TAINSメールニュース No.636 2023.09.14 発行(社)日税連税法データベース

2023年09月14日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINS会費・利用料のインボイス対応について
  下記ページに「TAINS会費・利用料のインボイス対応について」をご案内
 しておりますので、こちらをご一読ください。
                  記
  https://www.tains.org/invoice202309/
                         (財務部長 清水 一男)
 
(2)TAINS研修サイトの更新について
  研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
 NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
  ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
 動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
 研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
 を登録することができます。
  同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
 して受講・登録ができます。
         記
  役員給与の不相当に高額な部分の金額 ~実質基準が争点となった事例~
                        講 師:税理士 兼平浩美
                     (データベース部長:水庭 清隆)
 
(3)中国税理士会から提供いただいた「研究論文集」を収録しました。
   「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
   中国税理士会研究論文集0006 ‥‥1件【その他文書】
   URL:https://app6.tains.org/search/detail/61502
                        (税法データベース編集室)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
  区分所有建物の固定資産税等/機械式立体駐車場の専有部分の床面積
 (令04-04-19 大津地裁 一部認容・一部棄却 Z999-8481)
 
  納税者は、住宅、店舗及び公共施設等が入居する複合施設のうち、乗用車52
 台を収容することが可能なエレベーター方式の機械式立体駐車場部分を所有して
 いました。本件は、納税者が大津市から専有部分の床面積を780平方メートル
 (各駐車区画の専有面積15平方メートルに収容可能台数52台分を乗じた)と
 して、固定資産税等の賦課決定を受けたことから、登記上の床面積である85.
 52平方メートルを超える部分は違法であるとして、処分の取消し並びに国家賠
 償法1条1項に基づく損害金等の支払を求めたものです。
  大津地裁は、登記上の床面積での算定を認めましたが、国家賠償請求は認めず、
 還付加算金を付した還付手続によって清算されるべきと判断しています。
 
  地方税法及び地方税法施行規則は、区分所有建物に係る固定資産税の賦課につ
 いて、区分所有法の規定に従い算定した専有部分の床面積の割合による按分の方
 法を原則とし、規則所定の補正計算による場合と区分所有者全員の申出による場
 合のみを例外とする旨明確に定めている。上記の法及び規則の定めが、専有部分
 の床面積の算定とその補正について、課税庁の裁量的な判断を許容していると解
 すべき合理的な理由は見当たらない。したがって、これらの規定に反した区分所
 有建物に係る固定資産税と都市計画税の賦課をすることは、地方税法352条1
 項に反する違法があるといわざるを得ない。
 URL:https://app6.tains.org/search/detail/60715

TAINSメールニュース No.635 2023.09.07 発行(社)日税連税法データベース

2023年09月07日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINS会費・利用料のインボイス対応について
  下記ページに「TAINS会費・利用料のインボイス対応について」をご案内
 しておりますので、こちらをご一読ください。
                  記
  https://www.tains.org/invoice202309/
                         (財務部長 清水 一男)
 
(2)税理士会から提供いただいた「相談事例」を収録しました。
   「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
   東京税理士会 ☆2023年09月収録分 ‥‥4件
 
(3)収録した裁決の一部を紹介します。
 【相続税】
 ・R04-05-16 裁決 一部取消し F0-3-830
  株式保有特定会社(広大地)該当性/貸付金債権に係る金銭消費貸借契約の有
 効性
  URL:https://app6.tains.org/search/detail/60939
 ・R04-05-18 裁決 棄却 F0-3-831
  理由の提示の不備・理由の差替え/土地の評価/広大地該当性・路地状開発の
 適否
  URL:https://app6.tains.org/search/detail/60942
                        (税法データベース編集室)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
  税理士損害賠償~顧問契約における損害額制限条項の適用の有無~
 (令05-06-21 福岡地裁 一部認容・一部棄却 Z999-0182)
 
  経営コンサルティング事業等を営む会社(原告)の顧問税理士(被告)は、消
 費税等の有利選択等の誤りについて、顧問先から、民法415条の債務不履行又
 は同法709条の不法行為に基づき損害賠償請求されました。
  福岡地裁では、原告のA社(非居住者)に対するコンサルタント業務は輸出免
 税取引であるとした上で、次のとおり判断しました。
 
