であるかが争われましたが、最高裁は、下記のように判断
して、A社の上告を棄却しています。
法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、そ
の処分により制限を受ける権利利益の内容、性質等に照らし、その相手方に事前
に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反するもの
とはいえない。本件処分に所論の違憲はない。
(編集員からひとこと)
上記について、既に平成4年9月10日最高裁(Z192-6965)で同様
の判断がされています。しかし、今回の最高裁では、宇賀克也裁判官が「処分庁
が不利益処分を行う場合には、誤った不利益処分による権利侵害が行われないよ
うに事前にその根拠法条とそれに該当する事実を通知し、相手方に事前に意見陳
述の機会を保障することが、憲法上の適正手続として要請されるのが原則であり、
青色申告の承認の取消処分について、その例外を認めるべき合理的理由は見いだ
し難い」とする反対意見を示しています。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/62680