  被告は、(1)第1期及び第2期において、課税事業者を選択しなかったこと、
 (2)第3期及び第4期において、簡易課税事業者を選択したこと、(3)第5
 期において、本則課税事業者に戻さなかったことは、善管注意義務に違反すると
 いうべきである。その損害額は、499万1545円であると認められる。
  (3)の善管注意義務違反については、被告に重大な過失があるというべきで
 あるが、(1)・(2)の善管注意義務違反については、被告が根拠とした事実
 を考慮すると通常あり得る程度の税制選択上又は会計処理上の過誤であるから、
 被告に重大な過失があるとはいえない。
  よって、(3)の善管注意義務違反によって原告に生じた損害については、顧
 問契約における賠償額制限条項は適用されず、被告は、その全額について賠償責
 任を負う。他方、その余の善管注意義務違反によって生じた損害(第1期~第4
 期までの損害)については、賠償額制限条項が適用されるから、被告は、被告が
 受けた利益を限度として賠償責任を負う。したがって、被告が原告に対して賠償
 すべき損害額は、191万8496円となる。
 URL:https://app6.tains.org/search/detail/61298

TAINSメールニュース No.634 2023.08.31 発行(社)日税連税法データベース

2023年08月31日

【1】今週のお知らせ
(1)税理士会から提供いただいた「相談事例」を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
南九州税理士会 ☆2023年08月収録分 ‥‥12件

(2)収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【その他】
・R05-06-21 福岡地裁 一部認容、一部棄却、確定
Z999-0182
税理士損害賠償/善管注意義務違反/顧問契約における賠償額制限条項の適用
の有無
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61298

【相続税】
・R04-09-05 裁決 一部取消し F0-3-867
雑種地の評価/宅地比準方式・「土止費の控除」の可否/「特別の事情」の有

URL:https://app6.tains.org/search/detail/61351
(税法データベース編集室)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
税務職員の指導による更正の請求/特定期間の課税売上高
(令02-10-07 非公開裁決 棄却 F0-5-356)

請求人が、消費税等の確定申告後、基準期間の課税売上高が1000万円以下、
かつ、特定期間の給与等支払額が1000万円以下であることから、免税事業者
に該当するとして、更正の請求をした事案です。
審判所は、次のように判断して、請求人の請求を棄却しました。

請求人は、課税期間において、特定期間課税売上高を特例の判定基準とすれば
課税事業者となり、特定期間給与等支払額(120万円)を特例の判定基準とす
れば免税事業者となる事業者であった。
請求人は、基準期間の課税売上高が1000万円以下であることを前提として、
確定申告をしているから、特定期間課税売上高を特例の判定基準として選択した
と認めることが相当である。そして、その選択の結果、請求人は、課税事業者と
して確定申告を行ったものと認められる。特例の判定基準の選択は、請求人の自
由な意思に委ねられていることから、いずれを選択しても法律の規定に従ってい
なかったことにならないから、更正の請求ができる要件には該当しない。
原処分庁職員による更正の請求の示唆及び指導等があったことが認められるも
のの、税務署長その他の責任ある立場にある者の正式な見解の表示に当たるとま
ではいえない。したがって、更正をすべき理由がない旨の通知処分について、信
義則に反する違法はない。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61280

TAINSメールニュース No.633 2023.08.24 発行(社)日税連税法データベース

2023年08月24日

【1】今週のお知らせ
収録した判決・裁決の一部を紹介します。
【所得税】
・R05-07-28 東京地裁 棄却 Z888-2509
馬券払戻金の所得区分/一時所得又は事業所得(雑所得)該当性
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61365

【消費税】
・R02-10-07 裁決 棄却 F0-5-356
税務職員の指導による更正の請求/免税事業者/特定期間の課税売上高
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61280
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
印紙税/消費生活協同組合が運営する総合病院等が作成した領収書等
(令05-03-08 東京地裁 一部認容 Z999-7226)

消費生活協同組合である原告は、新潟税務署長から、組合が運営する総合病院
及び介護老人保健施設において作成した領収書及び契約書の各文書が課税物件に
該当するとして、印紙税に係る過怠税の賦課決定処分を受けたことから、処分の
取消しを求めて提訴しました。東京地裁は、家族組合員の利用分は課税文書に該
当しないとして、原告の請求を一部認容し、次のように判示しました。

印紙税法は、非課税規定において、「営業に関しない受取書」について非課税
とする旨を定める一方で、括弧書きにおいて、「会社以外の法人で、法令の規定
又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができること
となっているものが、その出資者以外の者に対して行う事業」については、「営
業」に含まれるものと規定している。原告は、組合であり、剰余金の割戻しも可
能であるから、非課税規定の括弧書きの法人に該当する。したがって、原告が専
ら医療事業及び福祉事業を行うものであるとしても、「出資者以外の者に対して
行う事業」は、印紙税法上の「営業」に該当する。
家族組合員は、各施設の利用に関しては、生協法12条2項により「組合員」
そのものとして法的に取り扱われるから、印紙税法上の「出資者」に該当する。
したがって、領収書のうち家族組合員が利用した分については、これを課税文書
として課税した賦課決定処分は、違法である。一方、原告が組合員以外の者に対
して行う事業において作成したものである各覚書及び洗濯等契約書は、7号文書
(継続的取引の基本契約書)に該当し、清掃に係る業務請負契約書等は、2号文
書(請負に関する契約書)に該当する。いずれも課税文書と認められる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/60944

TAINSメールニュース No.632 2023.08.17 発行(社)日税連税法データベース

2023年08月17日

【1】今週のお知らせ
(1)名古屋税理士会から提供いただいた「税務研究」を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
名古屋税理士会税務研究0010 ‥‥1件【その他文書】
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61364

(2)収録した判決の一部を紹介します。
【所得税】
・R04-02-14 東京地裁 棄却、控訴 Z888-2507
取引相場のない株式/発行会社を介する三者間の低額売買
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61301

【法人税】
・R05-06-30 福岡高裁 棄却 Z888-2492
青色申告承認取消し/税理士法人による2事業年度連続の期限後申告
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61279
(税法データベース編集室)
─────────────────────────────────────
【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:藤原 眞由美)
不動産等の時価~評価通達によるべきではない「特別の事情」該当性~
(令05-02-09 非公開裁決 棄却 F0-3-871)

請求人は、相続により取得した不動産等を評価通達により評価して相続税の申
告をした後、不動産業者(買主1及び買主2)と個人(買主3)に売却し、実際
の売却価格が当該不動産等の時価であるとして更正の請求をしました。
本件は、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、
請求人が、当該通知処分の全部の取消しを求めた事案です。
審判所は、次のように認定し、評価通達によるべきではない特別の事情はなく、
通達評価額は、相続税法第22条の時価を上回る違法はないと判断しました。

本件各業者売却価格は、請求人が、専らその主観的事情により、不動産業者に
対して一括して売却するという取引方法を選択した結果、買主1及び買主2の転
売することを前提に決定されたものであるといえ、その売却時点における取引当
事者の事情に基づく価格というべきものである。したがって、本件各業者売却価
格が、各不動産の客観的な交換価値(時価)であると認めることは困難である。
買主3は、請求人の父が設けていた税理士事務所に勤務していた者であり、売
買の時点においては家屋をA社(被相続人が株主)から賃借して自身の税理士事
務所を設けており、「純然たる第三者」とは認め難く、本件各個人売却価格は、
取引当事者の主観的事情に基づき形成された金額というべきである。したがって、
各不動産等の客観的な交換価値(時価)であると認めることは困難である。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61277

TAINSメールニュース No.631 2023.08.10 発行(社)日税連税法データベース

2023年08月10日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、右上部のバナー「30分研修動画」をクリックするとサイトに移
動し、オンデマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する
研修となり、視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間
を登録することができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。

代理人の顕名がない贈与契約書の有効性
~生命保険契約の保険料を誰が負担したのか~
講 師:税理士 与北奈須夫
(データベース部長:水庭 清隆)

(2)Japplic書式集検索のご紹介
令和5年7月に消費税インボイス制度の基礎の基礎、インボイス制度事前準備
チェックシートが追加されました。ぜひご活用下さい。
〔ご利用方法〕
TAINSにログイン → 検索トップ画面右上リンクボタン
「日本法令 法令書式ビジネス書式集」
ログインページURLはこちら https://www.tains.org/
(税法データベース事務局)

(3)税理士会から提供いただいた「相談事例」を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
東京地方税理士会 ☆2023年08月収録分 ‥‥19件
千葉県税理士会 ☆2023年08月収録分  ‥‥23件
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:岩崎 宇多子)
取引相場のない株式の低額譲渡~発行会社を介する三者間取引の売買~
(令04-09-28 東京高裁 棄却 Z888-2491)

控訴人会社(X社)は、控訴人母A、控訴人長男Aらから、非上場株式である
X社の株式合計7498株を2249万4000円(1株3000円)で自己株
式の取得をし(本件取引1)、同日、これを同額で控訴人長男B(X社の代表取
締役で控訴人長男Aの従兄)に譲渡しました(本件取引2)。
本件は、本件取引1は所得税法59条1項2号(みなし譲渡)に該当し、本件
取引2は、享受した経済的利益は「給与等」に該当するとして更正処分等を受け
た控訴人らがその取消しを求める事案です。裁判所は、原判決の判断を相当であ
るとし、控訴理由がないとしていずれも棄却しました。

控訴人らは、本件取引1は、自己株式の取得を目的とするもので「資産の譲渡」
に当たらないと主張するが、発行会社が自己株式を取得した場合であっても、そ
の相手方である譲渡人からみれば、当該株式の保有期間中におけるキャピタル・
ゲインを観念でき、当然、譲渡所得課税の対象となるものと考えられる。
本件取引2は、控訴人長男Bは、X社において、形式は準委任であるとしても、
実質的には非独立的ともいうべき役務(労務)を提供する立場にあったものと推
認され、控訴人長男Bは、このような立場にあることを前提に、その職務(役務)
に関連して、X社のため本件取引1によって拠出された費用を補填すべく、X社
から多額の購入資金を借り入れ、本件取引2に応じたものであって、本件経済的
利益は、給与所得の課税要件を満たすと認められる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61260

TAINSメールニュース No.630 2023.08.03 発行(社)日税連税法データベース

2023年08月03日

【1】今週のお知らせ
(1)TAINSの新機能のご紹介
2023年7月31日に次の新機能をリリースいたしました。
〇検索トップ画面の検索機能の改善
簡易検索を新設し、行政文書や相談事例の絞り込み検索ができるようになりま
した。細かい条件を指定して検索する方法は、名前を変えて詳細検索として新
設しました。
〇お役立ちコンテンツへのリンク新設
日本法令ビジネス書式集と30分研修動画について、検索トップページ右上に
リンクを設置しました。
〇検索結果一覧画面の並び順機能の改善
検索結果一覧画面の判決・裁決タブにおける並び順に裁決の年月日を追加し、
判決・裁決年月日の新しいもの・古いもの順に並び替えることができるように
なりました。
なお、設定いただいた並び順についてはIDごと(法人会員など枝番のあるI
Dの場合は枝番ごと)に保存されます。初期設定は「指定なし」ですので、必
要に応じてご設定ください。
※詳しくは検索トップ「【New】新機能の詳細はこちら」をご覧下さい。
(システム部長:小林 英樹)

(2)TAINSだより
TAINSだより(2023年夏号)を掲載いたしました。
≪特別寄稿≫
一時所得として得た債務免除益から控除できる
「その収入を得るために支出した金額」:東京地判令和5年3月14日の検討
(神奈川大学法学部准教授:藤間大順氏)
ログイン後のページ右下「TAINSだより」をクリックすると閲覧できます。
(事業部長:上田 健一)

(3)税理士会から提供いただいた相談事例とその他文書を収録しました。
「詳細検索」の「TAINSキーワード」に次のように入力します。
北陸税理士会 ☆2023年07月収録分 ‥‥12件【相談事例】
四国税理士会 ☆2023年07月収録分 ‥‥ 1件【その他文書】
(税法データベース編集室)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:草間 典子)
無申告加算税の「正当な理由」/誤った内容の法定相続情報一覧図の写しの交付
(令04-06-16 非公開裁決 却下・全部取消し F0-3-854)

被相続人甲の共同相続人は、甲の長男A、二男B、甲の養子Cの代襲相続人で
ある請求人の3名でした。法務局にAら3名を相続人とする法定相続情報一覧図
の保管及びその写しの交付の申出をしたところ、請求人は相続人に該当しないと
して、相続人がA及びBとする法定相続情報一覧図の写しが交付されました。
この一覧図を基にAとBは遺産分割協議を行い、相続税の申告を行ったところ、
法務局の職員から請求人を除外したことは誤りであったと連絡を受け、再度、法
定相続情報一覧図の写しが交付されました。その後、請求人を交えて遺産分割協
議が行なわれ、請求人は相続税の申告をし、AとBは更正の請求を行いました。
本件は、原処分庁が、請求人に対し、無申告加算税の賦課決定処分をした事案
です。審判所は、国税通則法66条1項ただし書の「正当な理由」を認め、無申
告加算税の賦課決定処分の全てを取り消しています。

請求人が、初回一覧図写しの記載内容のとおり、自己が本件相続に係る相続人
に該当しないと判断して相続税の申告書を法定申告期限内に提出しなかったとし
ても、それには無理からぬ面があり、真に請求人の責めに帰することのできない
客観的な事情があり、無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、これを課するこ
とは不当又は酷というべきであるから、期限内申告書の提出がなかったことにつ
いて国税通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる
場合」に該当するというべきである。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/60949

TAINSメールニュース No.629 2023.07.27 発行(社)日税連税法データベース

2023年07月27日

【1】今週のお知らせ
(1)システム改修実施のお知らせ
下記の日程でシステム改修を行うため、作業時間帯はデータベースに一時的に
つながりにくくなる可能性がございます。
会員の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上
げます。
日時:2023年7月31日(月) 午後10:00 ~ 午後11:00
(システム部長:小林 英樹)

(2)TAINS研修サイトの更新について
研修サイト「TAINS MOVIE」に下記の通り「判例を読み解くTAI
NS講座」の新作動画を掲載いたしました。
ログイン後、右上部の「研修サイト」をクリックするとサイトに移動し、オン
デマンド研修を受講できます。また、この研修は税理士会が実施する研修となり、
視聴後に受講管理システムへのリンクボタンが表示され、受講時間を登録するこ
とができます。
同シリーズはいずれも受講時間が30分以内となっており、通勤時間等を利用
して受講・登録ができます。

興銀事件から考える~貸倒損失の認定において社会通念基準は有効か?~
講 師:税理士 渡邉信子
(データベース部長:水庭 清隆)
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【2】今週の判決等         (税法データベース編集室:依田 孝子)
取引相場のない株式の評価~評価通達6が適用される特別の事情の有無~
(令04-03-25 非公開裁決 棄却 F0-3-858)

被相続人は、株式移転によりA社株式を取得し、相続開始直前に73億円を借
り入れ(本件借入れ)、A社が自己株式として保有していたA社株式を取得(本
件取得)しました。この事案は、審査請求人が、A社株式を評価通達に定める方
法(純資産価額方式、A社が保有する子会社2社の株式は類似業種比準方式)に
より株式の価額を評価して相続税の申告をしたところ、原処分庁が、A社株式の
価額は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当であるとして評価
通達6を適用したことから争われたものです。審判所では、次のとおり判断し、
原処分庁の鑑定評価に基づく評価方法を認めました。(本件は訴訟中です。)

A社が子会社株式を100%保有し、割合的持分を超えて会社全体を財産とし
て保有していたことからすると、A社株式について、不特定多数の当事者間で自
由な取引が行われる場合に、子会社株式についても純資産の価値を反映させた価
額を基に取引が成立することは、極めて自然で合理的なことというべきである。
本件は、評価通達の評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くこ
とによって、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的
に反し、かえって、相続発生を見越して本件借入れ及び本件取得に相当するよう
な行為を行わなかった納税者との間での実質的な租税負担の公平を著しく害する
ことが明らかであるといえるから、他の合理的な評価方法により、本件株式の適
正な時価を評価すべき特別の事情があると認められる。
URL:https://app6.tains.org/search/detail/61014

TAINSメールニュース No.628 2023.07.20 発行(社)日税連税法データベース

2023年07月20日

【1】今週のお知らせ
 サービス停止のお知らせ
  下記の日程でシステム改修を行うため、作業時間帯はすべての機能のご利用が
 できません。
  会員の皆様にはご不便をおかけいたしますが、ご理解の程宜しくお願い申し上
 げます。
  日時:2023年7月21日(金) 午後10:00 ~ 午後10:30
  ※作業状況により、時間が多少前後する場合がございます。
                       (システム部長:小林 英樹)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:大高 由美子)
  マイナンバー利用差止請求/番号利用法及び番号制度の憲法適合性
 (令01-09-26 横浜地裁 棄却・控訴 Z999-5461)
 
  番号利用法に基づき、個人番号の付番を受けた原告らが、番号利用法及び同法
 に基づく個人番号の収集、保存、利用及び提供等の制度は原告らのプライバシー
 権等の人格権を侵害するものであり、憲法13条に違反する旨を主張して個人番
 号の収集、保存、利用及び提供の差止め並びに被告が保存している原告らの個人
 番号の削除を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、上記プライバシー
 権等の人格権の侵害による損害賠償を求めた事案です。
  横浜地裁は、次のように判断して、原告らの請求を棄却しました。
 
  番号利用法及び番号制度は、その施行により新たに個人のプライバシーを直接
 制約するものではなく、あくまで、個人番号や特定個人情報の不正な取得等や過
 失による漏えい等の制度の弊害により、個人のプライバシーが侵害される危険性
 を間接的に有するものにとどまるということができる。
  番号利用法及び番号制度の内容について、情報の収集、保有、管理、利用等の
 過程で、行政機関の職員の過誤や行政機関の内外からの不正な手段により当該個
 人に関する情報が漏えいするなどして、当該個人に関する情報が開示又は公表さ
 れる具体的危険があるということはできないから、番号利用法及び番号制度を、
 個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するもの
 として違憲であるということはできない。
 URL:https://app6.tains.org/search/detail/60911

TAINSメールニュース No.627 2023.07.13 発行(社)日税連税法データベース

2023年07月13日

【1】今週のお知らせ
 収録情報画面リニューアルのお知らせ
  TAINSホームページ「収録情報」がさらに便利になります。税目ごとに判
 決や裁決の収録内容をご覧いただけるだけでなく、相談事例や課税庁作成文書な
 ど、全ての情報区分の収録内容をご覧いただけるようになります。
  単語や判決・裁決年月日での簡単な絞り込みや、近日中に収録する予定の文書
 をチェックできるほか、気になる文書を選んで判決本文などの詳細画面に直行で
 きるリンクをご用意いたします。
  明日14日から、TAINSホームページ「収録情報」よりご利用いただけま
 す。ぜひご活用ください。
  こちらのURLから新・収録情報一覧画面をご覧ください。
  https://app6.tains.org/recordedcontents/listall/
        (システム部長:小林 英樹、データベース部長:水庭 清隆)
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【2】今週の判決等        (税法データベース編集室:市野瀬 啻子)
  所得区分/給与所得を有する医師の洋画等制作販売から生じた損失
 (令03-03-24 横浜地裁 棄却 控訴 Z888-2410)
 
  医師である原告は、医療法人社団の理事長を務め、1億円を超える多額の給与
 を得ていました。原告は、アトリエを借りて洋画等の制作を行い、その販売のた
 めに個展を東京、横浜、京都、ニューヨークで複数回開催しましたが、収益は大
 幅な赤字となりました。原告は、洋画等の制作販売から生じた所得(損失)は事
 業所得に該当するとして給与所得と損益通算して申告したところ、処分行政庁か
 ら、雑所得に該当するから損益通算はできないとして更正処分を受けました。
  横浜地裁は、社会的客観性をもって「事業」と認められるかを検討するに当た
 っては、「相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性」をも検討す
 べきであり、これは、「事業」の該当性の判断において、重要な要素であるとし
 た上で、次のように判示して、原告の請求を棄却しました。
 
  洋画等制作販売の活動に要する資金は、専ら給与所得等から調達されており、
 しかも、客観的収支状況や販売実績に照らせば、多額の資金を投じる一方で、収
 益は全く上がっておらず、およそ相当程度の期間継続して安定した収益が得られ
 る見込みがあったとはいえず、客観的にみて営利を目的として行われたものとも
 いえないことからすれば、社会通念上、洋画等制作販売が、自己の計算と危険に
 おいて独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思
 と社会的地位とが客観的に認められる業務であるとはいえず、事業に該当しない。
 この判断は、控訴審(令和3年11月17日東京高裁)でも維持されています。
 URL:https://app6.tains.org/search/detail/59883